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ファウストの子供達  作者: 喜右衛門
159/233

158 ペトラの出番?


 フーッと大きく息を吐いてその場に座り込むペトラ。

 「もう大丈夫よね?」

 別段、誰かに問うたわけでは無かったのだが。


 「取り合えず穴は埋めたけど?」

 返事を返したコンクリート・ゴーレム。

 それと、モグラゴーレムも一鳴き。

 「ギャー……」

 合わせてオリジナルの小さい方の魔物モグラも。

 「キー……」

 ユキウサギにオリジナル・クモやガラガラ蛇の親子も心配気にペトラを見上げて居た。


 うん……かわいい。

 そんな小さな生き物達に癒されたペトラは。

 「しかし……驚いた」

 ボソリと呟き、立ち上がる。

 一応はパンツも確認……セーフだ、漏らしてない。


 「でも……どうしよう」

 ここは安全だと決め付けて、護衛は居ないペトラだけ。

 コンクリート・ゴーレムとモグラゴーレムが戦えるのはわかって居るけど……ここでは荷運びの人夫として作業をしていただけ。

 「武装しといた方が良さそうか?」

 幸い武器弾薬はタップリと有る。

 殆どは砲弾だが……銃も弾もM24柄付き手榴弾だって有る。

 それらを1パックに纏めるランドセルだって余ってる。


 そんな独り言にクモが反応した。

 頭の中にイメージを送り込んでくる。

 足先に感じる地中の振動……らしい。

 地面の下には動物の血管みたいに幾つものトンネルが掘られて居るようだ。

 そして、蠢く人影……エルフだ。

 なんだか大きい影も感じられるそれ、今もトンネルを掘っている? エルフの使役しているモグラ?

 その向かっている先は……後方のまだ無事な二つ目のダンジョンの様だ。


 「うわ……まじか」

 そちらのダンジョンには、非戦闘員の後方支援部隊が居る。

 食事の準備や、医療にその他の雑用をしているもの。

 獣人でも非力な女子供や、負傷兵がワンサカだ。

 幸い、トンネルの先端はここまでの様だが……その掘るスピードを考えると2・3日でそこまで到達するのでは無いかと思われる。

 「ぱと、やばいよ……エルフの狙いは後方のダンジョンだ」

 無線を掴んで報告。

 「今、地上に出てきて居るのは……邪魔が入って這い出した奴等みたい」


 「地下は砲撃は効かないが……どうしたものか」

 パトからの返事には銃声の連続音も混じっている……無線の向こうでも交戦中らしい。

 「兎に角、後方部隊にも移動の準備を始めさせる」

 今すぐの有効な手立ては思い付かないらしい。

 「ペトラも……荷物を纏めて誰かと合流しろ」


 「わかった」

 返事を返したペトラ。

 荷物を纏めろと言われても……だ。

 ここには砲弾しかない。

 誰かに無理矢理送りつけるか?


 どうするか? と、考えながらにランドセルに武器を詰め込む。

 コンクリート・ゴーレムに持たせる武器は、手足の長さの制限でmp40だ。

 サイズが短くて、弾数で圧倒できる武器。

 弾も9mmで小さくて済む、マガジンごとランドセルに半分も放り込めば相当数だ。

 残りの半分にはM24柄付き手榴弾を放り込む。

 寸胴な腰にベルト巻かせてソコにもM24柄付き手榴弾を挟ませる。

 そのベルトはホームセンターで見付けた作業者用のヤツだ。

 電気工事とか大工さんがしているモノらしいソレは、穴やDカンが一杯付いていてランドセルと繋げれば振れ止めにも成る。


 コンクリート・ゴーレムの一通りの装備を終えて……最後にペトラ自身もランドセルを背負い。

 それでも残る砲弾の山。

 

 と、今度はガラガラ蛇がペトラのセーラーワンピのスカートの裾を噛んで引っ張った。

 また何かを言いたそうな感じ。

 そのイメージを受け取ったペトラ。

 狭い瓦礫に潜り込んで……転送魔方陣を地面の下に敷く?

 尻尾でさっき埋めた瓦礫を指していた。


 成る程……と、ポンと手を打つペトラ。

 手近な予備の転送魔方陣(受)……荷物を受けとる専用の魔方陣をクルクルと丸めてガラガラ蛇に渡した。


 すると、それを咥えたガラガラ蛇は瓦礫で埋めた穴に、隙間を見付けて潜り込む。

 イメージを頼りに覗くと……瓦礫の隙間は其なりに開いていた。

 まあ、埋めたのも適当だったからそうなのだろうとも思う。


 隙間から這い出したガラガラ蛇。

 暗く狭い空間だった。

 狭いと言ってももしかすると小さい戦車なら通れる程のトンネルだ……上下左右に3m程?

