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其の七十一……『『ひだる神』にまつわる話:前編』

 唐突だが『読者の皆さま』は『ひだる神』という『妖怪』を御存じだろうか? 


 本来は『西日本』を中心に語られる『怪談』で、『旅人』が『山の中』を歩いていると『急激な空腹感』や『倦怠感』に襲われてその場から動けなくなってしまう。その『不可思議な現象』をおこすのが『ひだる神』という『餓死者の霊』なのだそうだ。『神』というがその正体は『人間の怨念』らしい。


 この『妖怪』は『科学的』にも『説明可能』らしく、『人間は高強度の運動を続けていると突然『糖分切れ』を起こしてその場から動けなくなることがある』と言う『ハンガーノック』が『正体』とされる。また『火山ガス』に含まれる『二酸化炭素や一酸化炭素』が『地形』の関係で一か所に『溜まる』ことがあり、そこに踏み込むことで『酸欠』を起こしても同じ『症状』がでるらしい。『山』の中には意外とそういう場所が多いそうだ。




 だが一方でこの『昔の人たち』が『登山中に突然動けなくなる現象』を『山中にいる餓死者の霊』に結び付けた『理由』について考えたことはあるだろうか? 実は『江戸時代初期』くらいまで(地域差もあるが)『農民』にとって『飢餓』は『とても身近なもの』であり、『現代日本』では想像できないくらい昔の大多数の人たちは『飢えていた』のである。



 まず初めに『飢饉』はなにも『凶作の年』にだけ起こる現象ではなかったという話からする必要があるだろう。たとえどれだけ『米』が豊富にとれようとも『端境期』と呼ばれる『まだ今年のコメが収穫できないが去年の収穫分が底をついてしまい食べる物が無い期間』があったことが象徴的であろう。



『平安時代』などはこの『端境期』に当たり前に『農村の飢餓』が発生するので、『朝廷』が『国司』を通じて『備蓄している食料や衣服など』を『配給(賑給)』を行っていた記録があるらしい。まあこの『非常時に備蓄』を準備するために『普段』は多めに税収をとったりもしていたそうだが………(今でいう社会保障みたいなものだと思う)。(汗)



 またこの時代には『奈良時代』から続く『農民に必要あるなしに関係なく強制的に稲を貸し付けてその利子を徴収する』という『出挙すいこ』という悪名高い制度があったそう(しかもこの利子は税金とは別扱い)だが、『飢饉』が起こるとさすがに『無利子』になったそうだ(そりゃあ当然だろうね)。また『祖調庸』などの『律令制』の『義務』も必要に応じて『減免』されていたらしく、つまりこれらの『税』は我々が思っていたよりも『しっかり徴収できていた』わけではないそうだ。まあ『どれだけ徴収できていたか』は『記録』が残っていないのでわからないわけだが。



 だがそれでも『ちょっとした平均気温の上昇や下降』でも簡単に『農業生産』は落ちてしまうためいろいろ工夫していたらいし。『小氷期』などの『寒冷化』で『農業生産』が落ち込むことは想像しやすいが、一方で『温暖化』で『稲の生育が良くなった』としてもそれが『逆』に『飢饉』を発生させることもあったとか。なぜなら『虫』の活動が活発化することで『虫害』が大規模化したり、『温暖化』といっても『乾燥化』も同時に起ると『干ばつ』になるからである。


 その『干ばつ』の時期には『大唐米(占城稲)』と呼ばれる『インディカ赤米』が試験的に導入されたこともあったとか。この『赤米』は長く低評価だったが『現代』に入って品種改良、再評価が進んでいる。また『干ばつ』がダメだからと言って『多雨』になっても特にうれしいことはなく、当時の『貧弱な治水技術』ではちょっとした『増水』ですぐに『農村』は『壊滅』していたことも忘れてはならないだろう。




 また『中世』に入ると『赤米』だけでなく『米が作れない冬の時期』に『水田』を『畑』に変えて『麦』を栽培するという『冬麦の裏作』が全国的におこなわれるようになったという。この『麦の裏作』は『中世ヨーロッパ』における『三圃制の導入』に比するくらい『インパクト』のある出来事だそうだ。これで多くの『農民』が『端境期』に『麦』を食べれることで『飢餓』から解放された……、


