其の十三…『超音速ホラー・ソニックブーム怪談の話『一つ目』』
『私』こと『やっくん』は『サカナさん』という『霊能者』と思われる女子生徒から紹介された本を最近少しづつ読んでいる。『内容』は結構難しくて『一度』読んだだけでは理解できた気がとてもしないが、その中に『面白いと思った記述』があった。
オーストリア人『エルンスト・マッハ』は『超音速気流』の研究で有名な『物理学者』で、『物体が音速を越えて運動すると『ソニックブーム(衝撃波)』が発生することを『実験』ではじめて証明した人でもある。現在でも『音速を越えた速度』を『マッハ1』とか『マッハ20』とか表記するのは彼に由来しているそうである(この部分で私は興味をひかれた)。
だが彼は『音速を越えるソニックブームが発生する』ことはわかっても、『なぜソニックブームが発生するのか』を説明しなかった。いや、正確には『出来なかった』のだ。彼の時代の技術や知識では『説明や実証実験は絶対に不可能』だったらしい。
だが『後の時代』に『ソニックブームが発生する理由』は一応解明されている。『高速の物体によって空気が押しのけられて『圧縮』され、その『圧縮』が『限界』に達すると『衝撃波』になるのだそうだ(果たしてこの理解で合っているのか不安だが)。
しかし『マッハ』が生きていた時代ではそれが分かるはずもなかった。なので『古代ギリシャの哲学者ソクラテス』みたいに『じゃあなんで限界があるの?』とか『限界を超えると衝撃波が発生するのはなぜ?』と他の『物理学者』から追及されたり『物理学者同士』で議論もしていたらしいが『万民』が納得できる『答え』は出てこなかったらしい。
いや『実際』のところは『なぜ限界があるの?』と『現代の物理学者』が聞かれても『そういうものだから』としか言いようがないそうなのだが。そういう意味では実は『今でもわかっていない』のであるのだそうだ。
そのためか『物理学者マッハ』は『哲学者』としても活躍し、『物理学は『観測できた量』だけを扱うべきで、『観測できない量』を扱うことに意味はない』と主張していたらしい。
これは『難しい言い方』なのでもっと『簡単』に言い換えると『物理学者は『どれくらいの(相対)速度で『ソニックブーム』が発生するか』とか『『ソニックブーム』が発生するとどんなことが起こるか』などの『計算や実験でわかる事柄』だけを研究すべきで、『なぜソニックブームが発生するか』は『『そういうものだから』としかいえないので研究する意味がない(研究すべきではない)』ということだったらしい。
これはどうやら『森羅万象全ての現象は説明可能』という『ニュートン力学(古典物理学)』の『哲学』を批判するものだったらしい。恐らく『一般人』には『それってただの思考放棄だろ!』と思われるかもしれないが、同じころ『熱力学』の分野でも『『エントロピー』が起こる理由がわからないから考えても意味がない』という『共通見解』が研究者の間で共有されつつあったらしい。
『マッハ』は『流体力学』の権威だったが『熱力学』にも造詣が深く、彼が『理想の物理学』と考えていたのは『熱力学の諸法則』だったそうだ。『なぜエントロピーが起こるのか』が分からないが『エントロピーが起こることで発生する影響を計算する』ことはできるからそのことだけを考える、そういう姿勢を彼は理想視していたらしい(あまり共感できないが)。
そしてこの『マッハ哲学』に大きく影響を受けて『大成功』を収めたのが『アインシュタイン』だったそうである。だがその『マッハ』は『アインシュタインの相対論』が発表されると『猛批判』したらしいが(笑)。
その理由は『実際』はちょっと『複雑』かつ『脱線』も激しいので割愛するが、実は『マッハ』は『原子論否定論者』で、『全ての物質が原子と言う小さい粒で出来ているという説』を『あり得ない』と拒否する一方で『エーテル』という物質が実在すると信じていたらしい。だが『アインシュタイン』は『マッハ哲学』を原点としつつも『原子論』を受け入れ『エーテル』を却下して『光電効果』の原理を解明し『ノーベル賞』をとったので『マッハ』とその弟子たちから『猛非難』を受けたそうだ………『割愛』するとか言いながら説明を始めてしまって申し訳ない(汗)。
………と言う風に、このような『とりとめもない話』を聞いて『昼休み怪談部の部長柚葉さん』はちょっと『神妙な顔』になって、
「…………なるほどね~。確かに『科学』って『哲学』でもあるんだねぇ(わかったようなわからないような)。ていうかもしかして『サカナちゃん』がよく言ってる『観測可能量』ってそこから来てんのかな?」
「『怪異の正体を追求しても意味がない』………もしかして『氷室さん』と『サカナさん』は『同じこと』を『違う言葉』でいってるだけ………??」と私。
