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ファウストの子供達  作者: 喜右衛門
153/233

152 38t軽戦車

54ポイント!

今日も上がってる!


ポイントは上がると嬉しい。



応援有り難う。



 ペトラはゴーレム造りを勤しんでいた。

 魔方陣はアマルティアが描いてくれた白い風呂敷。

 材料は自分で造ったゴーレムに運ばせる。

 ……コンクリートとアスファルトのダンジョンに何処に材料が? 等とは考えてはいけない。

 だってここはホームセンターなのだから、園芸用の土も建築資材の砂利もセメントも有るのだから。

 てなわけで……ペトラの造る新しいゴーレムはコンクリートゴーレムだった。

 鉄筋は……一度チャレンジはしたのだけど、どうしたってドワーフの協力が必要で。

 残念ながらローザもマンセルも忙しいと断られた。

 いや……最初の1体は手伝ってくれたのだから、やってみて面倒臭いと思われたと思う。

 別に鉄筋コンクリートゴーレムも素のコンクリートゴーレムも……それほどの性能差は無かったのだし。

 多少の強度アップぐらいか?

 となれば……仕方が無いのだろう。


 続々と出来上がるコンクリートゴーレム。

 それをマリーが来て連れていった。

 「何体か借りるわよ」

 

 別段それは構わない。

 出来上がったゴーレムは仕事がなければ、横に縦に並んで体育座りで待機なのだから。

 でも、何に使うのかと興味を持ってみていると……疲れて現実逃避では断じて無い。

 転送の魔方陣から追加の弾薬を受け取っていた。


 この転送の魔方陣もまた解放されている。

 「うわ! ペトラの転送はまた……特別じゃないの」

 マリーが悔しそうに呻いたものだ。

 どうも、マリーの転送はコチラとムコウ側で二人が必要なのだそうだ。

 でも、私はあらかじめ転送魔方陣を描いて置けば……しかもそれを描くのは私で無くても良いらしい……で、一方的に送り付ける事が可能。

 それは、双方向に錬金術士なり魔法術士なりが必要ないって事らしい。

 例えば戦車の中の床の何処かに描いて置けば、受け取りがバルタでも構わないのだと……ただし私は送り手なので必ず必要なのだけど。

 そして、私が居る方の魔方陣には送れない一方通行。

 まあ、無線で連絡をくれれば送ると、そんな形に成りそうだ。


 なのでヴェスペ自走砲の操縦からは解放された感じだ。

 まあ、それはローザに頑張って貰おう。

 私はこれからは後方支援だから。


 


 クリスティナはパトの膝の上に座り……地図を見ながら順番に指差していく。

 「ここにも居る」

 北の方の森の中。

 「戦車は無いけど……野砲が5つ」


 パトはその印に定規を当てた。

 「十キロなら……この辺りか」

 定規には穴が空いていて、片方の先端に針を刺してもう片方を回転させる。

 半円形に線を引いて……それが射程距離だ。

 

 そして、その射程にはダンジョン……こことは違うもう1つのダンジョンの端が含まれていた。

 地図に依ればここのダンジョンから5キロほど北に全く同じダンジョンが並んで居るのだそうだ。

 それはカワズに造らせたモノだと言っていた。

 北と南に並べて二つ。

 最前線と後衛……らしい。


 地図によると、竜の背を越えられる入り口はその最前線のダンジョンから北に進んだ所。

 詰まりは……そのラインを北に大きく動かさないと使えないと言う事らしい。

 なので前線のラインを最低15キロ押し上げる……出来るなら20キロ以上だ。

 

 「ここにも」

 クリスティナの指は右……東に流れて指差す。

 そこは川の向こう側だった。

 東の端に、上から東南へと流れるように斜め縦に川が有る、その向こう側らしい。


 「そこはもうわかっている」

 パトは川の上流と下流の二ヶ所を指して。

 「この二点に橋があったが、もう落とした。川の向こうの奴等は」

 指を上にズラせて。

 「ここの橋を通るしかない」

 地図でもわかるが川幅は大きい。

 実際に、もっと上流だが、子供達は見た事も有るからその大きさは理解していた。


 「じゃあ……川の向こうはもういいの?」

 クリスティナがパトに聞く。


 頷いたパト。


 「わかったもう一度、北西に移動させる」

 目を擦りながらのクリスティナ。

 もうソロソロ眠いらしい。

 安心できる場所にさえ居れば、7才の子供なんてそんなものだ。

 別段、夜も深い時間でも無いけれど、お腹一杯に食べたカレーも眠気を誘うのだろう。

 「もう少ししたら寝ような」

 パトは優しく声を掛けていた。

 