 ……という『側面』もあったそうだが、実はその一方で『麦を作ると翌年のコメの収穫量が落ちる』という『見逃せない事実』もあったらしい。いくら『水田稲作』といっても『地力の消耗』はどうしても避けられず、『幕府』などは『麦の裏作による税収の減少』を認識はしていたのだが、『農民たち』は『米の収穫量』を落としてでも『端境期の食料の確保』に拘っていたのだそうだ。そこに当時の人たちの『切実な感情』を垣間見ることができるかもしれない。『冬に食料が無い』と言うのが何よりもつらかったのだろう(同情)。




 そして、そんな『真摯な努力』を続けていたとしても『農村』から『飢饉』が去ることはなく、ちょっとした『気候変動』などで簡単に『凶作』になっていたらしい。なのでそういう多くの『農民』が『村』を放棄して『海沿い』や『山の中』に『逃亡』していたというのだ。そこで『農民』たちは『魚』をとったり、『山菜』を集めたりして『飢え』をしのいでいたらしいが、その『山や海沿いの土地』は実は『武士(地頭や守護)』が所有している『領地』だったりしたらしい。だが『農民』たちは背に腹はかえれないので『武士』を敵に回すことを承知で勝手に『領地』に流れ込んでいたとか(必死)。なかなか壮絶である。



 もちろんこれは『新しい農機具が導入』されたことで『農業生産が飛躍的に向上した』とされる『室町時代』でも変わらなかったらしい。各地に『領地』をもつ『武士』たちはなんとかして『飢えた農民たち』が自分の領地から勝手に食料を持ちさったり居座ったりすることを止めようとしたわけだが、『農民たち』も『死に物狂い』で抵抗していたとか。



 ちなみにこの当時の『守護職』を務める『武士』たちは『幕府の命令で県知事として地方に赴任する場合、その土地に居座っていて動かない前任者を殺さないと仕事を始められない』という『ウルトラベリーハードボイルド社会』を渡り歩く『生粋のマフィアのボス』みたいな人達だったわけだが、その『縄張り』に入り込んで公然と『食料を奪い取る』農民たちも負けないくらい『狂暴』だったということだろう(汗)。


 ちなみに『平安時代』から『国司』や『地頭』、『守護』の『評価基準』は『ちゃんと決められた税を決められた期間までに届けることができるか』である。つまり『ちゃんと徴税出来たら一流』という『現代』では考えれないくらい『有能のハードルが低い社会』だったらしい(いやこれはかなり語弊あるけど)。



 またある『文献』には『勝手に山に入り込んだ農民たち』が『食うもの』に困って『蕨の根っこ』を粉にして『食料』にしていたが、それを近くの『神社』の『巫女』と下働きの『子供たち数人』が盗んでいたので──『神社の関係者』も飢えていたらしい。またそもそもその『山の食料』は『神社の所有』だったことを留意いただきたい──『農民たち』が怒り狂って『リンチ』にして『殺害』したという『凄惨極まる事件』も記録に残っているとか………『飢饉と言う非常事態』がどれだけ『怖ろしい』かを物語る象徴的な出来事かもしれない(畏怖)。



 そして、実はこの『室町時代』からもっと後の『江戸時代』でも『飢饉』は解決しておらず、その一例が『江戸幕府』が繰り返し発布していた『酒造禁止令』らしい。つまり『農民たち』が『大事な食料』である『米』を『酒』に変えて飲み干してしまうため、『幕府』が『米を全部酒にしたら飢饉になるだろうが! やめろ!』と何度も『禁令』を出していたのだ。


 だが『何回も出す』ということはつまり『誰もやめなかった』ことの証拠であるわけで、『貧困層』が『高いストレス』によって『アルコールやドラッグ』に手を出してむしろ『少ない財産』を失ってしまう事例は『現代』でも世界中で報告されることだそうだ。これはこれで『怖ろしい話』である。




 ………………と、ついつい『個人的な歴史趣味』に走ってしまったわけではあるが、恐らく『昔の人たち』語る『ひだる神』という『妖怪』の背後にはこんな『歴史』が『意識』されていたのかもしれない…………ならばこの『妖怪』は『ハンガーノック』などという『分かりやすい説明』だけでは済ませず、『昔の人たちの声なき叫び』に『耳』を傾けてみるのもいいかもしれない………………とは言いつつ『私』も全然詳しいわけではないけど(汗)。







