其の六十九……『石川今論、北陸奇談『その一:『雪だるまの精』』』
唐突だが『北陸民あるある』の話をしたい。数ある『あるある』の中でも『雪』の時期になると必ず身の回りで一回は話題に上る話がある。
それはずばり『『新潟』は果たして北陸なのだろうか?』である。
「…………『全国ニュース』で『北陸で1メートルを超える積雪』って出ても『どうせ新潟の話しでしょ?』って思うのよね正直なところさ。そんで大抵その予想は外れてないって言うね」と『ユズハさん』
「決して『新潟県民』を『除け者』にしたいわけじゃないんだけど、『新潟市』が遠すぎるんだよね………『親知らず』を超えるハードルが高すぎる。そもそも『富山市から東側』に行くことだってほとんどないのに……いや、『黒部ダム』とか『有名なラーメン屋』とかあるからたまに行くけど」と『私』
「でも『上越地方』ならまだ『北陸』って呼べるんじゃない? まあ『あたし』は『新潟』より『岐阜の北部』の方が『北陸っぽい』と思うけどね。『飛騨高山』あたりは気候がこっちと同じだし」と『ナツメちゃん』
「『新潟』は『北信越』と呼んだ方がしっくりくるな俺は。『長野』と同じグループだろう」と『姫川君』
………と、ちょっと『炎上』するかもしれないが『北陸三県民』の『本音』はこんなところだと思う(多分)。そしてなぜ『今回』こんな話をしたかというと、『新潟の怪談』が『テーマ』だからである。
「…………『大田原先生』が『怪談持ち込み』に来るなんて珍しいですね………しかも『新潟で体験した怪談』ですか??」と『ユズハさん』
そう、『今回の語り部』は『昼休み怪談部』の『最初の顧問』を務めた『大田原先生』である。普段は基本的に『部室』には顔を出さず、『ユズハさん』や『私』がなにか必要なことを聞きに『職員室』にいったときだけかかわりがある『先生』なのだが、どうやら『新潟の大学に通っている息子さん』から聞いた『不思議な話』を『私たち』に話したくて仕方なくて訪ねてきたらしい。
「ああ、『先生』の『長男』は今『新潟の大学』に通ってて『一人暮らし』してるんだがな。その『息子』がこの前『帰省』して『酒を飲んでいた時』に『ボソッと』話してくれたことなんだ………これは『去年の冬』の『新潟市』で『豪雪』が降った夜のことだったそうだ…………」と『大田原先生』
『大田原先生』の『息子さん』の名前を仮に『晴馬(本名は違うらしい)』と呼ぶとしよう。『晴馬さん』が『大学一年生』だった『冬』は『記録的な豪雪』になったせいで『新潟市内』でも『1メートル』を超える積雪になってしまったそうだ。
『晴馬さん』も『石川県出身』で『同じ雪国民』といえども、こっちで『1メートル』を超える『雪』なんてそれこそ『スキー場』にでも行かなければ基本的に見ないレベルのものだ。なので朝起きて『住んでるマンション』が文字通り『雪に埋まってる様』をみて『唖然』としてしまったらしい。
「な、なんだこれ…………『新潟』やべぇな…………」と『晴馬さん』
「ボーとしてんな『晴馬』ぁ! 『道』つくっらねーと外出られねぇぞ手伝えぇ!!」と『隣の部屋の住人(先輩男性)』
「ほら皆急いで! このままだと『講義』も遅刻しちゃうよ!!」と『大家さん(20代女性)』
彼が棲んでいた『マンション』は『通ってる大学に近い』こともあって『知り合い』が何人かいたらしい。さらには『大家さん』が音頭を取って『入居者全員』で『雪掻き』に駆り出されたとか。この『マンション』では『豪雪』になるとはこういうことをする『伝統』があったらしい(新潟全体の伝統ではないそうだ)。