 翌朝、後方支援とその護衛を残してもう1つのダンジョンに移動した。

 まったく同じダンジョンの筈だけど、見た目はまったく変わっていた。

 砲撃で建物は穴だらけだ。


 そして、今も散発的に撃たれている。

 コチラのガタガタのホームセンターのガレージから北の方角に煙が上がっているのが見えた。

 

 「挑発?」

 ルノーft軽戦車を操縦しているオリジナル・ヴィーゼが砲塔内に収まっているオリジナル・バルタに聞いた。

 

 「そうじゃないの?」

 バルタは素っ気ない態度で答えた。


 チョッとドコロでは無くに機嫌が悪い。

 理由は簡単。

 オリジナル・バルタは以前のパトといる時の様に38t軽戦車に乗り込もうとした。

 すると、砲塔の中には先客が居た。

 砲を握って照準器に顔を当てている……猫耳の少年。

 恐らくはバルタよりも年下の感じ。

 いや……身長はバルタの方が小さいし小柄では有るのだけど、雰囲気がそうだ。

 耳をピクピクとさせてコチラの音を気にしては居るのに見もしない。

 「そこ……」私の場所なのに……。

 後半は言葉には成らなかった。


 「誰か、覗いているよ」

 誰も居ないと思っていた場所から声がした。

 砲塔の中の……装填手が居る筈の場所だった。


 バルタは目を細めて視線を向ける。

 「あなたは……誰?」

 取り敢えずは聞いてみる。


 「え? バレてる?」

 驚いた声。

 「あああ、猫の獣人の娘だ」

 バルタをもう一度、確認したのだろう。

 「それなら……仕方無いか。音は隠せないから」

 そう言って姿を現す。

 陽炎の様な光の屈折が無秩序なモノを見せながら……次第に形を整えていく。

 そして、現れたのはギョロっとした目の爬虫類っぽい見た目の子。

 

 「パピルサク人?」

 バルタは首を捻った。


 「パピルサク混じりの獣人……カメレオンのだけど」

 声の感じでも、見た目でも男の子か女の子かもわからない。

 「今はファウストさんの装填手をしているレン」

 指を猫耳の男の子に向けて。

 「そっちは砲手のキース」


 「私は……」


 「もしかしてバルタ?」

 猫耳のキースが小さな声で。


 「そうだけど」


 「キースの知り合い?」

 驚いたのはレン。


 「ちがう……ファウストさんに聞いた。百発百中の砲手だって言ってた」


 「おお……ヤッパリ猫耳は凄いんだね、キースと同じくらいなんだ」


 「それも違う……おれは百発中九十くらいだってさ」

 キースはやはりコチラを見ない。

 「たまに外すから」


 「え? 意味がわかんないよ」

 レンは首を傾げてバルタを見る。

 「もしかして一発も外さないの?」


 バルタに聞いたらしいが、バルタも首を傾げた。

 「牽制とか距離を計る時は……外すけど」


 「それって……わざとだよね?」

 キースに聞かれた。


 「まあ……そうね」

 頷いたバルタ。


 「狙って外すのと……わざと外すのは違う」

 ボソッと呟いた。


 ……。

 それはそうだけど。

 いや、そんな事よりも場所は変わる積りは無いの?

 下唇が突き出してしまうのが押さえられない。


 「お? バルタ」

 外から声を掛けられた。

 マンセルだった。

 「戦車長はおらんぞ」

 戦車の前からヨジ登り操縦席に潜り込もうとしている。

 「今回は偵察だから」

 マンセルは半分を戦車の中におさめて指を差す。

 

 そちらを見ればパトはシュビムワーゲンに乗って居た。

 

 「バルタ達は昨日来たばかりだし、この辺もわからんだろう?」

 頭だけを出した状態で。

 「暫くは後方で見学でもしてればいいぞ」


 そして、戦車の中からも声。

 「もう……ハッチを閉めてもいいか?」

 ぶっきらぼうに言い放ったキースだった。


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