取り敢えずごめんなさいと言いましょう
扉を開けて現れたのはオマール様とその後ろでコソコソと隠れている人がいる。
「ほら、別に悪いことしたわけじゃないから」
グイグイとオマール様は後ろに隠れていた人を前に出していく。
「ちょっ! 自分で出るから! 押さないでよ!」
ドンっとオマール様は押し出して私の前へとその隠れていた人を押し出す。
彼は気まずそうに顔を少し下に向けポリポリと頬を掻く。
私が無言のままなのがますます彼の不安を煽っているのだろうがそんなことは気にしない。
どれだけ私が心配したと思っているのだろうか、彼は私のそんな気持ちを露ほどにも慮ることをしないだろう。
彼は不安そうに私を伺う。
私は頬を膨らませて彼を見る。
しばらくそのままの状態でいると彼はふーっと息を吐いた。
「…心配かけてごめん。本当ごめん…なさい」
彼はペコリと頭を下げた。
私は頬を膨らませるのをやめる。
その一言で許そうと思っていた。
はーっと私はため息をそっとつく。
我ながらそうとう甘いな。
「…もういいです。許します。…無事でよかった」
彼に向かって微笑む。
彼も先ほどまでの不安な顔が嘘のように微笑んでくれた。
「マリアも無事でよかった」
「…もういいでござるか? お腹いっぱいで死にたくなってきた」
ボムボムプリン様がお腹を押さえ青い顔で地面に突っ伏していた。
カイ様はとてつもなく甘い食べ物を食べた時のような吐きそうな表情で私たちを見ていた。
オマール様はそもそも私たちを見ておらず窓の外の風景を見ていた。
私たちは顔を真っ赤にしてお互いを見る。
「そ、そうだ! 僕たち『忘却の椅子』を破壊したよ!」
「そ、そうなんですね! 私たちも先ほどペルセポネさんの手鏡を破壊しました!」
私たちは場を何とかごまかそうと声をうわずりながらお互いの功績を言い合う。
「ほう、やることはやっているんだな」
カイ様がにやにやと笑いながらドスッと私の腹を小突きながら小声で私に耳打ちをする。
「よかったな。会いたくて会いたくてしょうがなかったんだろ? 抱きしめちまいよ」
「なっ!」
私は顔を真っ赤にしてカイ様を睨む。
抱きしめちまいよだって!
バベル様の顔を見た瞬間それをしたくてたまらなかったが、どれだけ心配していたのかをわからせるため必死に抑えていたというのに。
私はちらりと横目でバベル様を見る。
バベル様は先ほどの会話が聞こえていなかったのか首をかしげていた。
「…しかしカイ殿、実際抱きしめ合っているのをみたら吾輩憤死するのは確実」
「ああ、俺もだ」
カイ様とボムボムプリン様はひそひそと小声でしかし確実に私だけに聞こえるように囁き合った。
本当に抱きしめてやろうかと二人がそれで亡き者になるのならやってみる価値があるかもしれないと半ば本気で思っていると
「さて、茶番はおしまいでいいかな?」
「茶番とはひどい…感動の再会でござるよ」
「お涙頂戴のな」
「あの…そろそろ本気で僕怒りますよ」
「いいじゃないか、兄弟。これにかこつけてキスしちまいよ」
「うるさいぞ、ユダ」
バベル様の顔が赤かった。
バベル様も私と同じことを考えていたのだろうか、そうだったら嬉しいなって、何を考えているのだ。
私はブンブンとかぶりを振って雑念を追い出す。
何事かとボムボムプリン様は訝し気に私を見ているが気にしない。
「まあ、そうだな。お次はいよいよハデス本人との戦闘だな」
真面目な顔をしてカイ様は言った。
そろそろ茶番は終わりみたいでいいようだ。
ホッと私は胸をなでおろす。




