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ファウストの子供達  作者: 喜右衛門
113/233

112 行軍資金……つまりは旅費


 王都の出た子供達。

 門を背中に悩んでいた。

 

 「ねえ……パトって何処に居たっけ?」

 先に飛び出していた、犬耳三姉妹がバイクを停めて。

 エレンが真っ直ぐ前の道を見て。

 アンナは左の道に顔を向けて。

 ネーヴは右の道だ。


 あとから追い付いたヴィーゼが笑う。

 戦車の運転席のハッチから顔を覗かせて。

 「ネーヴのは違うと思うよ……だって、そっちから来たんだし」

 

 「たしか国の反対の端っコって言ってなかった?」

 バルタも砲塔後ろのハッチから半身を出して加わる。


 そこにルノーftの横に並んだヴェスペの上からエルが言った。

 「最後の手紙だと南東?」


 「それって……どっち?」

 ネーヴがキョロキョロ。


 「王城が王都の中でも真北になるから……ここは南門」

 ピンクのバモスから見ていたのだろうマリーが無線機で教えてくれた。

 「まずは真っ直ぐ南に行って山脈をくぐるか迂回するかね」

 助手席からエレンを指差していた。


 「山脈……ドラゴンの背か」

 バルタは少し渋い顔になる。

 誰も越えられない大な山だ……高過ぎて険し過ぎる、もうほとんど切り立った巨大な岩が積み重なった様な山。

 そこの反対側なら……南に行った山脈のクビレた部分にトンネルが有った。

 エルフが種族特有の土木技術をフルに使って掘ったモノだ。

 

 以前にソコは通った事があった……元国王と戦った時だ。

 そして、そこには魔物のボスの巨大猪が居た筈だけど……今も居るのだろうか?

 出会うと厄介なヤツだ。

 他の魔物を使役してかで襲ってくる頭のいい魔物。

 最後に相対した時は、元国王と共闘していた……たぶん、元国王は猪を使役はしていないとおもう。だって負けそうに為ったら元国王を見捨てて、すぐに何処かに逃げ出したし。


 「ドラゴンの背を越えるならトンネルが近道だけど……でも、そこにパトが居るかどうかよね」

 唸るエル。

 バルタと同じで猪も気にしての事だろう。

 「国の本当の端っコなら山脈からまだ南に為るから……それだとトンネルは遠回り?」


 南に細く成る形だから麓を斜めに進んだ方が距離としては近いとなる。

 「正確な位置がわからないと……判断出来ないわね」

 バルタはアンに助けを求める様な視線を送る。

 しかし、バモスの運転席でハンドルに凭れてながらに首を振る。

 知らないらしい。

 知っていたら、もうとっくにパトの所に行っているかと、納得もする。

 

 「とにかくそこまでは道は同じなんでしょう?」

 マリーが急かす様に。

 「だったら、そのトンネルの入り口なりで考えたら?」


 

 

 草原を道なりに進む一行。


 「魔物が居る……」

 クリスマスが何度目かのそれを口にした。

 先に飛んでいるマガモ兄弟が見付けたらしい。


 「それは……食べられそう?」

 聞いたのはエレン。

 先走る事もなくにルノーftの横を並走していた。

 

 「ダメだと思う……虫っぽい」

 これも何度目かの返答。

 国の南は虫の魔物が多くなるから仕方無いといえ……それでもさっきから虫ばかりだ。

 

 「まあ……私達は虫でも抵抗なく食べられるけど」

 アンナはチラリと後ろを振り返る。


 見られたバモスのマリーが叫ぶ。

 「虫はイヤ!」

 その後ろに座るムーズも首を横にブンブンと振っていた。


 「好き嫌いはダメだよ、虫も美味しいのに」

 ネーヴは肩を竦めて。

 「サイズもデカイし食いごたえも有るのに」


 「セミとタガメとかは特に美味しいよね」

 ヴィーゼも同意していた。

 水中と陸の虫だが、形的に同類とでも思って並べたのだろう。

 全然違うような気もするけど……まあ、どうでもいい事だ。


 「とにかく虫を食べるくらいなら舌噛んで死ぬわ」

 完全な拒否だった。


 「クリスティナ……食べられそうなのを見付けてあげて」

 バルタは無線にそう告げた。


 「そうして頂戴」

 マリーも念を押す。

 

 「食べられ無くても売れそうなら、それもね」

 エルが追加の注文。


 「虫の魔物って売れるの?」

 クリスティナが驚いて聞き直した。


 「まあ、羽とか殻とかが素材に成るらしいよ」

 ペトラがヴェスペの運転席から、それに答えていた。

 「虫で無くてもカタツムリの殻とかね」

 普通の虫やカタツムリではダメだけど、魔物として現れるモノはとにかく大きい、巨大なそれらは加工すれば装飾品や伝統武具に成る。

 よい値で売れるかどうかは……微妙だけれど。

 それもローザに聞けばわかるのだけど……今は酔っぱらって寝転けていた。

 

