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ファウストの子供達  作者: 喜右衛門
183/233

182 配給


 外壁を北に向かって下る道を掘るモグラゴーレム。

 もう随分と進んで、トンネルから吹き出す水も小さな水道のホースから出ている様にも見えていた。

 そして、車列も一列なので長い。


 食事の配給も一苦労だ。

 もちろん直接に配る様な事はしない。

 ほぼ先頭に居るキッチンカーではもう料理は作らない……はっきり言って無理だ、多すぎる。

 だから作ってくれるのは、転送魔方陣の先に居るジュリアお婆さん達。

 相当な量だけど……ゴーレム達を総動員して作ってくれている。

 なんでも原人の親子も手伝ってくれているそうだ。

 そして材料……どう調達しているのかはわからない。

 もしかして、マリーのダンジョンで魔物を倒して調達してる?

 野菜も少しだけど入っている……これはどうしているのだろうか?

 そこの部分は謎だった。

 もしかするとこの転送呪文が使える人間が沢山居るのかも知れない。

 どっかの村にとか……それで取り引き?

 考えられるとすればそうか。


 出来上がった料理は、大きな鍋ごとその場の道の端に置いていく。

 その番をしているのは、犬耳三姉妹を筆頭にしたバイク部隊だ。

 小さな牽引車を引いたスクーターも居た……ニーナとオルガだ。

 以前に手に入れたビーノと言うなの原付スクーター。

 牽引車はそれに合わせたサイズで、一応は大人でも膝を抱えれば乗れる大きさ? そんな感じ物。

 あとはアンも居る。

 流石に警察官のアン……食事を配る時も揉めさせる事なくテキパキと、受けとる側に指示を出していた。

 それともちろんマリーとゴーレムが1体もだ。

 

 そして……最後の車列が通り過ぎると。

 スクーターの牽引車にマリーを乗っけて、先頭に戻る。

 バイクなのは、大きな戦車の横も通り過ぎる事ができるからだった。

 この車列で一番に幅を取っているのがタイガー1重戦車。

 それがギリギリに通れる道は4m幅は有る。

 もちろんそのサイズだから、車列の最後尾。

 なので、バイクはタイガー1重戦車に食事を配ると、急いで片付けをしてタイガー1戦車を待たせたまま、前を進むのだ。

 残念ながら……3.7mの車体幅の横を通り過ぎるには狭すぎるからだった。

 殆ど蓋状態だからね。


 で、道の基準がそれだから、次に大きのは3号中戦車。

 あれ? 4号は? と、疑問に思った人も居ただろうけど……幅だけなら実は3号戦車の方が大きいのだ。

 2.95mで重さが23t。

 4号中戦車は2.7mで25t。

 その差は微妙だけどね。


 「では……これは鍋ごと貰っておくぞ」

 タイガー1戦車のアルロン大佐がそう告げて、部下に命じてタイガー1戦車の背中の部分に積んでいる。

 大の大人の五人分だけど、小さい8リットルの寸胴鍋で済むのでそれは、次回に回収だ。

 あとは、でっかいバケット……人数分を渡すだけ。

 「おい……手伝ってやれ」

 アルロン大差に指示されるまでもなく、兵士達は空の寸胴鍋を担いで、マリーの転送魔方陣の上に移動させてくれていた。

 とにかく大きい寸胴鍋。

 最大は170リットルの大きさ。内径で60cmx60cmだ。

 小さな女の子には抱えるだけでもツライ大きさ、しかも重さが10kg近いのだから大変だ。

 数も広げた分が有る。

 ゴーレム1体では手が足りない状態。

 一応は空に成った寸胴鍋は順次、転送で送り返して居るのだけれども、それでもなかなか片付かない。

 やっぱり量が多いからだ。

 でも、たぶん……一番に大変なのは、転送先に居るジュリアお婆さん達だと思う。

 朝から晩まで料理のしっぱなし?

