102 国防警察軍本部
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静かで少し暗い感じの街並みが続く。
活気がないと言うよりかは、閑静なと言うのだろうけど……どちらも同じだと思ってしまうバルタだった。
石造りは冷たさを感じるし。
高い建物は影を増やす。
喋らない住人は暗い印象だ。
……まあ、前に住んでいた時よりもマシだけどね、前は人を見掛ける事が少なかったし。
そんな大通りを真っ直ぐに進んで……また城壁、今度は王城の外壁だ。
それをくぐって中に入る。
昔の様に門番は居ない。
最初の城壁にも居なかったけど、それは前からだ。
城壁の外にまで街が溢れた時点で、門番に意味は無くなったからだ。
しかし、城は違うと思う。
王が居るのなら門番くらいは必要だろうに……今はその王がドラゴンで不死らしいから居なくても問題無いとは成らないと思う。
いや、それ以前に一般人が普通に入って行ける事がおかしいのか。
特に私達みたいな獣人でも誰も止めやしない。
なんだか不思議な感覚だ。
初めて入る王城の内側だけど……感動よりも先に嫌な気分にさせる。
人以外が入ってはいけない場所。
人以外が入る時は、それは罪人だ。
例えばエルフは捕らえられて地下の牢屋に閉じ込められる、その時に
ここを目隠しされて通るのだ。
そして、クリスティナはソコに居た……らしい。
本人は言わないが、聞いた経歴だとそうな筈だ。
今は……でも、ドラゴン自体が人外か。
ドラゴンが王の時点で人以外は有り得なく為るのかと少しだけ納得。
そのドラゴンが王を辞めた時がまた変わる時なのかも知れない。
また人に戻れば前の様に戻るのだろうし。
エルフが王に成れば……エルフ以外は立ち入り禁止かな?
ドワーフは有り得ないらしいけど、他にも亜人は居るから……その場合はどうなるのだろうか?
獣人が王には無いな……今は差別は禁止でも心の中には残ってるし、そもそも未だに人権は認められていない。ただ法で定められたから露骨な事は無くなっただけだ。
もちろん村や町によっては、まったくの差別が無い所も有る。
それは古い歴史の有る所で、大昔から共存出来ていた文化が残っているからだ。
新しい街にはそんなのは無い。
大きな街では歴史が有っても……それを塗り替えた者が居たからだめだ。
例えば……以前の親衛隊なんかだ。
バルタはすぐ先に在る広場の端にに立つ、国防警察軍の一人を見た。
足の爪先から手の小指の先までピッと伸ばした姿勢……それが微動だにしない。
あの男は元親衛隊員だ……と、わかる。
国防警察軍はモット適当だからだ。
元が貴族軍の軍隊の兵士からなる警察軍……上下関係は厳しいが、態度や身形には寛容だ、そんなものに規律を求める依りも任務が最優先と為る。
いつ死ぬかわからない戦場では、その死の恐怖ゆえに兵士が緩む事を許さない環境だからだ。
だからか、喫煙者も多い。
パトも何時もタバコを咥えていたし。
でも親衛隊は戦場とは関係が無い。
一般市民に規律を求めるその足枷の様な存在だ。
だからか気が緩み易い……自分を立場の上の上位の人間だと勘違いしやすい。
それを締める為には隊員を規律で縛る必要があった……と。
まあ、それは後付けの理由だろうけど。
結局は上から順番にパワハラの連鎖で、恐怖を利用しての言うことを聞かせる……そんなのが本当だ。
そして、身に付いた恐怖は二度と抜けない。
あんな風にだ。
身動ぎもせず、何処を見ているかもわからない視線。
人間味を全く排除した様な感じだ。
それに引き替え。
元からの警察軍の隊員は……。
キャラバンの先頭を進んでいたL3ガーデンロイドが広場で停止して、豆戦車から笑いながらに降りてくる隊員達。
元親衛隊員に、いかにも適当な挨拶をしていた。
そして、口々に話し出す。
いやー聞いてくれよ……から始まる、大変な目に会ったとだ。
その元親衛隊員が此方に向かって歩いてきた。
膝を曲げない、威圧的な歩き方だ。
「おい! 貴様達……こっちへ来て止まれ」
