150 弾薬の仕入れ
お!
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久し振りに上がった。
応援有り難う。
「まあ……しかし、それは今の状況をなんとかしてからの話だな」
パトは、うーんと唸って机に向き直る。
そこにはこの辺りの地図らしきモノ。
「で……ハンナ、どうだった?」
「それが、途中でこの子達と会ったから偵察はココまで」
ハンナは地図を指差して。
「この湖まではパピルサクは居なかったは」
「パピルサクに用でも有るのか?」
アンが聞いた。
「いや……出来るならココから逃げたいのだが」
肩を竦めて。
「パピルサクが通してくれるか、見逃して欲しいと思っているのだが……たぶん無理だろうな」
「パピルサク兵は州境の川の向こうに野砲を並べて居たぞ」
アンは、地図の上のその川を指差した。
「砲兵の中にはエルフも混ざって居た様だし……少人数でなら、ジャングルに隠れながらの移動は出来るだろうけど」
「やる気マンマンな感じか」
フムと鼻を鳴らしたパト。
「エルフとの付き合いを考えて仕方無くかもしれんが……それでも簡単に通す気は無さそうだった様だ」
頷いたアン。
「私らも撃たれたしな」
マリーも同意。
「火力を集中するなら蹴散らして通れるとは思うけど?」
「いや……これ以上の敵は増やさないでいただけると」
クレイブが顔を左右に振った。
「だったら北はダメなの?」
オリジナル・エルが地図をなぞる。
「そっちはエルフ軍が待ち構えている」
肩を竦めたパト。
「蹴散らすのは? エルフならもう既に喧嘩を売っているんでしょう?」
マリーだ。
「いや……蹴散らすには火力が足りない」
溜め息を付くパト。
「外に戦車が沢山有った気がしたけど?」
「戦車や野砲は有っても……弾がない」
掌をヒラヒラ。
「もう弾切れだ」
「エルフは持久戦を仕掛けてきているのよ」
ハンナが説明してくれた。
「食料や燃料はダンジョンで手にはいるけど……弾はどうしようもない」
「囲まれて孤立していますからね」
クレイブも唸る。
「弾が有れば……北のエルフを圧倒出来るのか?」
マリーが聞いた。
「そうだな、エルフの殲滅は無理でも押し返す事は出来る」
パトは地図の上の竜の背を指差して。
「どうもココなら竜の背を越えられるらしい」
「誰も越えられないって聞いたけど?」
「獣人達の話では一年に数日だけ山から流れて来る川が枯れて、そこを辿れば向こう側に行けるんだそうだ。竜の背でもそこは極端に低くて、幅も狭いらしい、反対側の向こう側は大雨で大きな池が出来ているらしいけどな」
「ああ……来る途中でその池というか湖というか沼というかが出来る瞬間に出くわしたぞ」
アンは頷いた。
「砂漠がいきなり水浸しで洪水だ……驚いたわよ」
マリーもアレかと頷く。
「そうか……って事は、時間も余り残されていないって事か」
唸ったパト。
「弾が欲しいなら……注文を出すけど?」
マリーが錬金術の鞄から転送魔方陣の描かれた風呂敷を出す。
「もちろんただじゃあ無いけれど」
転送の魔方陣の説明をした。
「金が掛かるのか」
少し考えて。
「現物ではダメか? 例えばミスリルの塊とかだが」
「それでも良いわよ、なんならココはダンジョンなんだしこのサイズが通れるならナンでもオーケー、バイクでも自転車でもその他雑貨とか」
頷いたマリー。
「向こうでそれらを現金化出来るだろうから問題ないと思う」
「どうせドワーフからの仕入れになるなら……直接に物々交換した方が早いかもね」
ローザも頷いた。
「ダンジョンの中のモノは、それが動くってだけで手放しで喜ぶから」
自身の実感も込めてだと思われる。
欲しい物のリストを受け取ったマリーは早速それを送った。
対価に成る物の説明を手紙にして添える。
返事は早かった。
向こうからも欲しい物のリストが送られてきた。
「まずは……バイクか」
パトはリストのメモを見て。
「では、日が暮れる前に片付けよう」
子供達の案内でバイク屋に行った。
以前のペンギンのダンジョンそのままなので迷う事もない。
少し大きめのバイク屋で、建物のなかにも外に大小のバイクが、大量に並べられている。
見た感じ、小型のバイクが多そうだ。
原付では無くてそれ以上で125cc以下?
