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咎人たちの聖戦  作者: 白騎士58
第二章 冥界に手向ける鎮魂歌
79/142

番外編 昔々より遥か昔というには足りないほど昔のある二人の結婚式の話

直接物語に影響することはありませんがその後の話に少し関連しますので番外編という形で出させてもらいます。

読み飛ばしてもらっても構いません。

 昔々より遥か昔というには足りないほど昔のある二人の結婚式の話。


「大丈夫、きっと幸せにしてみせる」


 俺は不安そうな顔をしている彼女に向かって笑顔を見せる。


 彼女はフッと顔を緩めるがすぐにまた不安そうな顔をする。

 しかし純白のウェディングドレスを身に纏った彼女の、その不安そうな顔がさらに彼女の魅力を引き立てさせている。

 そんなこと彼女が知ったら不機嫌になってしまうことをぼんやり彼女を見つめながら考えてしまう。


 どうして彼女は俺を選んだのだろう。


 彼女はかなり美しかった。

 透き通る白い肌

 それと対照的な真っ黒な長い髪

 彫が深くエキゾチックであり

 スタイルもなかなかに良い


 彼女をまじまじと見れば見るほど自分と彼女との差が際立ってしまう。


 俺は一農民でただ彼女とは幼馴染というだけであった。

 畑仕事で日に焼け肌が浅黒く、鼻は豚鼻でお世辞にもイケメンというツラではない。


 彼女の美貌を聞きつけた貴族や騎士、果ては名も知らぬ遠くから来た国王までも彼女に求愛をしてきた。


 しかし彼女はなぜかそのすべてを断った。


 そんな中俺は100%絶対叶わぬと思いながら今までの想いを彼女に伝えるべくありったけの勇気を振り絞りプロポーズをした。


 まさかの彼女は涙を流しながらそのプロポーズを受けてくれた。

 その日の夜俺たちは結ばれた。


 俺は正直夢を見ているのではないかと今でも思っている。


 俺は黙って彼女を見つめていると彼女は申し訳なさそうな表情をした。


「…今日は記念すべき日なのに、暗い顔しちゃってごめんなさい」

「何が不安なんだい?」


 俺はできるだけ優しく言った。


「いろんなことが…私、うまく妻として役目を果たせるのかしら…」


 彼女はまた不安そうに顔を伏せる。

 しかし俺はその言葉を聞きあまりの嬉しさに彼女を抱きしめてしまった。


「えっ! ど、どうしたの?」


 彼女は慌てたようにしかしどこか嬉しそうに聞いた。


「嬉しくって! ああ…俺はなんて幸せ者なんだ…こんなにきれいな奥さんがこんなにも俺のこと考えてくれているなんて!」


 俺は彼女に今の気持ちをそのままぶつけ力強く彼女を抱きしめた。


「もう…恥ずかしいなあ…ありがと」


 彼女は俺の耳元で優しく呟いた。

 その甘い吐息が首にかかりとてもくすぐったかった。


 俺は彼女を離した。

 しばらく俺と彼女は見つめ合った。


「今日は記念すべき日だ…俺たちは幸せになるんだよ」

「そう…だよね。私たちは幸せになるんだ」


 彼女は先ほどまでの不安そうな顔はなくパッと花が咲いたような笑顔がそこにあった。


 俺は彼女の笑顔が好きだった。


 彼女はゆっくりと目を閉じる。


 俺は優しく彼女の顎に手を当てる。


 スッと彼女の顔を少し上向きにする。

 彼女は何の抵抗もしなかった。


 俺は彼女にキスをしようとしたとき急に当たりは暗くなった。


 今までの雲一つなかった快晴そのものだった空は真っ黒で厚い雲に覆われていた。


 俺は異様な雰囲気を感じ取る。

 彼女も感じ取ったのだろう、目を開け不安そうに俺を見つめる。


 俺は大丈夫だと彼女に示そうとしたとき雨が降った。


 その雨は普通じゃなかった。


 彼女の顔にかかった雨粒は黒い液体だった。


 彼女もその異様な雨に恐怖しているのだろう、今にも泣きそうな顔をしていた。


 どう考えてもこの雨は吉兆ではない

 何かとんでもない何か悪いことが起こる

 それが確実にわかるような雨であった。


 雨はあっという間にその強さを増していく。


 純白のウェディングドレスはすぐに黒く汚いドレスになってしまった。


 今日は結婚式どころではないと俺は思い、彼女の手を握りしめ避難しようとしたとき真っ黒で厚い雲が引き裂かれる。


 そこから俺たちに向かって光が差し込まれる。


 一瞬その幻想的な光景に目を奪われているとその光の中から人影が出てきた。

 それはゆっくりと地面へと降りていく。


 それは2メートルほどある巨体で上半身は鎖に縛られている。

 肌は病的なほどに真っ白であり顔は鉄仮面でよくわからないがそこから覗かせる瞳は燃えるような深紅であった。


 それは低い、とても低い声で言った。


「そなたは…人間にしてはあまりに美しい…そのまま枯らせてしまうのはあまりに惜しい、惜しい、欲しい。私はハデス、冥界の神…女、私とともに向かうのだ、我らが故郷へと…」


 ハデスと名乗ったそれはこちらに向かって歩みを進める。


 一歩進むたびに花は凍り草木は枯れ、灰へと帰っていく。


 ハデスは手を前へ差し出し彼女に近づいてくる。


 彼女は俺の背中をギュッと握りしめていた。


 俺はもう幸せは二度とこないと悟ってしまった。

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