冥界の住人たちは
「ハア、ハア…バベル様、オマール様ご無事で」
船の暴走による影響でバベル様とオマール様とはぐれてしまった。
たまたま放り出されたところに噴水があったため奇跡的に無事であった。
私は辺りを見回す。
『冥界の砦』の街は不思議な様相を呈していた。
レンガ造りの家、木造建築、土で固めた家屋、豪華な屋敷など様々な様式の建物が立ち並び、てんでバラバラでちぐはぐな感じを受ける。
それに人が住んでいる気配が微塵も感じない。
慌てて急いで近くの家屋に隠れる。
なぜなら空を見上げてみると亡霊たちが漂っていたためだ。
あのまま呆然と突っ立っていたら亡霊に見つかり八つ裂きにされていただろう。
私は今入った家の中を見て息をのんだ。
机の上にはいつ作ったかわからないほど腐敗しているシチューのようなものとカビが生えすぎて原形をとどめていない食事が三つほど置いてあった。
椅子も三つあり、そこに家族であろうか親子三人が縛り付けられていた。
四肢を鉄線で肉を喰いこむほどに縛りご丁寧に釘で打ち付けられている。
口には猿轡を、目は目隠しされている。
どれも苦悶の表情と血の涙を流している。
あまりの異様な光景に吐き気を催してしまう。
床には所々破損しているおもちゃが散乱しており、煤だらけの暖炉の前には編みかけの編み物が置いてあった。妙に生活感を出そうとしていることに不気味さを感じてしまう。
その時、扉が開く音が聞こえる。
懐にしまっていた短剣を油断なく引き抜く。
一気に振り返り、攻撃を加えようとすると
「ちょっ、ストップ! ストップ!」
聞きなれた声と腰が引けたその二つの姿にに少し安堵した。
カイ様とボムボムプリン様であった
「ひどいぜ、マリアちゃん。…俺ら頑張ったんだぜ」
カイ様が大げさに傷ついたような感じで、両手で顔を覆い、シクシクと泣きまねをしていた。
「音もなく近づくからです! …お疲れさまでした、ありがとうございます」
私は素直に感謝を伝える。
カイ様は泣き真似をやめ、フッと笑う。
「楽じゃなかったけどな…本体は船の横転に巻き込まれて…多分死んだよ。最後は呆気なかったな」
「ま、吾輩に任せればこの程度楽勝でござる!」
ボムボムプリン様がグッと胸を張る。
私は思わずジトっと懐疑的な視線を向けてしまった。
「な、なんでござるかその目は! 吾輩、頑張ったでござるよ」
「…そういう目になるのはわかるが、こいつが珍しく、珍しく、珍しく役に立ったのは本当だ」
カイ様がボムボムプリン様を庇ったのを見て、私は失礼ながらも驚いてしまった。
どちらかというとカイ様はボムボムプリン様を叱咤する側であるのに、こういうということはボムボムプリン様が役に立ったのは本当かもしれない。
ボムボムプリン様は端で「珍しくって三回言うものなの?」っとブツブツと文句を呟いていた。
「その…バベル様とオマール様にお会いしましたか?」
お二人にバベル様の安否を尋ねる。
カイ様は残念そうに首を横に振った。
私は一気に顔が暗くなったのだろう。
カイ様は慌てて付け加えた。
「いや、面と向かって会ったわけじゃないからわからんが、どうやら二人は船をはさんで反対側にいるそうだ。オマール曰くバベルも無事らしい。…オマールが何とかするって言っていたから多分大丈夫じゃねえかな」
カイ様は顔をポリポリ掻きながらバツが悪そうに言った。
引っかかるところもあるがそれでもバベル様は無事であるということが聞けた。
それだけで私は一気に安堵したのだろう。
ヘタっと腰が抜け、地面に座り込んでしまった。
「だ、大丈夫!?」
ボムボムプリン様が慌てたように確認する。
カイ様はにやにやと笑った。
「バベルの無事が知れて腰が抜けたか? …熱いね」
その言葉に私は顔を真っ赤にしてしまった。
ボムボムプリン様は何が? といった顔をしてカイ様に教えてもらおうとしていたがカイ様は適当にあしらった。
私は気恥ずかしさを誤魔化すように今目の前にある異様な光景について尋ねた