 その、トンネルで器用に転送魔方陣(受)を拡げ出した。

 四隅を引っ張り、シワを伸ばして整える。

 そして……オーケーのイメージが送られてきた。

 

 頷いたペトラは砲弾の山を、転送魔方陣(送)に、コンクリート・ゴーレムを使って片っ端から砲弾を送り込む。

 「ガラガラちゃんも早く戻ってきて」

 適当に放り込んでいるもんだから……ガラガラ蛇に見えている送られた砲弾はグラグラと揺れる山に成っている。

 もうソロソロ詰まる感じと、イメージを送られてきた。


 実際に転送魔方陣(送)の、魔方陣にはもう入らない様だ。

 送り先が一杯だと、溢れる感じで中途半端にこちらに残る様だ。

 それをファウスト・パトローネの筒でツツイて崩して……そのファウスト・パトローネの先だけ……飛び出す砲弾の部分を魔方陣に突っ込んだ。

 「撃つよ!」

 チラチラと瓦礫の穴を見詰めて。

 「早く出てきて」

 と、ガラガラ蛇の姿を確認して……発射のボタンを押した。

 

 ファウスト・パトローネの筒の後単から火を吹き出した。

 先の砲弾部分はわからない……一応の発射の衝撃は有ったのだけれど、転送魔方陣の中なので見えない。

 が……穴の瓦礫の隙間から火を吹き始めた。

 遅れて地響きもだ。

 それらは持続的に続いていた。

 穴なの中に放り込んだ砲弾が順番に誘爆している証拠だ。

 実際に中ではどうなっているのかはわからないけど……たぶん酷い事には成っているはずだとニヤリと笑うペトラ。

 そして、ファウスト・パトローネの発射後の残骸となった鉄パイプはまだ半分が転送魔方陣(送)の中に有る。

 動かして見れば自在に動かせる様だ。

 ならばと……ペトラはその転送魔方陣(送)に、残りの砲弾を次々と放り込ませた。

 流れ作業で、有るだけ全部だ。


 少し離れた位置のマンホールが真上に飛んだ。

 下からは花火のような火花が吹いている。

 

 また……少し離れた位置の地面が割れた。

 ひび割れからは火花。

 

 「なんだ? 何が起こった!」

 無線のパトの声が焦っている様だ。

 パトはたぶんまだ、このダンジョンの北の端に居る。

 ここから一番に遠い所だ。

 慌てている感じだと……もしかして砲弾の花火がそこまで届いた?

 

 「って……事は、地下のエルフは蒸し焼きにされた?」

 人を驚かせようとした報いね。

 「正々堂々と戦わないのが悪い! 隠れて罠に嵌めるのは卑怯者のやる事。そこに正義なんて有るものか……だ」

 一応はエルフの州警察を名乗っている筈だけど……警察だって転じれば悪の組織だ。

 大体が隠れて飛び出して金を要求するのは盗賊だしね。

 要求はされてないけど。

 銃を持って居たんだから、命は要求されたと同意だし。

 威嚇だけだってんなら……それは権力を傘に着たパワハラだ。

 まあ……その武器を持った時点で返り討ちは覚悟できている筈。

 それも無いなら、そんなアマちゃんに負ける筈もない。

 フンっと鼻を鳴らしたペトラは、無線機でパトに説明をした。


 「成る程……理解した」

 無線の向こうでパトが言う。

 「だが、トンネルが1つで繋がっている保証は無い……気を付けろまだ涌いて出る可能性も有るぞ」

 そのパトの背後のBGMは未だに銃声だ。

 先に地上に上がった奴等はまだ無傷でも有るってわけだ。


 「わかってる」

 ペトラはコンクリート・ゴーレム兵に号令を掛けた。

 もう放り込める砲弾も無くなったのだから……ここから移動だ。

 警戒しながらに来たに進むか。

 後方に下がって、非戦闘員を守りに行くべきか? だ。


 さて……どうしようかと逡巡。


 その時、また地面が割れた。

 今度は大きく大穴で火花は吹き出しては居ない。

 だが、そこから出てきたのは巨大モグラだった。

 

 ガオォー……ンギャー……と、擬音が見える姿。

 まるっきり怪獣だ。

 サイズはペトラが造ったモグラゴーレムの2倍?

 毛むくじゃらのリアルなモグラ。

 その口が開いて光を溜めだした。


 「あ! まずい! 光線を吐く」

 狙われたのはモグラゴーレム。

 その光景は以前に小さい子モグラがゴーレム・ヴィーゼの手の平に穴を空けたヤツと同じだ。

 それのサイズが巨大に為れば……その威力も同じ様に上がる筈。

 「ヤバイって!」

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