『怪異の正体を追求することは無意味』と聞いて『わくわく』する人は『探偵』に向いていると思うし、その『わくわく』のせいで『怪奇現象』に不必要にかかわって『不幸』にならないように気を付けてほしい(笑)。
さて、それでは今回も『私』こと『やっくん』と『私の恋人』である『ユズハさん』の二人で『集めた怪談』の中から『テーマ』を決めて抜き出してみることにした。今回の『テーマ』は『超音速・ソニックブーム』である。
「…………『超音速・ソニックブーム』って何ですか??」と私。
「別に『音速』でなくてもいいけど、とにかく『超スピード系怪談』! 『超高速の怪奇現象』に『ソニックブーム的な怪異』が登場する『怪談』が今回の『テーマ』ってわけ。ほらこの前に『佳ちゃん』や『ノナ』が話してくれたやつがあったでしょ? 似たような『怪談』が『四つ』あったから『テーマ』でジャンル分けしてみたんだ~♪」と柚葉さん。
「少なくとも『里中さん』の話では『ソニックブーム』は出てきませんけどね………(苦笑)」と私。
ということで『超音速ホラー・ソニックブーム怪談』の『第一話目』から始めたい。この話は『昼休み怪談部部長:柚葉さん』の友達である『里中佳さん』と言う女子が自分で体験した話らしい。
「あたし実は『ダイエット』のために『毎朝ランニング』するのが『日課』なんだよね。朝早く起きて『浅野川』にそって走ってるんだけど、ある朝いつものルートでランニングしてたら、いつのまにか『数メートル前方』を『髪の長い白いワンピースを着た女』が走ってることに気づいたんだよね………」と里中さん。
この『里中さん』は『ダイエットガチ勢』というか、自分の『スタイル維持』に並々ならぬ『情熱』を持っているので『厳密なカロリー計算』でもって自分の食事はすべて自分で作り、『早朝ランニング』を習慣にしているそうだ(素直に尊敬する)。そして『家』から近いので『金沢』の中心部を流れる『浅野川』という『二級河川』沿いの道を『ランニングコース』にしているそうだが、ある朝いつも通りの道を走っていると『どこかで見たことあるような後ろ姿の女』が前方を走っていることに気づいたという。
(…………なんであんな格好でランニングしてんだろ?)と里中さん。
季節的にはまだ『朝晩』は寒い位なので彼女は気になったそうだが、そのまま『ランニングコース』に従って右に曲がらなければならないのでスルーする。だが右の道に入ると『また同じ白いワンピースの女』がさっきと同じように『前方数メートル先』を走っている姿に出くわしたのである。
「?? あ、あれれ? さっきの道にいなかった?? それとも他人の空似??」と里中さん。
そこで今度は『左の道』に曲がってみたそうだ。するとやっぱり『同じ長い髪の女』が『数メートル前方』を走っているのである。
さすがに『三回』も続くと『おかしい』と思い、しばらくまっすぐ走った後『右』に曲がる。だがやっぱり『例の女』が先を走っており、この『道』は『3メートル』ほどで『突きあたり』になり『左右に曲がる道』が現れる。『白いワンピースの女』は『右』に曲がったので『里中さん』は『左』を曲がるが、するとやっぱり『前方』に『髪の長い女』が走っているのだ。さすがの『里中さん』も焦ったという。
(絶対に『あの女』は『普通』じゃない………ちょっと待って? あたしが行く道を全部『先回り』してるってことは、もしあたしがこのまま『家』に帰ったら『あの女』も『家』に来ちゃうってこと!!??)と里中さん。
彼女はそこですぐに『ポケット』に手を突っ込み『お守り』を取り出した。実は『里中さん』は『氷室麗華さん』という『霊能者』と関わるようになってから『魔除けのお守り』を常日頃持ち歩くようにしているのだ。もちろんそんなものを取り出したのは『白いワンピースの女』を『除霊』するためである。
「…………どこの『悪霊』か知らないけど、あたしに『絡んできた』のが運の尽きってやつよ。こいつで『天国』に送ってやる………!!」と里中さん。
だが『走るスピード』をあげて『女』に近づこうとすると『女』もそれに『比例』して『スピード』が上がるのである。そのため『里中さん』は『距離』を全く詰めることができず、『数メートル』も『お守り』を投げて当てられるような『肩』も持ち合わせていなかった。
仕方ないので『意地』になって『全速力』で追いかけるも『女』も『比例』して『スピード』があがり、ついには『里中さん』が『限界』に達して『その場で停止』すると『女』はそのまま走り去ってしまったのである。
「ぜぇ、ぜぇ、はぁ………も、もしかして『立ち止まる』のが『正解』とかって可能性は………?」と里中さん。
だが再度歩き出してから『角』をまがるとまた『例の女』が前方を走っているのである。だが今回は『小走り』らしく、『徒歩の里中さん』と『一定の距離』を保ち続けていた。
