冥界の神ハデス ~これが選択~
「タリラタッタラー『あみあみバズーカー』」
ボムボムプリン様の間の抜けた声が響く。
ボムボムプリン様がポーチから取り出されたものはサイズの小さい大砲に似ていた。
「ドッカン!!」
その掛け声とともに『あみあみバズーカー』が発射される。
弾は着弾する途中で破裂し、中から大きな網が出てきた。
それは大きく広がり亡者たちを巻き込み捕まえる。
「説明しよう! 『あみあみバズーカー』は普通のバズーカーと違って網を発射し亡者たちを捕まえるぞい!」
ボムボムプリン様は裏声で自慢の武器の性能を説明する。
「流石です! プリン殿!」
「やるな!」
「凄いです!」
「ハッハーン! どうでござるか? これでも錬・金・術師! 褒めて! 讃えて! 敬って!」
正直これがなかったら素直に尊敬できるのだか…申し訳ないけれどウザいなって思ってしまった。
「クソうぜえ!」
「さっきからバンバン撃っているが弾数もつのか!?」
オマール様の言葉にピタリとボムボムプリン様の動きが止まる。
ガタガタと歯車のように首だけで振り返る。
「10発くらいしか…ないでござる」
「…あと何発だ」
「あと2発…」
ボムボムプリン様は手を額に当て、てへぺろっと舌を出す。
カイ様はそれを見てわなわなと肩を震わせる。
「馬鹿野郎! もっと考えて使え! 走りながら同じ奴作れねえのか!?」
「それは流石に無理! 結構集中力いるでござるよ!」
ギャーギャーとカイ様とボムボムプリン様は言い合っている。
「でもそのおかげで大分亡者の数が減りました!」
「それもあるけど…おそらくこの亡者たちは群れから外れた連中だ…私たちを狙ってきているわけじゃない」
オマール様がビシッと下に向かって指を指す。
遥か下では亡者が溢れすぎて埋め尽くされていた。
「…あの大部分はバベルが引き付けてくれているのか。しかし群れから外れた連中でこの数か…しんどいぜ」
先ほどから亡者たちに執拗に追撃され思ったよりも進んでいなかった。
あと少しで頂上まで行けるのに亡者たちに囲まれ私たちは足止めを食わされていた。
「倒しても倒してもキリがありません! こんなことやっている間にバベル様が…」
突破しようにも後から後から蟻のように亡者たちが出てくる。
時間だけが過ぎていく。
バベル様が必死に時間を稼いでくれているのに、もたもたしていたらバベル様の命が危ない。
私は気付かないうちに一人でどんどん前に出ていたようだ。
気付くとみんなから離れていた。
「あっ!」
左から亡者が近づいていたのに気づかなかった。
大きな口を開け亡者が迫る。
思わずバベル様の名を心の中で叫んでしまう。
亡者が噛みつく寸前その頭に戦斧が叩き込まれる。
オマール様は私を抱き上げ、カイ様たちのところへ引っ張っていった。
ポコッとカイ様は軽く私の頭を小突く。
「馬鹿野郎! 先走んな!」
「ご、ごめんなさい…バベル様のことを思うと居てもたってもいられなくなって…」
確かに焦りのまま私は周りを見ずに連携を崩して一人で前へと進んでしまった。
シュンと私がしおらしく肩を落とすとカイ様はため息をつく。
「まあ、そうなってもしょうがねえか…さっきから一歩も進んでねえからな」
「…その通りだ。このままじゃあバベル殿はやられ、私たちもやられるだろう」
オマール様のほうへと皆が視線を向ける。
いつもと違う雰囲気を纏っているように思ったのは私だけではなかったようだ。
「ど、どうしたでござるか? 改まっちゃって…」
「おい…オマール、お前」
「『オールバインド』!」
オマール様は自分に敵を引き付け始めた。
「先に行け! …私なら大丈夫」
オマール様は振り返らず亡者たちへ突っ込んでいった。
亡者たちはオマール様のスキルにより引き寄せられ囲みが解かれていく。
確かに先に進むには絶好のチャンスであるが
「おい! オマール、お前! 勝手なことすんじゃねえよ!」
カイ様はオマール様の後を追おうとするがボムボムプリン様が後ろから羽交い絞めにして引き留める。
「てめっ…離せ! オマール!」
「カイ殿! カイ殿! …冷静に! ここを逃したらもう先へと進めない! 見て! 囲みが復活しかけているでござる」
ボムボムプリン様の言う通り、オマール様が引き寄せた以外の亡者が新しく追加され始めている。
カイ様はそれでもボムボムプリン様を振り払おうとしたが不意にぴたりと動きを止める。
「ああ! くそったれ!」
カイ様はそう叫ぶと踵を返し先へと進む。
「ごめんでござる」
ボムボムプリン様はペコリと頭を下げる。
私も深く、頭を下げ先へと進む。
私たち三人、振り返りはしなかった。




