渡し守カロン 11 ~終幕~
長かったカロン戦はこれにてお終い。
カロン戦色々と消化不良なので随時編集していきます。
「…わかりますか? マリアです。バベル様、私たちを守ってくれて、ありがとうございます。でももういいですよ…もう十分頑張りましたから」
無数の赤く濁る瞳に恐怖は感じなかった。
むしろその瞳のほうが怯えを滲ませていた。
だから私は優しく諭すように言った。
無数の瞳は微動だにせずこちらを見つめている。
しばらくその状態が続いていたが無数の瞳が瞬きを一斉にはじめ、眠そうに目を細める。
ゆっくりとバベル様の巨体が傾き始める。
それに合わせて無数の瞳が一つずつ閉じていく。
そしてバベル様の巨体がドロドロの黒い粘性のある流動体へと溶けていく。
私は落ちないように必死にしがみつきギュッと目を閉じる。
豪快にどろどろの流動体の中へと私は落下した。
流動体はほんのりと暖かく意外に心地よかった。
流動体がクッションとなり無傷で済んだ。
流動体から私は這い出て大きく深呼吸をし、息を整える。
少し落ち着いてから私はバベル様を探す。
どろどろの流動体のせいで上手く探すことが出来なかったが、もしかしてと思い流動体の中心部分に向かうと人影があった。
流動体に足をとられながらバベル様のところへと急いで向かう。
流動体からバベル様を引き摺りだす。
「バベル様! バベル様、大丈夫ですか!?」
バベル様の肩をゆすり、声をかける。
バベル様は目を開けなかったが、ゆっくりと規則的な呼吸をしていた。
バベル様の生存を確認し、ホッと一息つく。
ザブザブとこちらに近づく気配がする。
私は振り返るとそれはカロンたちであった。
「汝らに救いと安寧を」
カロンたちはそう言いオールを振り上げる。
ギュッとバベル様をかばうように抱き寄せる。
カロンたちが振り下ろすその瞬間、カロンたちの様子がおかしくなった。
カロンたちは信じられないといった表情で胸を押さえ、呼吸が速く激しくなる。
「おお…私の役目が…まだ、果たされてないのに…無念…」
そういうとカロンたちの全身は灰となり宙へと舞い散った。
「カイ様、ボムボムプリン様、やりましたね」
私は二人の健闘に感謝した。
「二人とも大丈夫か!? …大丈夫そうだね」
オマール様が慌てて私たちのところへ向かってきた。
「今、亡霊たちは煙幕のおかげでこちらの位置を見失っている。この間に隠れてしまおう!」
そう言うな否やオマール様はバベル様を担ぎ上げる。
「立てるか?」
「はい!」
私は立ち上がりオマール様の後へと続いた。
オマール様は片手でバベル様を担ぎ、もう片方の手で戦斧を扱い亡霊たちを振り払う。
煙幕が効いているのかこちらにやってくる亡霊の数が少ない。
私もまだ残っている煙幕弾を惜しむことなく豪勢に使う。
「マリア殿、あれを見ろ!」
オマール様が戦斧で先を示す。
私はそちらのほうを見る。
陸地が見えてきた。岸のすぐ近くには灰色の城壁がそびえたっていた。
「あれが…『冥界の砦』ですね」
誰に伝えようとしたわけでなく自然と口から漏れた。
「ああ…ようやくだ」
オマール様も感慨深く呟く。
しかし一つ疑問に思ったのはこの船はどうやって止まるのだろうか。
だんだんと岸に近づいているがスピードが緩む気配はなく、それどころかどんどん速くなっている。
「…もしかして」
「…もしかしなくても」
私とオマール様は慌てて丈夫そうなところにしがみついた。
船は止まることなく岸へとぶつかる。
衝撃が船全体に伝わる。
ミシミシと肉と骨が軋む音が大音響で伝わる。
「嘘だろ!」
オマール様は叫ぶ。
信じられないことに岸に突入したときの速度が速すぎたのか、そのまま船は岸に乗り上げ、陸を進む。
「このままだと城壁にぶつかります!」
「掴まれ!」
船は『冥界の砦』の城壁へとぶつかり破壊する。
そのまま船は『冥界の砦』内部の建物をなぎ倒しながら進み、船は横へと傾き倒れることでその暴走をようやく止めた。