そして『その日』の『晴馬さん』は『5コマの講義』があったのでほとんど『一日』の間『大学』にいて、『全ての講義』が終わると足早に『バイト先』に向かわなければならなかったそうだ。『バイト先』は『ファミレス』で、距離的に『自転車』でいかないと間に合わないのだが、さすがに無理なので『ちょっと遅刻します』と連絡を入れてから頑張って急いだそうだ。
「はぁ、はぁ、もう働く前から『へとへと』なんですけど…………」と『晴馬さん』
「忙しいのはこれからだぞ! 早く着替えて! すでにホールがパンクしてるんだから!!」と『店長』
………と、『その日』は『多忙』だがあっという間に『夜』になったのだった。『バイト』を終えて一人『トボトボ』家路についていると、『住宅街』のある家の『玄関』前に『雪ダルマ』が置かれていたらしい。
「………………お、でっけぇ『雪ダルマ』だなぁ………(白い息)………ってこれ『雪』を適当に積み上げただけなんじゃね??」と『晴馬さん』
その『雪ダルマ』は『カラーボール』で作った『目』と『リボン』の『口』、そして『人参の鼻』があったことから『雪ダルマ』らしいことはわかったのだが、『体』は『雪玉』ではなく『周囲の雪をただ積み上げて山にしただけの形』だったそうだ。かなり『やる気のない雪ダルマ(?)』で、『顔』がなければ『屋根から落ちてきた雪』にしか見えなかったらしい。
そして、その『リボンの口』が突然『動きだした』のだ。
『………『こんばんわ』、今日は『雪ダルマ』にとってはとても良い『夜』じゃよ。君はどうなんだい?』
「!? うわぁ!? 雪ダルマがしゃべったぁああ!!??」と『晴馬さん』
彼は『驚き』のあまり盛大にその場に『尻餅』をついたらしい。だが『雪ダルマ』は『落ち着いてるがしわがれた男性の声』で、
『おっと、怖がらないで! 僕は『雪ダルマの妖精』じゃよ! 決して『お化け』じゃない!』
「いや『妖精』だって十分『怖い』っしょ!? え、誰かの『悪戯』なんすか!? 後ろに誰かいるとか!? それとも『スピーカー』がどこかにある!?」と『晴馬さん』
『雪ダルマ(?)』の周りを『晴馬さん』が入念に調べたが特に『スピーカー』の類も無ければ、周囲に『人間』もいなかったらしい。そして『雪ダルマの声』が確かに『雪ダルマの内部』から響いていることも確認して、
「………………ほ、本当に『妖精』なのか?? でも、なんでこんなところに『妖精』がいるんだ??」と『晴馬さん』
『別に『妖精』がどこにいたってかまわんじゃろ? それより『おしゃべり』をしてくれんか? 暇で暇でしょうがないんじゃよ』と『雪ダルマ』
むしろ『スピーカーや人影』が見つかった方がどれだけ嬉しかったことか………すでに『晴馬さん』はこの時点で腰が引けていた。なので、
「い、いやそんな暇ないから! それじゃあな!(脱兎)」と『晴馬さん』
『あ!? おいちょっと待てって! 逃げるなよ! 逃げると『魔法』をかけるぞ~!!』
『晴馬さん』は速足で逃げようとしたのだが『雪ダルマ』の『魔法』の単語を聞くと『硬直』してしまった。そのまま『泣きそうな顔』で振り返って、
「………………やっぱり『お化け』じゃねーか。俺に『呪い』でもかけるつもりかよ………(涙声)」
『冗談じゃよ冗談(笑い声)。お前さんが『暇つぶし』に少しでも付き合ってくれれば別にそれで構わんさ。それに僕は『お化け』じゃなくて『付喪神』だぞ、だから『安心』するといい』と『雪ダルマ』
「いや『付喪神』って聞いて安心できる要素ある!? 結局『お化け』なことには変わらんよね!?」
『じゃが『無念のうちに死んで見境なく生者を恨んでいる悪霊』とかじゃないからそんなに怖くない………とかないか?』
