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其の七…『黒百合丘学園にまつわる三話』

 私こと『やっくん』と恋人である『柚葉さん』の二人で始めた『昼休み怪談部』は『怪談』を集めるという『活動の性質上』、どうしても『部員自身』も『奇妙で不気味な体験』をする機会が増えてくる(気がする)。


 だが私たちは『幸運』なことに『多分『本物』と思われる霊能者』と知り合うことができた。その人の名前は『氷室麗華』、これはそんな彼女が『最初に部室を尋ねてきた時』に話してくれた話である。



「…………貴方たち、こんな『愚かなこと』をすぐにやめなさい。『部活動』は『解散』して今後一切『怪事』とかかわってはダメよ。『興味本位』で『熊の巣』を覗き込むのは『愚か者』のすることだわ」と『氷室麗華』



『氷室さん』は『いきなり部室の扉を開ける』と上のように発言し、私達がなにか言う前に『椅子』に座りこんで足を組んだ。この時点で『威嚇』されていると思った私は黙り込んでしまい、一方『割と強気』な性格の『ユズハさん』は『愛想のよい笑顔』で『お茶』を提供してから、


「もしかして『霊能者』の方ですか? 貴女のよう人こそ『ウチ』は『大歓迎』なんです~♪ それでもしよかったら『いったい何が危ないのか』を教えてくださいませんか? 後貴女は名前は? うちの生徒じゃないですよね?」



 確かにこの時『氷室さん』は『他校の制服』を着ていた。だがこの時彼女はその質問には答えてくれず、また『二回目ここを訪ねてきた時』は『黒百合丘学園の制服』を着ていた。なので『なぜ最初だけ他校の制服を着ていた』のかは謎である。正直彼女の『性格』を考えると『中学時代の制服を間違って着て来ただけ』の可能性もなくはないが……そうではなく『高い確率』で『他校の生徒』だからではないかと思われた。だが『氷室さん』は『私は『怪異』との『因果』をできる限り『限定』したいの』とだけ述べて何も教えてくれない。



「私はその『怪談蒐集』をやめなさいと言っているのだけれど………(そういいながらお茶を一口)」と氷室さん。


「あ、今飲みましたね? 『うち』は『怪談持ち込み希望者』にそうやって『お茶』をだしてるんですよね。つまり貴女もそれを呑んだということは『怪談を話さないといけない』ってことですよ! さぁ話してくださいね~! じゃないと『お茶代』に『怖い話』を要求しますよ~!」と柚葉さん。


(結局どっちにしても『怪談』なんですね)と私。

「…………仕方ないわね」と氷室さん。

「やった~♪」と柚葉さん。

(あ、話すんだ。結構素直な人だな………)と私。



 ここで『氷室さん』が話し始めたのは『怪談』というか、厳密には『忠告(教訓)』だった。


「…………そうね。じゃあ『堰守せきもり』としてこの『黒百合丘学園』で起こる『怪事』についての『予備知識』を教えましょうか。今後『怪事』に遭遇した時に何かの『助け』になるかもしれないから………」と氷室さん。


 そこで素早く『柚葉さん』が『目をキラキラ』させて挙手する。


「はいはい! 『本物の霊能者:氷室麗華』さん! 質問良いですか!? その『カイジ』って誰ですか!? まさか『福本伸行先生』のお家のあの!?」


「誰かしら??(わからない)『怪事』は『怪奇現象』や『怪異』のことよ。『業界用語』かもしれないわね」と氷室さん。


「あ、『NHK』の『業界怪談』私も好きですよ~♪ ということはその『せきもり?』ってのが『麗華さん』の『業界』なんですか?」と柚葉さん。


「『堰を守る者達』で『堰守』というの。『私の一族』は『初代加賀藩主前田利家公』によって『山から下りてくる魔物』たちが『人里』に入ってこないように『せき止める』役目を与えられて来たわ………ああ、『あなた』のことはいってないわよ? 気にしないで頂戴」と氷室さん。



 彼女が突然『私』を見てから言ってきたので正直『ギョッ』としてしまった。そして後で確認したが氷室さんは『あの話』を直接聞いたわけでもなければ『噂』で聞いたわけでもなかったそうだ。そりゃあそうだろう、だって『他校の生徒』なんだから………、



 ………今の話は『私自身に関する怪談』の話だ。そりゃあ『怪奇オタク』になるくらいなんだから『奇妙な体験』の一つや二つはしてるだろうさ。まあそんなこといいつつ『あれ』は厳密には『私の両親が体験した話』なわけだが………、


