奇々怪々の追跡者
「うぎゃああああ!もう嫌!」
「何なんだ、あいつは!」
「このままだと追いつかれてしまいます!」
目的の場所が分からず亡霊たちに怯えながら進むストレスからか「あれ、ラスボスの砦っぽい」というカイ様のやけくそな一言に私たちは軽率にも周囲と比較してひと際大きな要塞みたいな建物に飛び付いた。
確かに『天と地を繋ぐ螺旋階段』の近くに雄々しくかつ威圧的にそびえ立つそれは目を引くには十分すぎるものだった。
その軽率さを後悔するのに案外時間はかからなかった。
「こっちの…攻撃は効かねえし…どこまで追いかけてくるんだよ!」
カイ様は先ほどからずっと走りながら文句を叫び続けいていた。
どこにそんな体力があるのだろうかとお腹の痛みを必死に耐えながら考える。
いやむしろそんなことを考えていないとすぐにもでも足が止まってしまうからか。
要塞みたいな建物に入ってすぐに私たちはある化け物にずっと追いかけられていた。
それはボロボロ汚れた真っ黒なウェディングドレスを身に纏ったミイラの女性であった。
それの表情は憎悪と憤怒に歪み、あらん限りの呪詛を喚き散らしていた。
怨霊の類かもしれない。
当然、私たちは彼女と遭遇するとすぐに戦闘を開始した。
しかし私たちの攻撃はどれも一切有効でなく、彼女の攻撃は私たちには効くというどうしようもない状態に私たちが取れる唯一の選択は逃走しかなかった。
しかし彼女はそんな私たちをおいそれと逃がしてくれず飽きもせずに延々と追いかけ回している。
咎人たちと比べ体力の劣る私が明らかに遅れだし始めている。
さっきから彼女の爪先が私の後ろ髪を掠る。
彼女の狂暴な息遣いが首元にかかる。
このままでは私はいずれ彼女に追いつかれてしまうだろう。
「あそこ! ハア…ハア…立て籠もれそう!」
ボムボムプリン様がこの廊下のずっと先にある頑丈そうな扉を指し示す。
「ゼェ…ゼェ…あそこまで、走れ!」
私は最後の力を振り絞り走る。
一歩、一歩足を前へと出す度に肺が悲鳴をあげる。
空気が欲しいのに肺に入ってこない。
意識が遠のいて目の前が暗くなっていくのが分かりもう限界と思ったその時、目的地に辿り着いた。
私が倒れこむ瞬間、カイ様とボムボムプリン様が私を抱きかかえ引きずるように扉の中へと放り込んでくれた。
二人は急いで扉を閉め、近くにあった適当なものでバリケードを作る。
ガンっと彼女は力一杯体当たりを喰らわす。
扉からミシっと軋む音が聞こえる。
カイ様とボムボムプリン様は身体を押し付け扉が壊されないようにする。
彼女は狂ったように何度も体当たりを繰り返す。
その度に扉はミシミシと埃を立てながら左右に揺れる。
このままでは突破されると思い、私もまだ朦朧とする頭を奮い立たせて部屋にある椅子や棚、机など手当たり次第扉へと移動させる。
目につくものすべてを扉へと移動させた後私も扉を支える手伝いを始める。
「もう…限界…だ!」
「もう許してください! 心を入れ替えてこれから真面目に働きますから!」
ボムボムプリン様は大粒の涙を鼻水とともにまき散らしながら許しを乞う。
しかし限界なのは私たちだけではなかった。扉は左右どころでなく前後にも揺れ始めている。
「おい! あれを見ろ」
カイ様が頭を振りながらあるところを示す。私はそちらのほうへと顔を向ける。
「あれは…いけますよ!」
切迫していた状況と朦朧な意識で先ほどは見逃してしまった。
期待がこもった視線をカイ様とボムボムプリン様へと送る。