 「材料としてなら……虫の毒も使えるけど」

 マリーが唸る。

 「錬金術の素材」

 背中を仰け反らせて微振動をさせている。

 「想像しただけで気持ち悪いわ」

 

 錬金術士なのだし……それで良いのか? とも思うバルタ。

 

 「でも……なんで、わざわざ捕まえて売るの?」

 マリーはどうにか話を変えたい様だ。

 

 「だって……旅費がね?」

 エルが苦笑いで答える。

 「もう元国王の頼まれ仕事でも無いし……私達の持っているお金は知れているから」

 チラリとバルタを見た。

 

 最近に手に入れた金貨はそのまま手付かずだ……結局は戦車も買えなかったけど、それは逆に幸運だったと思える。

 その前に稼いだお金……列車でのショーの出演料とかは小遣い程度だけど無いよりましだ。

 その合わせた金額がパトの所までの旅費の全額。

 「節約は大事だね」

 出来る事なら別の収入も欲しい。

 エルはそれを考えての売れる魔物だと言っているのだろう。


 そして犬耳三姉妹もそれがわかっている。

 だから魔物がと言われても、すぐには動こうとはしないのだ。

 何時もならそれがなんであれ見てくると叫んで走り出すのに。

 燃料代を気にしてだと思う。

 それと下手に戦闘になったら……弾代もか。

 頭の中がブツブツと呟きで漏れていた。


 「そんなモノは私が居るから大丈夫よ」

 マリーはそのバルタの独り言に返事を返した。

 

 「お金有るの?」

 今度はバルタが聞き返す。


 「手元には無いけど」

 ゴソゴソと錬金術士の黄色い小さな鞄を探る。


 「何か売れるモノでも持っているのか?」

 横で運転しながら見ていたアンが聞いた。


 「違うわ……転送の魔方陣よ」

 鞄から出して来たのは白いビニールシートの様なモノ、錬金術の何かだと思われる。

 マリーはそのまま助手席から後席に体を捩じ込んで、もう1つ後ろのラゲッジスペースにまで進んだ。

 そして、その床にさっきのシートを拡げる。

 魔方陣が描かれていたそれに、手紙を書いて置いた。

 呪文を唱えて魔法を発動させる。

 すると、手紙だけが消えた。

 「いま、注文を出したから……暫くすれば届くわよ」


 「それって、なんでも出せる魔法ですか?」

 ムーズが驚いて聞いた。


 「違うよね……今、注文と言ってたし」

 アンは冷静に答えるも、小首を傾げている。


 「そう……料金は発生するし、サイズにも限界があるわ」

 マリーはジッと魔方陣のシートを見詰めたままで。

 と、それが光だして……中央に1個のジェリカンが現れた。

 「ガソリンで良いのよね?」

 と、それを指差して無線で皆に聞いた。

 何時もの×100と書かれた魔法のジェリカン……容量は20リットル×100で2トンのヤツだった。

 

 「凄い……」

 素直に驚くムーズ。


 「でも代金は?」

 バルタが聞いた。


 「そんなのアイツに払わせるわよ」

 フンと鼻を鳴らすマリー。

 アイツとは元国王の事なのだろう。


 「でもさ……それって何処から持ってきたの?」

 ヴィーゼの質問は、確かに気になるところ。


 「この魔方陣は私のラボに繋がっているの……だから向こうに居る誰かが用意して此方に送ってくれたのよ」

 

 「それってドワーフのお婆さんとか獣人のオバサンとか?」

 

 「そうね……もしかするとゴーレムとかシグレの息子とかかもね」

 シグレさんの息子とは、あそこで会ったカエルの擬人の人だろう。

 「まあ……向こうで用意出来るモノは此方に遅れるってことよ」


 「便利だ」

 それまで黙っていたアマルティアが唸る様な感想。

 「それって、私でも出来るかな?」


 「アマルティアには無理じゃない? これは人間にしか使えない錬金術だし」

 マリーの言う人間とは、純粋な人族って事なのだろう。

 「逆に人なら……少しの勉強で出来るのだけどね。昔は魔法学校でも教えていた程だし」


 「ならムーズか……ペトラ?」

 ムーズも人だし勉強次第では出来そうだ。

 でも、ペトラはどうだろう?

 一応は人族の成りはしている……でも中身はドラゴンと同じ種類、魂だけだけど。


 「ムーズなら4年か5年で出来るかもね」

 頷いたマリー。

 「でも……ペトラは無理じゃない?」

 首を捻ったマリー。


 「私も人間族だよ?」

 ヴェスペの運転席から文句を垂れる。

 

 「そうだろうけど……勉強だよ?」

 苦笑いで答えたマリーはペトラの学力を問題にしていた様だった。


 「ひっどー」

 ブー垂れるペトラだった。

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