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咎人たちの聖戦  作者: 白騎士58
第二章 冥界に手向ける鎮魂歌
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冥界の神ハデス ~冥府の鎖~

 雄叫びとともに勢いよく斬りこんでいく。


 ハデスは右の手のひらをクイっと上げる。

 地面から氷の杭のようなものが突き出してくる。


「があ!」


 腹部に氷の杭が突き刺さりそのまま僕の身体を貫いた。


 瞬時に自分の身体を真っ二つに斬り裂き脱出する。


 上半身は空中を舞いながら咆哮をあげる。

 それに合わせるように腹から先が瞬時に再生される。


 そのままハデスへと一閃見舞う。


 金属のぶつかる音。

 剣はハデスの鎖に当たりその肉体に傷をつけることはなかった。


「兄弟、あの鎖はハデスの神器だ…破壊することは不可能だ」

「奇怪な…貴様ただの虫けらではないな」


 ハデスは僕のほうへと振り向く。


 上半身を縛り付けていた鎖はハデスの右手へと集まっていく。

 鎖はまるで生きているように蠢きながら次第に大きくなり円錐状の形を呈しておまけに回転もしている。


「…どうなっているんだ」

「それを聞くのは野暮だぜ、兄弟」

「…『冥府の断罪』」


 不気味に蠢く鎖の塊が僕に向かって放たれる。


 それの速度自体は遅く、難なく後方へと下がりながら避ける。


 その攻撃に当たった地面は深く凸凹に抉れていた。


「…当たったら悲惨なことになるな」

「次が来るぞ、兄弟」


 鎖はハデスの全身を隙間なく蠢くことでハデスは恍惚に涎を垂らしていた。


 いちいち気持ち悪いことしないと攻撃できないんじゃないかと思ってしまう。


 鎖は蠢きながら徐々に膨張していく。


「…『冥府の狂宴』」


 ハデスの全身から一気に数多の鎖が弾丸のように凄まじい勢いで飛び出してくる。


 避けきれずいくつかの鎖が僕の身体に突き刺さる。

 突き刺さった鎖はそのまま僕の肉に喰いこみ内部からかき乱してくる。


「あああああ!」


 その苦痛と不快感に叫び声をあげる。


「フフフフ…いいザマだ。しかし我とペルセポネとの時間を邪魔したことの償いにはならないな」


 ハデスはそのまま僕を空中まで持ち上げ、地面に叩きつける。


 そのまま再度空中に上げ、地面に叩きつけようとする。


「なめんな!」


 鎖で貫かれた部分の一部を切断、またはある一部を無理やり引きちぎる。

 凄まじい激痛が襲うが瞬時に肉体は再生される。


「ふん。忌々しい…また喰らわせてやる。…『冥府の狂宴』」


 また鎖が襲いかかる。


 弾丸のように近づいてくる鎖に対して刀身を沿わせるようにし、鎖の進行方向を逸らす。


 破壊はできないが逸らすことはできる。

 今回鎖は僕の肉体を貫くことなく宙を舞った。


 そのままハデスまで突っ込んでいく。

 ハデスは鎖を戻そうとするが一旦解放した鎖を戻すのに手間取っている。


 一気に距離を詰め、一閃ハデスに見舞う。


 ハデスの腸を切り裂さかれ血と臓物がしたたり落ちる。

 その血は赤かった。


「…お前も人間と同じ赤い血が流れているんだな」


 ハデスに与えた傷はもう再生されている。


 やはり分割された魂を破壊しない限りハデスにダメージを与えられないようだ。

 ハデスは腹部の血を拭い、真っ赤に染まった手のひらを見つめている。

 わなわなと震え始める。


「がああああああ! 『冥府の憤怒』」


 咆哮とともにハデスの両手へと鎖は蠢めき巻き付いていく。

 蠢く鎖は刀としては歪な形になっていく。


 ハデスは憤怒とともに両手を振り回しながら突っ込んでくる。


 距離をとろうとしたがそれをさせずハデスは距離を詰めていく。