指して居るのはルノーft軽戦車だった。
困惑したヴィーゼがバルタに助けを求める視線を回す。
それには頷いて返した。
「言う通りにしてあげて」
黙って前を向いたヴィーゼ。
スルスルと戦車を止めた。
「なんでしょうか?」
砲塔の後ろから顔を出したバルタが元親衛隊員に聞いた。
「獣人か?」
嫌な顔を見せた元親衛隊員。
「その戦車はどうした? それは親衛隊が使うルノーft軽戦車の様だが?」
どうしたと言われてもだ……と、思うバルタ。
元は確かに親衛隊のモノだ。
それを戦争中に拾った? 奪った? まあ、そんなトコロだ。
だけど、それは正直には言えやしない。
どうしたモノかと困惑していると。
「おい……やめとけ」
国防警察軍の男が、元親衛隊員の後ろから現れた。
「この者等は、アン司令官補佐の知り合いだ」
駅で会った隊員だった。
「今回は、我々が無理に依頼して警護を頼んだんだ」
キャラバンの馬車から降りるムーズを指差して居る。
嘘だった。
百歩譲っても、依頼されたのはキャラバンのリーダーからだ。
実際には正式に依頼等は無かった、たまたま助けた成り行きでそのまま一緒に来ただけだ。
でも、助かる嘘では有ったので……バルタは素直に頷いておいた。
「戦車は確か……以前に親衛隊を語った賊が使ったヤツを接収して、この者の主に渡った筈だったか?」
国防警察軍の隊員は適当な事を続けるが……親衛隊が当時の国防警察軍の地方司令官だったアンを拐おうとしていたのは事実で、それを助けたのもパトだったから全くの嘘というわけでも無い。
そして、その事を知っている元新鋭隊員は眉を寄せた。
一瞬だけど無表情が崩れる。
イヤな記憶なのだろう。
国防警察軍に負けた事実。
それが為に国防警察軍の中に再編されたのだ……吸収合併とそんな形で。
元親衛隊員はその後は無言に為った。
キッとバルタ達を睨む。
国防警察軍の兵士には顔も向けずに踵を返した。
そのまま……元の位置に戻る。
また、生き人形の様に動かずに辺りを威圧し始めた。
「有り難うございます」
バルタは国防警察軍の兵士に礼をした。
その国防警察軍の兵士は。
「かまわない」
と、手を降ってキャラバンの方へと歩いて行った。
そのスレ違いに、ムーズがやって来る。
「バルタ……どうしよう?」
手には小さな皮袋を差し出していた。
「なに? それ?」
バルタはそれを受け取って中を見る。
「今回のお礼だって」
中には金貨数枚が入っていた。
護衛の金額にしては多いと、眉を寄せるバルタ。
「まあ貰えるモノは貰っておきましょう」
そこに現れたエル。
側にはクリスティナも居るので、ムーズにでも頼まれて呼びに行ったのだろう。
その時に事情でも聞いたか?
「ただ問題なのは……」
チラリとピックアップトラックを見て。
「今回の仕事は元国王からの依頼での護衛だから……その業務上での副収入となると」
フームと唸るエル。
「そのお金は元国王に渡さないとイケナイかもだね」
それは嫌だと顔に描いてある。
「だったらさ」
運転席から顔を覗かせたヴィーゼがニヤリと笑って。
「ゴーレム・エルとゴーレム・バルタとゴーレム・私で……それを持って説明に行かせれば?」
ヤラシイ笑いだ。
だけど、そのヤラシイ笑いはエルに伝染していた。
「成る程……いい案ね」
クククッ声が漏れている。
「呼んでくるわ」
小走りに走り去る。
向かった先はアマルティアのラクダっぽいロバが引くロバ車。
そこにゴーレム達と便乗していた三人が居た。
戦車でも有ればそれを使うのだろうけど……今は乗れる戦車も余ってはいない。
なので、歩兵要因としてゴーレム兵と一緒に居るのだ。
先の戦闘で戦車は完全に破壊してしまったのが間違いだったかもしれない。
1両でも残っていれば、今ごろは戦力アップだったのに。
まあ、それは今更だし……仕方が無い。
辛うじて動かせそうなM4シャーマン中戦車も最後はM24柄付き手榴弾で燃やしてしまったからだ。
でも、今回の金貨が有れば……小さい戦車か装甲車が買えないだろうか?
あの子達……ゴーレム・私達の為にもだ。




