123 スコール
50ポイントだ!
久し振りに上がった!
応援有り難う。
まだまだ頑張るよ。
また明日!
「ひっどい雨だね」
エレンが脱いだ服を絞るとジャバーと水が落ちる。
「ホント……呼吸も出来ないカンジ」
アンナは脱いだ靴に溜まった水を捨てて。
「まあ……体に着いた土埃を流せて良いんだけど」
ネーヴは真っ裸のままで雨避けのシートから出て、雨に打たれて体を洗う。
「確かに」
エレンとアンナは御互いの顔を見合わせて……そしてそのまま外に出た。
「石鹸が欲しいね」
ガシガシと頭の髪の毛をかきむしる。
「相変わらず……裸なのだな」
バイクのハンドルに引っ掛けた無線から声。
「道の真ん中だぞ?」
三姉妹はピンクのバモスに目線をやる。
滝のように落ちる雨とそのせいで白いモヤの様に成った先……ぼやけて見えるバモスの中でアンが無線を握っていた。
「最近はわりとちゃんとしてるよ」
ネーヴの言い訳は雨で遮られて車の中のアンどころか無線機に届いて居なかった。
相手からは口がパクパク動いているだけにしか見えないだろう。
見えたとしてだが。
「男の人も居ないしいいじゃん」
アンナも口をパクパク。
「こんな道でこの雨だと……誰も通らないよ」
エレンは笑っていた。
「マガモ兄弟は男だよ」
いつのまにか背後に居たオリジナル・ヴィーゼも髪の毛をガシガシ……もちろん真っ裸だ。
「カモで鳥じゃん」
三姉妹は大笑いだ。
「子供ね」
これはマリーの声。
「まあ13才なら……子供か」
「うわ……もう子供じゃあないよ」
「ちょっとだけだけど成長してるし」
「うん……もうペッタンコじゃない」
三姉妹はヴィーゼの胸を指して叫んだ。
「ちょっとだけじゃん……変わんないよ」
ヴィーゼは自分の胸を押さえて後退りしながらブー垂れた。
……グニャリ。
そのヴィーゼの裸足の足の裏に柔らかい感触。
?
「なんか踏んだ」
足元に視線を移す。
固い舗装路に叩きつけられた雨粒が盛大に跳ねて白くモヤっているそこに……ピンク色の線。
三姉妹も笑いながら、ヴィーゼに合わせる様に顔を近付けた。
「誰か寝てるの?」
「道の真ん中で雨よ」
「寝るとしたらヴィーゼだけど、ここに居るじゃん」
その笑いはしだいに固くなる。
「有るね」
「長いね」
「太いね」
おしりを下げて屈んだヴィーゼ。
「ミミズ?」
自分の太股ほどの太さに2m程の長さ。
ピンク色の胴体には節が連なって見える。
そして……ウニウニと蠢いていた。
「ミミズの魔物だね……」
「雨で地表に出てきた?」
「食べられるのかな?」
「いや……見た目は美味しそうだけど食べちゃダメでしょう。もう私達は子供じゃあないんだから」
ヴィーゼはその柔らかい胴体を指でツツいた。
ウネウネ……。
「子供とか大人とかそういう問題?」
「人か? 獣か? の問題じゃあ無いの?」
「焼く?」
「まあいいか」
ヴィーゼは腰のナイフを取り出して、スパスパと輪切りにした。
「ヤッパリ風の魔法は使えないの?」
それを見ていたエレンが聞いた。
「使えるけど……チョッと面倒臭い感じ? 妙に疲れるしそこだけに集中しないとダメだからもうあんまり役に立たない感じかな」
スパスパはそのまま続けて。
「元国王にドラゴンの説得を頑張って貰わないとね」
見ていたエレンは聞いた。
「これどうすんの?」
「コノハちゃんとかなら食べるでしょう? お土産」
「そか」
頷いたエレン達は輪切りのミミズを拾い始めた。
「フクロウは好きそうだもんね」
「今はカモもヘビも居るし」
「食べないんだ……」
そしてヴェスペの後ろからそれを中に放り込む。
バラバラと適当に。
「うぎゃ!」
ヴェスペの幌の越しに悲鳴が聞こえた。
「ナニこれ!」
騒いでいるのはエルだろう。
「使役獣の餌さ」
オリジナル・ヴィーゼが外から叫ぶ。
「元はミミズの魔物」
ペトラのヘビは元からだけど……クリスティナの三匹の鳥達もヴェスペに避難していた。
「そういえばナキウサギって……これは食べないか」
「そうね……草だね」
ペトラの返事。
「なかなかにグルメなヤツだ」
唸るオリジナル・ヴィーゼ。
「そう? 安上がりで良いじゃあ無い……そこら辺に生えてるし簡単に取れる」
「いや、草っ原に放しとけば良いからモット楽?」
「野菜は今一だと思う」
何時もの娘は……自分基準の様だ。
「少し……雨が弱まった?」
ペトラは話を変えて聞いた。
「ん? どうだろう?」
オリジナル・ヴィーゼは両手の平を上に向けて確かめる仕草だが、激しい雨が多少マシに成ってもわからないと首を捻った。
と、そのヴィーゼの背中を押した三姉妹。
「なに?」
三姉妹はグイグイとヴィーゼを押しながら……横の道路を指差した。
成る程……少し雨は弱まっている様だ、見える範囲が広がっている。
そして、その範囲には……ウジャウジャとミミズが這い廻っていた。
大量だった。
数の暴力だった。
そして……気持ち悪さはマックスだ!