「ないだろ普通に(ツッコミ)。むしろ『付喪神』は『もともと人間じゃない』から『人間の常識通じなさそう』でより怖いまであるわ!」
『う~ん、そうなのか? 『付喪神』は結構『コミカル』なイメージがあると思っていたのじゃが………ちょっとその反応は予想してなかったの~……(困惑)』
「………………まあでもあんたはあんまり『やばい奴』じゃなさそうだけどな(小声)」
『え………(ドキッ)』
「その反応やめろ気持ち悪い(怒)」
『僕は『付喪神』だから人の気持ちが分からんのじゃよ~(笑)』
そこからは『寒い野外』で『晴馬さん』は『雪ダルマの妖精』と会話したらしい。といっても『会話の内容』は特筆すべきほどでもなかったそうだ。基本的に『昔話』だったかららしい。
『『晴馬』とやら、お前さんは『夜釜焚き』という『妖怪』を知っているか?』と『雪ダルマ』
「『ヨカマタキ』?? 『ヨーカマターキー』で『七面鳥』のことか??」と『晴馬さん』
『お前全然『ギャグセンス』ないの~! 『妖怪』って最初に言ってるのに『七面鳥』ってお前は単純に馬鹿か? 『文章が冗長』で『テンポ』も悪いしでもうちょっと捻ってこんかい抜け作め!』
「なんで『雪ダルマ』にそこまで言われねーとなんねーんだよ!!(逆切れ) 俺の『ギャグ』を解説するな! 恥ずかしくて変な汗出てきたわ!」
『ガハハハ! すまんな! 『付喪神』じゃから『人の気持ち』がわからんのじゃ! それに体が『熱く』なってきてちょうどいいだろう!? まあ僕は『雪ダルマ』だから溶けちまうがなぁ!!』
………と、そんな感じで『くだらない話』を『二時間』ほどしていたとか。そしてさすがに『深夜』になって眠くなってきたので『晴馬さん』は『お暇』を告げたという。
「………………なぁ『妖精さん』、さすがにそろそろ『解放』してくれよ。俺今日は疲れてすげー眠いんだよ………(欠伸)…………また『明日』も来るからさ」と『晴馬さん』
すると意外とあっさり『雪ダルマ』は解放してくれたらしい。
『………そろそろ遅いしそうだな。帰るといい。僕も少し寝るとするか…………(欠伸)』
「『雪ダルマ』が寝るのかよ? へへへへ、じゃあな~! 明日晴れてても溶けるなよ~!」と『晴馬さん』
『それは『お天道様』に言え(へっ)』
その後『晴馬さん』は帰って寝て、次の日は『大学の講義』が『昼過ぎに1コマ』しかなかったので『家』でゴロゴロしていたらしい。そして『夕方』に『バイト』があったのでそこに出て、『帰り道』にまた『雪ダルマ』のいる『住宅街』を通ったらしい。
『………お、まさかまた来るとはなぁ。嬉しいぞ『晴馬』。それに免じてお前に『遠隔』で『魔法』をかけるのは勘弁してやろう』と『雪ダルマ』
「だから『本物の妖精』がそれをいうと笑えねーからやめろって(笑)。それで? 昨日言ってた『オカマダケ』ってのはどんな『妖怪』なんだ?」と『晴馬さん』
『『オカマ』で笑いを取ろうとするのは『センス』が古すぎるぞ小僧。『付喪神』に言われたらおしまいだな!』
「うるせー! 『ヨガマタキ』だろわかってんだよ! それは一体どんな奴だって聞いてんだよ!」
『『夜』に『釜』………あの『お米』とかを炊く『釜』のことだぞ? それを『火』をおこして『焚いてる』から『夜釜焚き』という。『橘崑崙 北越奇談』という『江戸時代』に書かれた『越後の国の博物誌』で語られている『妖怪』でな………おっと! 車が来たぞ! 脇に寄れ!』
「おっと! ………ぶわ!?(悲鳴) くそ! ジーパンに『泥水』かけられたんだけど! 最悪だ! つめてぇ!」
『ははははは! これはもう帰った方がいいかもしれんな! 風邪をひくぞ!』
「えぇ!? マジかよ最悪…………あ、でもマジで帰った方がいいわ! なんか寒くなってきた!」