 ではやっと『本題』に入るわけだが、これは『昼休み怪談部の部長』である『高宮ユズハさん』の友人である『上島愛さん』と言う『女子生徒』が話してくれた『怪談』だ。




「………………これは『私』が『数日前』に実際に『体験』した『怪談』………いんやぁ『奇談』の方かな? 『短い話』だけどまあ聞いてよ、『体験した私自身』はそれなりに『やばぁ』って思ったからさ………」と『上島さん』




 これは彼女のいう通り『数日前の朝』にあった『出来事』だそうだ。この時『上島さん』は『一人で徒歩で登校』していたそうで、『雪道』の中を『ブーツ』で歩いていたらしい。『靴重いし地面べちゃべちゃで歩きづらい』と思いながらご機嫌斜めだったそうだ。



「…………あーくそ、朝四時に『親父』に起こされて『雪掻き』手伝わされたし………あの『くそ親父』自分の子供が『娘』だって認識してねーだろ………おかげで『眠気と疲れ』で『朝ごはん』ちゃんと食べれなかったしよ~! まじで『要介護』になったら覚悟しろよな『熊親父』がよぉ………(超不謹慎発言)」と『上島さん』



 よくわからないがこの時『上島さん』は朝っぱらから『疲労』と『空腹』でかなり『目が座って』いたらしい。そして『黒百合丘学園』に近い『大通り』を歩いていると、ふと思ったそうだ。



(…………あれ? 『ひだる神』ってなんだっけ??)と『上島さん』




 彼女はその単語を『どこかで聞いた』気がしたのだが、いったいどこで聞いたのか思い出せれなかったそうだ。そして『ボーッ』としていたのですぐに『思考』が停止し、『雪』が踏み固められてできた『氷の板』に足を載せて『滑りそう』になってギリギリ踏み留まって………視線の先に『おいしそうなもの』を見つけたそうだ。




「………………あれ? なんでこんなところに『かりんとう饅頭』があんの??」と『上島さん』





『かりんとう饅頭』は皆さんが思い浮かべているあの『かりんとう饅頭』である。『かりんとう』っぽい油で揚げた『ザクザク生地』の中に『あんこ』が包まれてい『大人気和風スイーツ』でかくいう『私』も『大好物』なのだが、その『かりんとう饅頭』が『上島さん』の視線の先に『存在』していたのである。



 なので『上島さん』は近づいてその『かりんとう饅頭』を『しげしげ』と眺めまわしてから、


「………………いったい誰が置いていったの? こんなところに置いてたら『カラス』のエサになる…………」



『『『それは大丈夫! 私たち『ひだる神』が守ってるからね!』』』



 妙に『甲高い複数の声』が聞こえてきたので『上島さん』が目を向けると、そこに『かりんとう饅頭』を持ち上げて運んでいる『数人の小人たち』がいたのである。なぜか全員『シェフ』の格好をしていたのだそうだ。



「………………こ、『小人』?? どういうこと?? もしかして『私』は『寝不足と空腹』で『幻覚』みてる??」と『上島さん』



『『『確かに僕たちは『小人』だけどれっきとした『神』だよ!! 『ひだる神』は『空腹と疲労で困ってる人間』の前に現れて『おいしい食べ物』を分け与える『善神』なんだ! さぁ『かりんとう饅頭』と『目玉焼き』を食べて~!』』』と『小人たち』



『小人』たちはそう言って『かりんとう饅頭』を『皿』に載せて地面に置き、さらには目の前で『フライパン』を出して『目玉焼き』を焼き始めた。『上島さん』は戸惑いつつも『よだれ』をだして、



「『かりんとう饅頭』と『目玉焼き』って『組み合わせ』が『謎』すぎるけど、でもどっちも『できたて』だからめっちゃおいしそうじゃん………! じゃあまずは『目玉焼き』の方から………」