 

 ちなみにだが、この配給は一日に一回だ。

 一応は多目には渡すけど……これを三食は到底無理。

 だからそこは我慢して貰う。

 まあ、移動で乗り物に乗りっぱなしだから、体も動かさないとして腹もそんなに減らないって事での理由付けだった。

 あとは……女性が居るグループには材料だけを渡す事も有る。

 料理は各自で好きに作ってくれとだ。

 ロバ車の荷台なら、魔石を使えば多少の事はできる。

 バスや乗用車は無理だけど……それは仕方ない事として受け入れて貰った。

 まあ、料理の出来る人は率先してバスや乗用車には乗らないみたいだし……たぶん上手く回ってる?

 

 「しかし……人数が多いな」

 バイクで移動中のアンがボヤイていた。


 「大きな村が一つ分だからね」

 ニーナが返事を返している。

 

 「でもさ……これで、実際の全部の獣人ってわけじゃあ無いんでしょう?」

 オルガも話に参加。

 

 「そりゃあそうでしょう」

 マリーが牽引車の荷台の枠にしがみつきながら。

 「一部だけよ」


 「まあ、話では……エルフから逃げた者達だけだからね。あそこに居たのは」

 ニーナ。

 

 「本当はもっと居たのでしょうけどね」

 オルガは少し悲しそうに言った。


 「別に全部が死んだわけじゃあ無いんでしょう?」

 マリーも首を振っている。

 「何処かに獣人の為の安全な自治区でも作れば……すぐに集まって来るわよ」


 「そうだな」

 頷いたアン。

 「その為にも、この者達は確実に移動せねばならんな」


 「そうね……それが最終的に自分達の為に成るんだから」

 マリーも頷いた。



 

 さて、その頃……先頭のモグラゴーレムは困っていた。

 道をまっすぐに掘り進めて居ると……縦に大きく深い亀裂にぶち当たったからだ。

 土や岩は掘れるけど……空間の空いた亀裂は無理。

 そんなのは進んでもただ落ちるだけ。

 

 「どうしようって言ってる」

 ペトラはパトに相談に行った。


 「うむ……逆に折り返すしか無いな」

 車ら降りて、崖から下を覗き……南に目を向けた。

 「スイッチバックは無理だから……回転出来る広さは必要だな」


 「大きく掘らせ無いとダメって事ね」

 頷いたペトラ。

 早速にモグラゴーレムに指示を出す。


 「その間は少し休憩だな」

 パトはまた、シュビムワーゲンに戻っていった。

 

 

 止まった車列から、人々が降りてきて大きな伸びをしたりと休憩。

 狭い乗用車組は体が固まって大変そうだ。

 でも、後々それが財産に成る。

 ダンジョン産の車は売っても高いし、道具としても優秀だ。

 着の身着のままの状態で出てきた者には、それはいずれ助けに成る事はわかっているので……そんな獣人も文句は言わない。

 

 と、一人の獣人が空を指差した。

 そして、その回りの者も騒ぎ始める。


 何事か? と、見たタヌキ耳姉妹。

 イナはAPトライクに走り戻って無線機を取った。

 「魔物よ! いつかのプテラノドン」

 こちら側に来たのだから……いても当然。


 「また……襲って来るのかな?」

 エノはそのプテラノドンの観察を続けていた。

 距離はまだまだ遠い所を滑空している。

 数も数匹でしれては居るのだが。

 以前もそうだったけど、あれらはシツコイ。

 しかも仲間を呼ぶのか、すぐにその数を増やす。


 「来るつもりで居た方がいいんじゃない?」

 イナもエノの横に戻っていた。

 そして、kar98k小銃と予備の弾を渡す。


 魔物であるプテラノドンは、空を飛ぶ翼竜。

 空を飛ぶために体は軽く出来ている。

 なので恐竜の様に固い体は持ってはいない……kar98kの7.92x57mmモーゼル弾でも撃ち落とせる。

 ただし……当たればだけど。

 滑空する速度が速いし、距離も有る。

 まっすぐこちらに向かってくるなら狙えるけど、今の様に横に旋回していると……チョッと難しい。


 「とにかく警戒って感じね」

 エノが頷いた。


 「道が出来たぞ!」

 「前進だ!」

 前の方からの声に後ろの誰かが答えて復唱して叫んでいる。

 「魔物にも注意だ!」


 「私達も行こう」

 タヌキ耳姉妹は揃ってAPトライクに乗り込んだ。

 運転はイナ。

 エノは後席で警戒しながら銃を前に立てていた。

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