想う 2 ~高尚なものではない~
轟音が響き渡りあちこちで爆煙があがる。
ハデスとの戦闘が始まったのだ。
私はちらりと振り返る。
もうずいぶん高い場所まで登ってしまった。
地上でどのような戦闘が繰り広げられているのかはわからない。
バベル様きっと無事ですよね、私は心の中でそっと彼の無事を祈る。
「振り返るな! あいつが時間を稼いでくれている間にのぼりきるぞ!」
カイ様が私に向かって怒鳴る。
私は頷き、螺旋階段を上る。
「しかしこんなに簡単に成功するとは…嬉しい誤算だ」
オマール様が嬉しそうに言った。
「ハデスの視野の狭さはやばいでござるな。あいつ目ん玉ついてるの?」
「さあな…知りたくもねえ」
「そのおかげでバレることなくここまで来ることが出来ました」
私たちは今『天と地をつなぐ螺旋階段』の約十分の二の場所にいる。
相当進んだはずだが見た目以上にこの螺旋階段は巨大であった。
また轟音が響き渡る。
「…バベル様」
「俺たちが早く終わらせればバベルの負担も減る。心配すんな! このなかであいつが一番強い…簡単にはやられねえよ」
後ろ髪惹かれる気持ちを振り払い私はスピードを速める。
ボムボムプリン様を追い抜き、一番先頭にいるカイ様のところまであっという間に追いつき、追い越していく。
「…張り切っているでござるなー」
「それは…やはり愛か」
「やはり…愛か」
後ろから好き勝手なことを言っている方々を振り返ってにらみつける。
後ろの三人はサッと私の視線から逃れるように顔を背ける。
やっぱり周りからはそういう風に見えてしまうのだろうか、頬を赤らめる。
しかしきっとこの感情はそれとは違うのだろう。
あの真っ黒で真っ赤な地獄を斬り裂いて彼は現れた。
あの地獄にふさわしい醜い化け物たちを次々に屠り血肉で汚れていく彼の姿は、あまりにも儚げでほんの少し触れてしまえば壊れてしまうのではないのかと思うほど繊細さを纏っていた。
側にいたい、気付けば消えてしまう彼の側に、ただ側にいたい。
そのためなら私はどんなことでもできる、どんなことでもやる。
きっとこれは愛というには幾分、いや随分一方通行な思いだろう。




