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ファウストの子供達  作者: 喜右衛門
126/233

125 魔物相手でも戦備行軍?


 バルタはルノーftを動かして、前からヴェスペの後ろにくっ付けた。

 そして、運転席のハッチを開けて。

 「これで渡ってこれるでしょう?」


 ヴェスペの後ろ……幌から半身を出したオリジナル・ヴィーゼ。

 チラチラと辺りをうかがう。

 上には魔物の鳥や翼竜……下は気持ち悪いミミズ。

 うえぇ……とは思いつつ、それでも上からの攻撃以外は気にする必要も無さそうだと諦めて、ソロッと幌から抜け出して、ルノーftに飛び付いた。

 同時に銃声。

 横で構えて居たアマルティアのエルフ兵が上に向かってmp40を撃っている。

 その意味は上からの突撃なのだろう……の、迎撃か?

 

 頭を押さえてハッチに飛び込んで素早くそれを閉じた。

 鳥の攻撃でも武器が有るなら自分も迎撃は出きるだろうけど、今は武器どころか丸裸だ……掴まえて噛み付くにも根性が沸いてこない。

 何より暴れてミミズの上に落ちるのはヤダ……ミミズには攻撃はされないとはわかっていても精神的ダメージはクリティカルで入る気がする。

 それは絶対にイヤだった。


 その上からの攻撃は始祖鳥だった様だ。

 銃で撃たれて失速したソイツはヴィーゼを掠める様に投げ出されて、道路を跳ねて脇の沼に成った所に落ちた。

 まだ息が有るの様でバタバタと動いて居る。

 泥が羽に絡んで飛べなくなったか?


 と、その始祖鳥を泥の沼の中から飛び出した黒いモノが丸飲みした。

 ユラリと動くソレ。

 黒く太く長い体に……後方の尻尾らしい部分にはヒレが見える。

 魚?

 ナマズ?

 いや……胴体から手足の様に延びた細い髭の様なヒレの様なモノも見える。

 ハイギョだ!

 乾燥地帯でも雨季が有るなら生息出きる水棲の生き物。

 その名の示す通りに、エラ呼吸では無くて肺呼吸をする古代魚だ。

 そして、乾季は土の中に繭の様なモノを作って雨季が来るまでの間は寝て居るのだ。

 アフリカハイギョなら冬眠では無くて夏眠……ここでは、冬から春に掛けてだろう。

 以前にダンジョンの本屋で見付けたとパトに貰った図鑑に載っていた。

 「こう言うのは好きだろう? 水棲生物図鑑」

 正直興味は無かったのだけど……だって、それは異世界の生き物だからこことはマッタクとは言わないけれど、違う生き物達だ。

 それは想像や空想の生き物と変わらないから……実際に居るかどうかもわからないのだから。

 まあ……それでも嬉しかったけど。

 多少はワクワクもしたし。

 でも……その図鑑に載っているヤツがここに居た!

 サイズは図鑑のソレよりも遥かに大きい……たぶん魔物だ。


 「本物を初めて見た」

 ルノーftの運転席に座り直して呟く。


 「ヤッパリ肉食の様ね」

 バルタは驚いてはいないようだ。

 このハイギョの存在に気付いて居たのだろう……だからルノーftに移れって言ったのか。と納得のヴィーゼだった。

 

 「あれはナニ?」

 「2mは有る始祖鳥を丸飲みしたよ?」

 「10m以上の魚?」

 無線の向こうでは慌てている様だ。

 

 「大丈夫……陸には上がって来ても動きは鈍いから対処は出来るよ」

 ヴィーゼは簡単な説明で済ませる。


 「道路から落ちなければ良いだけよ」

 バルタもヴィーゼに続いて補足。


 「わかった……先頭はヴェスペが務めるは」

 エルだった。

 ヴェスペ自走砲は砲を横には向けられない……常に進行方向にしか撃てないのだ。

 道を外れずに進みながらでは前にしか撃てない。

 なので、ミミズを踏んづけて潰す役割……後方のタイヤ付きが走りやすい様にだ。

 そして、それでじゅうぶんだった。

 

 次に続いたのはロバ車。

 ロバのゴーレムは自分で判断して前のヴェスペに続く……あまり頭の良くないロバ・ゴーレムでもそれくらいなら出来る。

 そしてその後ろで引っ張られているロバ車の車の部分には左右に銃を構えたゴーレム兵が2体。

 上からの攻撃の迎撃の為だ。

 

 次に続いたのはピンクのバモス。

 運転はローザに代わっていた。

 アンやアマルティアにタヌキ耳姉妹が横の窓を開けて銃を構えている。

 