スクーター依りもスーパーカブ。
この時代の流行りなのかも知れない……たんなる店の趣味かも知れないが。
「では、ローザ」
パトは助手席に乗っていたローザに声をかける。
「バイクを動くようにお願い出来るかな?」
正確には石化の解除はパトの仕事。
ローザはバッテリーと整備だ。
出来上がった物をマリーの風呂敷の上に投げ込んでいく。
ゴーレム・バルタやゴーレム・ヴィーゼ達の仕事だ。
「えらく適当に投げ込んでいるが……大丈夫なのか?」
アンは心配気に見ていた。
「大丈夫よ向こうで適当に受け取ってくれるわよ」
マリーは笑っている。
「お? それ」
アンが一台のバイクに食い付いた。
モンキー125だ。
「あ! やっぱり」
笑ったのはヴィーゼ二人と犬耳三姉妹。
「パト! これアンにあげてもいい?」
バイクを担いで居たゴーレム・ヴィーゼが聞いた。
「いいぞ」
別段、台数に指定は無いのだし……足りないってなら、またどこかで仕入れれば良いだけだ。
「おお! 有り難う」
早速に股がったアンはエンジンを掛ける。
「うお! メーターが光ってる!」
デジタルメーターの事らしい。
はじめてならヤッパリ驚くのだろう。
クラッチの感触を確かめて、ガチャリと左足で1束に入れた。
支えている足を差し替えて、発進。
「馬力はそんなにか?」
スルスルと進んだ。
「アンのドカティの900Mモンスターに比べれば全然遅いぞ」
パトは笑った。
ドカティは以前にパトがアンにプレゼントした物だ。
あちらは900ccなのだから、その差は歴然……比べる方が悪い。
「いや……じゅうぶんだ」
急停止してブレーキも確認して。
「運転しやすい」
「後で、タンクに魔法を掛けて貰え」
パトはローザを指差して。
「今は忙しそうだ」
しかし、もうアンはそこに居なかった。
犬耳三姉妹と一緒に走り出していた。
そして……ローザはコッソリとホンダ・ダックス125をソッと脇に避けていた。
成る程……それが欲しいらしい。
ならと、パトは奥に見付けて居たAPトライクを引っ張ってくる。
タヌキ耳姉妹が乗っていたのが気になっていたのだ。
そして、タヌキ耳姉妹も同じダンジョンでAPトライクをてに入れたのだから、ここにだって同じ物が有る。
後ろに回って確認すると……ナンバープレートも全く同じだった。
「ローザ……これもお願い」
「ヤッパリそれに興味を持った?」
ローザは笑った。
その笑いにはだいたいが察しが付く。
「元国王とは……一緒にしないで貰おう」
ムスっと答える。
「そうね……違うと思う」
ローザは腹を抱えて。
「だって、元国王は乗り手が居るからそれを選んだのだけど……パトは乗り手も居ないのに、それどうやって運ぶ積もり? シュビムワーゲンは置いていくの?」
「うっ……」
言葉の詰まったパト。
チラチラとタヌキ耳姉妹を見た。
見られているのがわかっているタヌキ耳姉妹は苦笑い。
「しょうがないわね」
エノが新しい方のAPトライクを指差して。
「こっちに乗ればいいの?」
ニコニコと頷いたパト。
「有り難い」
さて……店に有る物をほぼ全部を風呂敷に放り込んだ、その後。
「次はミスリルかな?」
パトは銀行を探した。
ミスリルとはアルミの事なのだった。
正確にはアルミに魔法的な処理を施した物なのだが、基本はそのままアルミ。
なので、銀行で探すのは1円硬貨。
お釣りの為の両替用がタンマリと有る。
その後は……電気屋にでも行くか?
それとも先に自転車屋か?
と、そんな感じだ。