 だが『上島さん』は当然ながら『箸』なんて持ってないので、すぐに『手づかみ』で食べようとしたらしい。しかし『目玉焼き』をどれだけ『掴もう』としても、なぜか『つかめなかった』のだそうだ。どれだけ『皿』から持ち上げようとしても『皿』の表面をひっかくだけなのだが、『目玉焼き』を指でなでるとちゃんと『目玉焼き』の感触があるのである。


 なので『上島さん』が苛立って、


「ちょっとナニコレ!? 全然食べれないじゃん!? 接着剤で『皿』にはりつけてんの!? もしかして私のこと馬鹿にしてんのお前らは!?」




 彼女がそういって『小人』の一人を掴んで『手』に力を籠めると『小人たち』が悲鳴を上げて、


『待って!! キュー!!(悲鳴) じゃあ『かりんとう饅頭』食べて!』と『握られてる小人』


『『目玉焼き』が食べれないのなら『かりんとう饅頭』食べて! そっちは持ち上がるから!』と『小人α』


『ごめんなさい! 『かりんとう饅頭』は食べられるから! ごめんなさい!!』と『小人β』



 そういって『小人たち』が『かりんとう饅頭』をまた持ち上げて『上島さん』に『差し出した』そうだ。なので彼女も『小人』を解放してから『かりんとう饅頭』を手に持って、



「………『私』も『空腹』でイライラしてた。『意地悪』して悪かったわね………(バツが悪そう)」と『上島さん』


『『『大丈夫! 僕たち『ひだる神』はこういうの慣れてるから! それに『目玉焼き』はごめんね! 次はちゃんと食べられるようにするから!』』』と『小人たち』


「………………あんたたち結構『可愛い』ね………じゃあお言葉に甘えていただきま~す…………」




 と、その時だった。




 バシッ!!




 そこでいきなり『上島さん』が後ろか『かりんとう饅頭』を『はたき落とされた』のである。『上島さん』は地面に『べちゃあ』と衝突してつぶれた『かりんとう饅頭』を見てから振り向いて、



「………………ちょ! 誰だぁ!? 私の『かりんとう饅頭』をなんてことしてくれんのおおおお!! ………………ってお前かよ!!」と『上島さん』



 どうやら『饅頭』を台無しにしたのは『友人』の『塩尻さん』だったそうである。彼女は『信じられない』と言う顔で、



「………………はぁ?? 『愛』こそ何言ってんのさ! なんで『そんなもの』食おうとしてんだよ!! 『病気』になるぞ馬鹿か!!」



 そういって『塩尻さん』が『かりんとう饅頭』を指さす。『上島さん』は『何言ってんの?』と思いつつつられて『かりんとう饅頭』をもう一度見ると………………それはどこからどう見ても『犬のアレ』だったのである。彼女は『絶句』した。



「………………え゛ な、なんで?? た、確かに『かりんとう饅頭』だったのに………………?????」と『上島さん』


「なに『寝ぼけて』んの?? ほらいつまでも『しゃがんで』ないでさっさと学校いくよ! このままだとマジで『遅刻』するぞ!!」と『塩尻さん』




 そういうなり『塩尻さん』が『上島さん』の腕をつかんで強引に歩かせたわけである。ちなみに『上島さん』が『犬のアレ』の周囲を目で探したが『小人』たちはどこにも見当たらず、そのかわり『目玉焼き』があった場所に『鳥のアレ』が落ちていたという。





 ………………この話を聞いて『ユズハさん』がいった。


「『江戸時代』の『妖怪譚』の中でよく『狸や狐』が腹ペコの人間を騙して『汚物』を食べさせるって話はあるけど、『ひだる神』がそういうことする話って聞かないね~。ていうか『ひだる神』って『小人』じゃないしね。なんだったんだろうね?」と『ユズハさん』


「いや知らないって。『私』はただ自分が見たままの話をしただけだから」と『上島さん』


「………………また『ひだる神』の話ですか。最近多いですねその名前………さっきも別の生徒から同じ名前を聞きましたよ」と『私』



「え、マジで? その話を聞かせてよ」と『上島さん』


「いいよ~。じゃあ『愛』の話もあわせて『ひだる神編』として『冊子』に載せるね~」と『ユズハさん』



『ひだる神』に関する『奇妙な話』はまだあるのでそれは次の機会へ。

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