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声
三人目は、中年の女性だった。
女性は歌手で、今まで何度もステージに立ってきて、たくさんの人たちに評価をもらってきた。でも、自分で納得がいったことはない。
「だから、誰にもまねできないような、人を魅了できる歌声を出してみたい。」
と話した。
魔女は、
「いいわ。このネックレスに魔法を込めて、あなたに渡すわ。歌を歌うときに、ネックレスを着けて歌ってね。」
と言い、白く虹色に光るネックレスに手をかざした。
手からは、キラキラと輝きが放たれてネックレスが、輝きを増す。
魔法の付与が終わると、魔女は中年の女性にネックレスを差し出した。
中年の女性は、さっそくネックレスを首に着けて、軽く咳払いをした後に、一曲披露してくれた。
歌は、昔からの童謡で、聴いていた魔女は、懐かしい曲調に一筋の涙が流れた。
その魔女の姿を見た中年の女性は満足して、街へ戻っていった。
「魔女さんありがとう。この声で次の公演は、人々を感動させるわ!」
そう声をかけて。
魔女は、にこりと笑い、手を振って中年の女性を見送った。
桜の木の葉は、青々としていた。