「うぎゃ!」
ヴィーゼも流石にこれには悲鳴を上げた。
そして、ヴェスペによじ登り。
「いれてぇ、中にいれて」
幌の後ろから潜り込む。
その後ろから三姉妹も続いた。
「ナニよ……狭いじゃない」
ブチブチと文句を言うエルには、無理矢理に外を覗かせる。
「うぎゃ!」
体を目一杯に縮込ませて。
「ナニよあれ!」
「ミミズだよ」
首を竦めたオリジナル・ヴィーゼが答えた。
「なんであんなに大量に居るのよ!」
「雨が降ったからだよ」
「どうして誰も気付かなかったのよ!」
「凄い雨で見えなかった」
私のせいじゃない、雨のせいだと言い訳のヴィーゼ。
「そう! 匂いも雨で消された」
三姉妹も言い訳。
「バルタは気付かなかったの?」
無線を取って怒鳴るエル。
恐怖を怒りで上書きする積もりの様だ。
その無線の向こうのバルタは呑気な声で。
「ナニが?」
「外よ! 外見て!」
「おおお……凄い数だ」
砲の照準器でも覗いたのだろう、そんな音の後に。
「ミミズか、流石にこの数は気持ち悪いね」
しかし、声音は冷静に聞こえる。
「気持ち悪すぎるわよ!」
「でも、対して悪さはしななそうだよ」
攻撃されたとして、それがどんな攻撃に成るのかもわからない。
ウネウネと体を押し付ける?
口って有るのだろうか? 有るなら歯は?
噛まれても痛くは無さそうだ。
「危険とかじゃなくて気持ち悪いのが危険なの!」
「ワケわかんない」
笑ったバルタ。
「それよりさぁ……ヴィーゼ戻ってこないの? 暇だよ」
「えええ……この中を歩くの?」
オリジナル・ヴィーゼはモゴモゴと口ごもる。
「嫌だよ……」
「なら……私が行こうか?」
ゴーレム・ヴィーゼが笑って手を上げた。
「ええ……気持ち悪くないの?」
それはそれで嫌だなと思うオリジナル・ヴィーゼのちょっとした抵抗?
「見た目は気持ち悪いけど、実害は無いし」
そう言って運転席のハッチを開けた。
「行ってくる」
「魔ってよ!」
押し止め様とするオリジナル・ヴィーゼは……それでも外に出るのは躊躇していた。
その二人を観察していたペトラは考える。
ゴーレムとオリジナル……元は同じなのに変化が出ている。
どういう事なのだろう?
もう、完全に別人?
過去を共有しているだけに成ったのかな?
いや……それよりも。
と、幌の隙間から覗いたペトラ。
あれなら私でもスグに捕まえられるな……と、考えた。
でも、ミミズって……どう役に立つ?
ヤッパリ農業?
うーん……今は関係が無いか。
それに、良く考えたら……ニョロニョロ系はもう既に居るしなぁ。
ニョロニョロばっかり増えてもなぁ。
……やめとこ。
「うん……その方が言いと思うよ」
クリスティナがペトラに向かって言った。
「え? 心を読んだ?」
そうか、クリスティナはエルフだ! 人の心が読めるんだ!
「それ……違うわよ」
エルが横目で告げる。
「エルにも読まれた!」
「あんた、顔に出るからわかりやすいだけよ」
「そうなの?」
「そうだね」
その場の全員が頷いた。




