渡し守カロン 5 ~乱入者はいつだって面倒臭い~
巨大で真っ黒な卵のような形をした化け物。
それは卵の殻から触手が無数に生えている。
サイズは元の10倍以上に大きくなっている。
「…バベル様?」
バベル様にしては姿かたちが変わりすぎている。
信じられない。
「あれは何でござるか?」
「上から落ちてきたってことは…思い浮かぶのは一人しかいねえなあ」
カイ様も同じことを思いついたのだろうが半信半疑の口調であった。
その巨大な化け物は底冷えのする低い咆哮をあげる。
苦痛に耐える悲鳴にも似ていた。
それは音圧だけで船を震わせ、『魂の黄河』に波を起こさせていた。
化け物は剣のような形状をしている触手を大きく掲げカロンたちめがけて振り下ろす。
カロンたちは衝撃波を放ち迎え撃とうとしたがものともせずに衝撃波ごとカロンたちを叩き斬った。
いや叩き斬るというより叩き潰すという表現が相応しい。
その斬撃で船の一部が破損し、マストが折れ船から落下した。
「おいおい! あいつ船壊す気か!?」
「でも船ごとやっつけたでござらんか?」
本当に撃破できたのだろうか、いやそんな簡単ではなかった。
あの斬撃を受けカロンたちはバラバラになっていたのだろう。
しかしすぐに新しいカロンたちが元の数倍の数で船から生えてくる。
「あれ喰らってもだめなんですか?」
「簡単には終わらせてくれねえよな」
「やはり本体を叩くでござるか…魔力の流れはこの下でござる」
いつの間のにかカラフルなメガネを取り返していたボムボムプリン様が甲板いやその下を見て言った。
「私はオマール様の無事を確認してバベル様のサポートを致します。…うかうかしていると亡霊たちもやってきますので」
「あ、ちょっ、待っ!」
カイ様が何かを言う前に私は足早にバベル様の元へと向かう。
バベル様がどうしてあんな姿になってしまったのかはわからないが、バベル様は私たちのために戦っていると私は確信している。
だから私は彼の元へと向かうはなければならない。
それが私のやるべきことだと信じているから。
「わかっているんだろうな!」
「お主こそわかっているでござろうな?」
俺とボムボムプリンはお互い額を突き合わせて確認し合う。
お前、無駄に近いなと心の中で突っ込みを入れるがボムボムプリンにとってはこれが平常運転だ。
「亡霊たちは迫ってきている。あいつがこのまま好き勝手に暴れていたら俺たちもあぶねえ。カロンを撃破できなきゃ、ハデスは倒せねえ」
「つまり拙速を貴ぶ、ということでござるな! まかせるでござる!」
ボムボムプリンは俺が言わんとすることを察し、あのカラフル眼鏡を使い魔力の流れを追う。
俺も後に続いてボムボムプリンを追う。
ボムボムプリンは何かに気付いたのかハッとこちらのほうを振り向く。
「…戦闘は任せたでござる!」
グッと親指を立ててボムボムプリンはイケメンボイスで言う。
俺は中指を立てて答えた。
「少しは働け!」