 おっと。まあ、その話はまた今度にしていただきたい(悪しからず)。だが『柚葉さん』も『氷室さん』の言葉に『ゾクゾク』してきたらしく、



「…………なんで何も言ってないのに『やっくんのあの話』を………? や、やっぱり『麗華さん』って『本物』なんですね………! あ、氷室さんの話の『腰』を折っちゃってごめんなさい! どうぞ『怪談』を話してください! ほら『やっくん』も背筋伸ばして! 麗華さんの話を真面目に聞かないと!」と柚葉さん。


「は、はい………(そういえば『堰守』の説明途中じゃないか??)」と私。


「それじゃあ何から話そうかしら………そうね。じゃあこれはどうかしら? ………」と氷室さん。




『氷室麗華さん』が『黒百合丘学園の怪談………もとい教訓』を『三つ』教えてくれた。


 まず『一つ目』。この学校の『生徒』だけでなく『教師』にも起こる可能性があるのだそうだが、その日は『普通に家に帰宅して自分の布団で寝た』はずなのに『夜』ふと目が覚めると『真夜中の学校の教室の自分の机の上』に座った状態で目覚めることがあるらしい。これが『教師』の場合は『職員室の自分の机』や『特別教室にある机の上』になるのだそうだ。



「…………でもそうなっても決して『パニック』になって『部屋の外に走りだしたり』してはいけないわ。『対処方法』は『そのまま自分の机でもう一回寝てしまうこと』よ。そうすれば『朝』になれば『自分の部屋』で目覚めることができるから」と氷室さん。


「「へ~」」と私&柚葉さん。



 ………、



「…………え? それだけですか?」と柚葉さん。

「それだけよ。では『二つ目』は………」と氷室さん。


「あ、ちょ、ちょっと待って、『もしパニックになって部屋から出てしまったら』どうなるんですか??」と柚葉さん。


「聞く意味はないわ。『自分のベッドで眠って同じベッドで目覚めた』のならそれはただの『悪夢』でしょう?」と氷室さん。


「いやいやそれは『成功』した時だけで………(汗)」と柚葉さん。

「『悪夢』は果たして『怪奇現象』なのか、うーん『哲学』ですねぇ………(本当か?)」と私。



 そして『二つ目』だが、この『黒百合丘学園』の『廊下』には『蚊帳吊り狸』ならぬ『カーテン吊り狸』が出現するのだそうだ。



「た、狸??????」と私。

「つ、つまり『化け狸』ってことですか?? いくら『金沢』が『しょぼい街』だからって──(『ネイティブカナザワン』の謙遜)──『狸』が町中を歩いてたりはしないですよ~!(文句)」と柚葉さん。


「それは『誤解』だわ。この『狸』と言うのは『動物の狸』のことではなく『狸と呼ばれている何か』よ。『昔』は『怪事(怪奇現象)』が起こるたびにそれを『狐や狸の仕業』としていたけど、『多くの怪談』を読み解いていくと『怪異の正体が明確に狐狸だった事例』はかなり少ないのよ──(統計を取っているわけではないので注意)──ほとんどの場合『昔の人たち』は『怪異の正体がわからない』から便宜的に『狐や狸』と呼んでいるだけ。『古代中国』だと『狐が人を化かす存在だ』とされていたから『日本』でも『狐』が『怪異』の正体である地域が多いけど、『四国』は『化け狸の総本山』だから大抵の『怪事』は『狸の仕業』とされていた………つまり『色即是空』は『怪即是空』でもあるのよ。そして二人は『蚊帳つり狸』をしってるかしら?」と麗華さん。


「かいそくぜくう???」と柚葉さん。


「…………あ、その『妖怪』知ってます。それ『漫画』でよんだことあります………」と私。




『蚊帳吊り狸』は『阿波国(徳島県)』に伝わる『妖怪』で、夜に『山道』を歩いていると『道』を塞ぐように吊られた『蚊帳』に遭遇することがある。


 この『蚊帳』が当然邪魔なので『捲って』前に進もうとするのだが、まくるとその先にも『蚊帳』がある。そしてそれをまくるとまた『蚊帳』がある。そこであえて『後ろ』にふり返って元来た道を戻ろうとしても『蚊帳』の向こう側に『蚊帳』、その向こう側に『蚊帳』………という感じでどこまで行っても『蚊帳』の中で出ることができなくなるのである。



「…………けれどこの『蚊帳』も『脱出』する方法がありまして、それは『気を強く持った状態』で『36回』蚊帳をめくると『外』に出られるそうです………その話『百物語(杉浦日向子著 新潮文庫)』に載ってました………」と私。