そんな『会話』が『数日』続いたそうだが、『豪雪』自体はすぐに『小康状態』になったことで徐々に『道路』の『雪』が溶け始めていたらしい。そして『晴馬さん』はいつも通り『雪ダルマ』と会話してから『帰宅』して『ぐっすり』眠って、『朝』起きて『SNS』を確認すると『新潟のトレンド』が上がっていたらしい。
「………………え? 『屋根から落ちた雪の中に老人の死体』………??」と『晴馬さん』
どうやら『数日前の豪雪』の時に『80代の男性』が『屋根から落ちてきた雪』に埋もれてそのまま『死んでいた』らしい。だが『周辺住民』は誰も気づかず、『雪』が解け始めて来て『付近の主婦』が偶然『雪の山から人の手が飛び出している』ことに気づいて初めて『発見』されたとか………『住宅街』のど真ん中で起こった『ショッキングな事故』だったので『SNS』でも話題になっていたのだ。
「………『老人が埋まっていた雪の山には、恐らく近所の子供が知らずに『顔』を描いたりした跡もあったらしい。また『周辺住民』は『雪の山』の近くで『夜中』の間ずっと『棒立ち』している『不審な若い男』を目撃しており、『警察』は『事件』と『事故』の両面で捜査している…………」
さすがにこれで『晴馬さん』も気づいたという。
「………………この『不審な男』って『俺』じゃん!!!!」
そこまで語ってから『大田原先生』が締めくくった。
「………………結局『晴馬』は『自首』………ではないが自分から『出頭』して『事情』を説明したらしい。といっても『雪ダルマと会話してただけです』なんてよく『警察』に話しに行こうと思ったなと『父さん』は思ったわけだが…………(苦笑)」と『大田原先生』
「先生は『信じない』かもしれませんけど、『警察』にもどうやら『怪奇現象』を捜査する『特別チーム』がいるって話ですよ(真剣)。たぶん『新潟県警』にもあるんじゃないんですか?」と『ユズハさん』
「ははは、そういう『怪談』もあるんだな? 先生はそういうのは素直に信じる質じゃないが、今回は素直に聞いておこう(大人の対応)」
「その後は何か変なこととかあったんですか?」と『私』
「『変なこと』か? いや別にないが………………あ、そういえば『息子』がこんなこと言ってたな…………」と『大田原先生』
後日、『晴馬さん』は『雪』が完全に溶けた後に『雪ダルマ』があった場所に昼間に出向いたらしい。そこには『花』が手向けられていて、『晴馬さん』がつぶやいたそうだ。
「………………『付喪神』って言ってたけど『嘘』だったんだな。なんでそんなどうでもいい『嘘』ついたんだろうなぁ………………」
『………………自分に話しかけてくるのが『死体』だったら誰だって怖いじゃろ? 『付喪神』ならそうはならんじゃろうが…………』
「………むしろ『同じ人間だ』ってわかって嬉しかったくらいだよ爺さん。つーか普通は『すぐに埋葬してほしい』とかにならね!? なんで『お喋り』することの方を重視してんだよ変な『幽霊』だな!!」
その後『晴馬さん(仮名)』は定期的に『雪ダルマがあった場所』に出向いて『お参り』しているらしい。
「………………ちょっと『いい話』………なのかな??」と『ユズハさん』
「『幽霊』によっては『すぐに埋葬されること』よりも『誰がおしゃべりすること』の方を『重視』する人もいるってことですか………まあでも、『狭い部屋』に閉じ込められるよりかはそっちの方がいい………………んでしょうかね??」と『私』
「いや、普通に『成仏』の方が優先されると思うんだがな………まあ『死後の世界の事情』は先生は知らん! 話は以上だ。解釈は好きにするがいいさ」と『大田原先生』