 そして、APトライクに3体のゴーレム兵。

 1体が運転して、残りの2体が後席に乗り横に向けて銃を構えている。


 ゴーレム・バルタとゴーレム・ヴィーゼとゴーレム・エルはそれに続いてバイクで着いて行く。

 こちらは運転に精一杯で迎撃する余裕は無さそうだ。


 最後はルノーft。

 バルタが砲を左右に振っている。

 気にして居るのは沼地のハイギョの方だった。

 

 「何びき居るの?」

 ヴィーゼはそんなバルタに聞いた。


 「近くには……そんなに多くは無いようだけど」

 耳をピクピクとさせて。

 「数匹は居るね」


 


 日も完全に登りきり、進行速度は遅いが随分と進んだ。

 

 「右の鳥を撃ち落として」

 バルタが無線を掴んで指示。


 「低い所を飛んでるヤツ?」

 返答はイナ。


 「そう、ソレ」

 バルタの言葉と同時に銃声。


 イナのkar98k。

 離れた所の始祖鳥が、一発で力を失った。

 水の溜まった沼に落ちて小さく水飛沫を上げる。

 そして、すぐに近付いたのはハイギョ。

 泥を掻き分ける様に進み……水面に浮いていた獲物を食った。

 そのまま離れるように移動する。


 バルタはこちらに近付きそうなハイギョを見付けるたびにそんな指示を出していた。

 近付いても対処は出来るだろうけど、餌さえ与えていればソレすらも必要ない。

 面倒事は出来るだけ簡単に、確実に処理したい。


 「他には?」

 エノが聞いた。


 「今の所は大丈夫」

 空を飛んで居るモノ達は簡単に捕食出来るミミズに夢中だ。

 「それよりも……これが何時まで続くかね」

 バルタは大きく息を吐く。


 「ペトラ……見える?」

 聞いたのはヴィーゼだった。


 「駄目……ズッと一本道の道路で左右は沼地」

 返答の声に張りは無い。


 「このままだと……徹夜に成りそうね」

 バルタは舌打ちをした。

 「もう少し速度を上げられたらいいのに」


 「ミミズが邪魔だから仕方がないよ」

 先頭のペトラがミミズを踏みつけながらだ。

 そのペトラの目に成っているのはナキウサギ。

 ヴェスペの砲の真下の防御板の切れ込みの部分から小さな体をいかして顔を覗かせていた。


 「私達ゴーレムは魔素の補給さえ有れば問題無く動けるけど……みんなは」

 ゴーレム・バルタが無線を使った。

 バイクの操作にもいい加減慣れて多少の余裕が出てきたようだ。

 滑るタイヤも無線と同時にコントロール出来ている。


 「こっちにはアンも居るから交代でなんとかするわ」

 バモスのローザだ。


 「なら私はヴィーゼと交代ね」

 ルノーftのバルタも頷く。


 「うーん……私の代わりは?」

 ヴェスペのペトラが情けなく訴える。

 

 「エルか……な?」

 朝までヴェスペに居たオリジナル・ヴィーゼが思い出しながら考えて居るようだ。

 「エレン達って……戦車の運転はしたこと無いよね。いつもバイクだし」


 「無いね」

 唸ったエレン。


 「クリスティナは論外だろうし……うーん」

 答えは出せそうにないヴィーゼも唸る。


 「見えるで言えばクリスティナなんだけどね」

 アンナもヤッパリ唸る。


 「戦車の運転は無理」

 ぶっきらぼうに言い放ったクリスティナ。

 体の大きさはオリジナル・ヴィーゼと同じくらいなのだから練習すれば良いのだろうけど……それは今更だ。

 この状況でソレをさせるのは怖いものがある。


 「やっぱり……エルだね」

 ネーヴが結論を出した。

 「クリスティナが補助で誘導かな? 夜でも見えるんでしょう? コノハちゃんを使えば」


 「見えるけど……それは決定?」

 クリスティナが聞いた。

 

 「決定!」

 ペトラが叫ぶ。

 流石に徹夜は無理らしい。


 「そっか……なら今から寝る」

 クリスティナはそう言って……静かに成った。


 ふて寝とかでは無くて、責任を果たす為の休憩を選択したようだ。

 

 「じゃあ……私も寝る」

 エルもクリスティナに倣う事にしたようだ。

 

 まあ、ヴェスペの砲は撃つ事も無いのだから……それでも問題は無かった。


 それに……実際のところでもそれ程の危険も無い。

 ただ、大量の魔物に囲まれた状態がマズイというだけだ。

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