 そういいながら私は『鞄』の中から『今は亡き杉浦日向子先生の『百物語』』を取り出して見せた。『柚葉さん』が早速手に取ってパラパラ捲り、


「…………あ、これ『漫画』なんだ(わくわく)………へ~! なんかすごい面白そうじゃん! 私『水木しげる』以外の『妖怪漫画』読んだことないからすっごく新鮮! これ貸してくれる? 家でよんでみた~い♪」と柚葉さん。


「あ、それは『柚葉さん』に紹介しようと思って持ってきてたんです………(照れ)………実は僕が『激推し』してる漫画でして……でも『杉浦日向子先生』はそれ以外に『怪談』を書いてないのが本当に惜しまれますが………(大変残念)…………あ、それの『二十二話:道を塞ぐもの』ですよ。そこに『蚊帳吊り狸』がでてきますよ」と私。


「………漫画なのね。興味深いは………」と氷室さん。



 しばらく『柚葉さん』が『漫画』を読み始め、『氷室さん』もそれを横からのぞき込んでから二人で『この話『江戸古典怪談』で元の伝承よんだことありますよ、ちゃんと調べて書いてあるんですね~』とか『私が知ってる『伝承』だと『丹田に力を込めて36回捲る』と書かれてたわね………』とか話し始めていた。それを見て私が、


「…………あの~、それで『カーテン吊り狸』ってのは??」



 氷室さんはそこで『あ』と言ってから咳払いして、


「…………おおよそ『蚊帳吊り狸』と似た『怪異』よ。『放課後』になると『廊下』を塞ぐように『カーテン』がつるされてることがあるの。もちろんいくら捲っても捲っても『カーテン』から出ることができなくて、そのまま『朝』まで彷徨うことになるわね。『対処方法』も同じで、『気を強く持つ』か『丹田(下っ腹)に力を籠める』かして一気に『36回』捲る………それだけよ」と氷室さん。


「それは対処法知らなくても最悪『朝まで彷徨う』で済むんですね………」と私。


「『二度目』が無い保証はないのだけれどね」と氷室さん。




 最後に『三つ目』だがこれも『放課後』の話だ。『下校時刻』の『18時』を越えると『教師』たちがちゃんと『戸締り』したはずなのに『体育館』の『外』に通じる『扉』が一つ開けっ放しになっている。その『扉』から中に入ると『体育館の屋根の上』に登ることができるらしい。つまり通常『屋根』は体育館の外の壁にある『梯子』を使わないと入れないのだが、『18時以降に空いている扉』から入ると『屋根の上』に通じる『通路』から上ることができるのだそうだ。


 

「………もちろん『体育館の屋根の上』に登ってはいけないわ、とても危ないもの(極めて常識的)。だけどこの『怪談』の『厄介』なところは、頻繁に『肝試し』に訪れる生徒を『惹きつける』ことと、彼らを狙う『素行不良の生徒』たちがいることね………」と氷室さん。



 どうやらこの『怪談』のせいで『多くの生徒たち』が『肝試し』のために『学園』に忍び込んでいることと、その『肝試し生徒』を『狙って』いるという『ヤンキー』たちがいるのだそうだ。その『ヤンキー』たちの『兄貴分』みたいな人を私は知っているのだが、『ヤンキー』たちは『肝試し狩り』と称して『肝試し生徒』たちを『襲う』そうである。というか彼らに『追い込み猟』を行うのだそうだ。



「…………つまり『ヤンキー』たちが『体育館』に『肝試し』に来た生徒たちを追いかけまわして『体育館の屋根の上』に逃げるように『誘導』しているってこと??」と柚葉さん。


「ええ、『素行不良生徒ヤンキー』たちは『遊び』と称してそういうことをしてるそうよ。おかげで『体育館の屋根の上』に追い込まれて『足を滑らせる生徒』が何人も出てるし、最近なんかは『素行不良生徒が集まってくると『体育館の屋根の上』から『お菓子とジュース』が落ちてくるようになった』とか『偽物の素行不良生徒ヤンキーに追い掛け回された』とかの『新たな怪談』まで登場してるらしいわ。この話の忠告は『決して興味を抱いて『肝試し』しようとしない』ということよ、この『怪異』は私が今『対処中』だから………」と氷室さん。



「「『追い込み猟』って何………? やっぱり一番怖いのは『人間』………??」」と私&柚葉さん。



『怪異』も『人間』も本当に『自由』だと思う(白目)。そしてこの『体育館の屋根の上の怪談』は『今現在』でも『氷室麗華さん』が『対処途中』だとか。『怪異は何もかもが『人間の尺度』では測れない。基本的にどんな『魔物』であっても『一生を費やす覚悟』で臨むべきよ』というのが氷室さんの言葉である(いまいちわかったようなわからないような、である)。


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