「ダメか………ど、どうしよう? 『お守り』を投げるには遠すぎるし、かといって『家』には帰れないし、『スマホ』は『ごく当たり前』みたいな顔して『圏外』だし………ほかに何かできることある?? つーかマジでなんであたしが『悪霊』に狙われるの?? 『怖い話』してくるらいで『心霊スポット』とか一切近づいてないし『流行ってる呪い』にも手出してないし、『ランニングコース』にも『出る場所』全くないのに………理不尽すぎてしぬ~! ………いや本当にマジで危ないんじゃねこれ???(急に冷静)」と里中さん。
彼女は仕方なく『例の女』の後姿を眺めながら『歩きつつ』いろいろ『作戦』を考えていたそうだ。それでも『何も思いつかない』ので一度『頭の中が真っ白』になり、『やばい詰んだかもこれ。これあたしこのまま死ぬわ』と割と本気で思い始めて『過去の思い出』が『フラッシュバック』し始めた時、ふいにこんな話を思い出したそうだ。
『………この『宇宙』で『光』より速い『スピード』で走れる物質は存在しない。これは『特殊相対性理論』の『光速度不変の法則』といって、『光と同じスピード』まで加速しようとすると『無限大のエネルギー』が必要なんだ。だから『人間』はどれだけ速く走っても『光の後ろ姿』しか見えないんだよ。でも一方で『光』は『停止』することができず『同じスピード』で運動し続けることしかできないんだ………』とサカナちゃん。
これは本当に『突飛な発想』だったのだが、『里中さん』は『白いワンピースの女』に『声』をかけたのである。
「あの………あなたもしかして『光の妖精』とかそういうやつですか!?」と里中さん。
すると『髪の長い白いワンピースの女』は『前を向いて走り続け』ながらも『笑い』だして、
「…………あははは! 面白い発想をする小娘だねぇ! じゃあ『今回』は『その通りだよ』って言っておいてあげようか! それはたぶん『サカナちゃん』の『入れ知恵』だろう!? あの子によろしく言っておいておくれよ! だが『二度目』はないと思っておくんだね! 『光』はどこにだって存在するんだから、『光の妖精』も『どこにでも存在している』んだよ!」
そう叫んでから『白いワンピースの女』が『後ろにふり返った』のだが………そのはずなのにまた『後姿』になった。どうやらこの『謎の女』は『後ろ姿』しか持っていなかったようで、それを見た『里中さん』は、
(そりゃあ『光』は止まることができなくて、しかも誰も『光』を追い越して『光の前面』に回り込むことができないんだから当然『正面の姿』なんて存在するわけないか~)
と妙に納得してしまったそうだ。
そして『光の妖精』は前方の『角』を曲がって姿を消し、『里中さん』が同じ『角』を曲がってももう『女の姿』はみえなくなっていた。その後は特に何事もないそうである。
最後に『里中さん』がこの話を『締めくくって』、
「………いんやぁ正直最初は『なんで悪霊に狙われるようなこと何もしてないのにこんな目に遭わなきゃいけないの!?』ってイラついてたんだけどさ。そんで後になって『麗華』に聞いたら『光の妖精は初めて聞いたけど、居ないとは言い切れない』と言ってたわ。『妖精や付喪神は気まぐれで人間に悪戯を仕掛けることがある』ともね。じゃあまあ仕方ないか~ってw いやぁ終わってみれば『あっけない』けど当時はまじで『死ぬ』と思ってたからね~いやマジで(けらけら)」と里中さん。
「その『光の妖精(?)』は『サカナちゃん』を知ってたってこと? つまり『サカナちゃん』は『怪異』の間では有名人?」と柚葉さん。
「そうっぽいね~。あ、あと実はこれは『愛(里中さんと柚葉さん共通の友人)』の話なんだけどさ。あたしからこの『光の妖精の怪談』を聞いた後に『愛』も『全く同じ女』に遭遇してるそうだよ。愛がどうやって助かったか今度聞いてみるといいんじゃね? どうよ? あたし『昼休み怪談部』の活動にめっちゃ貢献してね? だって『どんどん新しい怪談』を量産してるんだからさ~!」と里中さん。
「それって『自己責任系』ってやつじゃん! 先に言ってよそれ!!」と柚葉さん。
「とりあえず『サカナさん』と『氷室さん』に相談しましょうか………(汗)」と私。
『サカナさん』と『氷室さん』は二人とも『昼休み怪談部』が『本物の霊能者』とみている女子二人である。だが果たしてこの二人は本当に『対処方法』を教えてくれるだろうか? 『氷室さん』は『害がなさそうだから無視すればいい』って言いそうだし『サカナさん』に至っては『光が家の中に居るのは当たり前じゃない?』とか言わなさそうな気がして不安だ(笑)。
それにしても………確かに『光の速度』は『超音速』なので『題名には偽りなし』と言っていいかもしれない。そして『ソニックブーム要素』は『聞いた人にも怪異が訪れることで『衝撃波のごとく拡散する』』ということで………いや、ちょっと苦しいと思いますよ柚葉さん(汗)。
まさかこの作品がランキング入りするとは思ってもみませんでした。大変光栄です(感謝)。おかげで熱がさらに高まってます(笑)。




