手鏡 ~彼女の声は~
「フッ、吾輩ほどのものになればこれぐらい余裕!」
ボムボムプリン様は大げさに胸を張っていた。
私たちはいつも通りスルーする。
「まさか偶然見つけた隠し通路の抜けた先が目的地とはな・都合よすぎだが今は有難いな」
カイ様のおっしゃる通り私たちが逃げ込んだ隠し通路を進んだ先の部屋はセーフティーエリアでありしかもペルセポネさんが使っていたと思われる部屋であった。
なぜそのように推測できたかというとその部屋は今までの冥界の道中を考えるとあり得ないほど綺麗で普通の女性の部屋であったからだ。
大きな鏡が置いてある化粧台、優雅な天蓋付きのダブルベッド、大小さまざまな熊のぬいぐるみが山積みとなり、ガラスの机の上には色とりどりの花が花瓶に生けられている。
このようなファンシーな部屋でひときわ目を引くのは部屋の天井からぶら下がっているズタボロの一本のロープ。
そのロープには幸いなことに何もぶら下がってはいない。
まあ、それは当然か・死体は別のところに安置されているのだから。
「…ここがペルセポネさんの部屋でしょうか? 手鏡はどこにあるのでしょうか?」
私は手鏡を探し始める。
カイ様とボムボムプリン様は部屋の中央付近に座り込みアイテムなどの整理をしている。
目的のものを探すよりも優先するべきことなのだろう、私は彼らの邪魔をしないように一人で探すことにした。
「あっ」
手鏡は案外あっさり見つかった。
化粧台の棚を開けるとその中に手鏡がポツンと置いてあった。
私はそれを手に取ると何となく誘われるように手鏡を見た。
手鏡は爪で引っ掻いたような跡がいくつもあり、手鏡はぼやけ自分の顔が曲がって見える。
そう言えばしばらく鏡を見ることはなかったな。
私は二人の準備が整うのを待つ間ちゃっかり使ってしまおう。
それぐらい罰は当たらないだろうと私は手鏡を見る。
鏡の中の自分の顔は曲がりくねっており髪を整えるのも一苦労する。
やはり長旅で髪は乱れ煤だらけであった。
顔の汚れを払っているとある違和感に気づいた。
あれ、今私、手を肩に触れてないよね。
背中に嫌な汗が流れる。
いや、鏡はぼやけておりそのせいで何かを手と見間違えたのだろう。
私はあえて気にしないようにしたが背中の嫌な汗は止まらない。
それどころか手鏡を持つ手が震え始めている。
見間違いじゃない、明らかに誰かの手が鏡に写っている。
私の髪の毛をその白い手は撫でている。
息が乱れてくる。
二人のほうに助けを求めたいのだが喉が急激に枯れ、声がかすれて出てこない。
振り向きたいのだが金縛りにあったようにピクリとも身体が動かない。
「とてもきれいな黒髪…それに触り心地もいい」
真後ろから女性の声が聞こえてくる。