 ただ、ただ打つ、打つ、打つ、打つ、打つ、打つ、打つ、打つ、打つ、打つと激しい力任せの猛攻を何とか凌ぐが当然反撃もできず押されていく。


 辛抱強く耐えた。

 必ず隙が生まれる、そう信じて耐え続けていた。


 その時は来た。


 徐々に猛攻のリズムが崩れてくる。

 ハデスは相変わらず咆哮をあげ続けるが肩で息をし始めている。


 本当に何も考えず、感情のまま力任せに攻撃を続けているせいで体力が底をつき始めている。


 もう少し、もう少し我慢だ。


 ハデスは繰り返す、打つ、打つ、打つ、打つ…打つ、打つ、打つ…打つ、打つ、打つ…ここだとハデスの振り落とした攻撃を斬り返しそのまま斬撃を放つ。


 鮮血が吹きあがる。


 そのまま反撃に転じる。


 今度はハデスが防御に回る番であった。


 斬る、斬る、打ち返す、斬る、斬る、斬るとハデスへと確実に攻撃が当たり始めていく。


 ハデスの苛立ちが手に取るようにわかる。


 打ち付ける攻撃は力任せなものが多く、威力は驚異的であるが速度は遅く見切りやすい。


 余裕をもって返しそのまま斬りつける。

 または足を使い避け、斬りつける。


 ハデスの攻撃は当たらずしかし僕の攻撃は当たる。


 徐々に深く攻撃が当たり始めてくる。


 もう少し、もう少し踏み込むことが出来ればとっておきのを見舞わせてやる。


 じりじりと距離を詰めていく。


「くそったれがああ! …『冥府の狂宴』」


 ハデスは一瞬のスキを突きまたあの技を繰り出す。


「それはもう攻略した!」


 バク転しながら回避する。


「『冥府の息吹』」


 ハデスの全身から凍えるほどの猛烈な冷気が放たれる。

 その威力はすさまじく表面の皮膚が凍っていく。


 僕の動きが鈍る。


「『冥府の弾劾』」


 一塊に集められた鎖が弾丸のように放たれる。


 それは僕の身体を貫く。

 大量の血反吐を撒き散らす。


 さらにハデスは先ほどの技を繰り出そうとする。


 冷気で鈍った身体に喝をいれながら走り出す。


「『冥府の感激』」


 ハデスは左腕を地面に突き刺す。


 地面から鎖が槍のように突き出してくる。

 見えぬ攻撃が下から苛烈に繰り出される。


 無論下ばかりではない。


 氷のあられや槍が無数に放たれる。


 しかしやることは変わらない。


 動きを止めるな。

 考えを止めるな。

 いついかなる時も相手より優位になるように。


 冷気に大分身体が馴染んできた。


 いつもの身軽さを取り戻していく。


 ハデスは僕の動きに対応できなくなっていく。


 一気に距離を詰めていく。

 ハデスは左腕を地面から抜こうとするが間に合うはずない。


「遅い」


 煌めく一閃。

 鎖のガードが緩かったハデスの首元から大量の鮮血が舞う。


 ハデスは傾きかけた首を元に戻す。


「ここまで、ここまで…コケにされたのは…久しぶりだ」


 鎖の動きがますます気味悪くかつダイナミックにそして生物感を伴っていく。


「我は…冥界の神、ハデス…その力教えてやる」


 そう言い終えるや否や蠢いていた鎖はその動きを不自然と思えるほどにピタリと止まる。

 

 しばしの静寂が二人の間を包む。


 しかし鎖は耐えきれなかったようにまっすぐ天高く解き放たれ螺旋階段に突き刺さる。


 そのままハデスを上空へと移動させ、上空で固定させる。


「この…鎖の名は…『冥府の鎖』(縛りつけられたこの感情)…亡者を捕らえ支配する。今まで捕らえてきた亡者たちをすべて解放しよう。悔いろ、恐怖せよ」


 一つ一つの鎖の節から液体が染み出るように亡者たちが大量に召喚される。


 あっという間にそれは天を覆いつくさんとする。


 亡者たちの怨念の叫び声が木霊する。


 ハデスの高笑いが響き渡る。

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