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歩行
二人目は、年老いた男の旅人だった。
「噂を聞いてきたのだが、なんでも叶えてもらえるのかね?」
「ええ、なんでも、大丈夫よ。」
「なら、わしは、疲れにくい足になることを願おうかね。」
旅人によると、今までずっと旅をしてきて、これからも旅を続けていきたいと思っているが、年のせいか疲れやすくなってきてしまった。
もし叶うなら、最後の旅になるであろう故郷への旅路を、疲れなく歩きたいとのことで、この願いをしたとのことだった。
魔女は、桜の木の根元に腰かけて、自分の履いていたオレンジの宝石の付いたブーツを脱いだ。
そして、一度目にしたように、宝石に手をかざして、魔法を付与した。
旅人は、さっそく魔女から渡されたブーツを履いた。
「おぉ・・・!足が軽い!魔女さん、ありかとよ。これで故郷に帰れる。ありがとう!」
足を二三度動かして、足の軽さを確認して、旅人は足並み軽く最後の旅へ向かった。
魔女は、離れ行く旅人に手を振りながら見送った。
「旅人さんの旅に、幸多からんことを・・・。」
桜の木を見上げながら、魔女はつぶやいた。
桜の木からの木漏れ日が、心地よかった。