渡し守カロン 3 ~正体見つけたり~
「バベル様」
はるか上空を探すが見えるはずはない。
『鎧』の力を纏った状態でも至近距離で何度も喰らうのはまずいということは分かる。
バベル様なら大丈夫と自分に言い聞かせ、私は自分ができることを考える。
オマール様は盾を構えカロンたちと正面から対峙している。
カイ様は何とか立ち上がろうともがいている。
ボムボムプリン様はまだ地面に伏せている。
私は先にカイ様のところへ向かう。
カイ様に『ヒール』と併せて『ヒールポーション』を飲ませる。
カイ様はすぐに回復したのだろう。ガバッと立ち上がる。
「すまねえ、助かった」
「いえ、構いません」
カイ様は刀を抜き構える。
「オマールが『ロイヤルフォートレス』を発動したら突っ込む。…サポートとあのバカ起こすの頼む」
カイ様が手短に指示を出す。
頷き、ボムボムプリン様のところへと向かう。
ボムボムプリン様にも先ほどと同じようなことをする。
ボムボムプリン様もすぐに回復したが立ち上がろうとはしない。
私がいぶかしげに見ているとボムボムプリン様はポーチをごそごそと何かを探している。
「何をなさっているのですか?」
「何か…いいアイテムがないか探しているでござるよ」
「あるんですか!?」
私が期待で目を光らせているとボムボムプリン様はポーチから何かをかっこよく取り出す。
「タリラタッタラー…何にもない」
ろくなものも出なかった。
ボムボムプリン様は四つん這いとなって地面に伏せる。
私は何とも言えない感情に一瞬支配される。
多分心底冷たい目をしながら言った。
「…ふざけてないで、まじめにやってください」
「そんな目で見ないで! もう精一杯だから責めないで!」
ボムボムプリン様はジタバタと手足をバタつかせて文句を言っている。
時折ボムボムプリン様のように感情のまま行動することが羨ましいと思うことはあるが今は鬱陶しいことこの上ない。
「…煙幕弾でも閃光弾でも何でもいいのでやれることをやりましょう」
私はボムボムプリン様に一発喝をいれる。
ボムボムプリン様は頬を押さえながらコクコクと何度も頷いていた。
「『オールバインド』!」
オマール様の叫ぶ声が聞こえてくる。
カロンたちがまた衝撃波を放とうとしていた。
「ボムボムプリン様、行きますよ!」
まだ地面にしがみついているボムボムプリン様を引き剥がしながらカロンたちへと向かう。
『オールバインド』の効果でカロンたちはオマール様に引き付けられているはずだがあの広範囲の衝撃波には関係ないだろう。
私はポーチから閃光弾を取り出す。
「えい!」
思いっきりカロンたちへと投げつける。
どうせ、どこ投げてもどこかしらのカロンに当たるのだ。
思いっきりが大事。
閃光弾は上手くカロンたちの頭上へと向かう。その瞬間、炸裂音とともに眩い閃光を光らせる。
「効いてないでござる!」
ボムボムプリン様が叫ぶ。
眩い閃光の中どうして見えているのかわからないがカロンたちには効いていないらしい。
「どうして!」
「目と耳がないからでござるからか!?」
ボムボムプリン様が目一杯に叫ぶ。
そんなことでと思うも、なるほど確かにカロンたちには目がなかった。
「じゃあ、どうやって見えているのですか!」
「もしかしたらそれがカロン攻略の糸口…かもでござる」
何とも頼りない考察を聞いていると
「きゃあ!」
衝撃波が襲ってきた。
オマール様に向かって放たれた衝撃波のためか威力は少ないが吹き飛ぶには充分であった。
私は痛みをこらえ立ち上がる。
オマール様は盾を両手で持ち地面に突き刺して踏ん張っていた。
カイ様の姿が先ほどから見えない。
「カイ様はどちらに?」
「さてはあやつ逃げたでござるか!?」
ボムボムプリン様のたわ言をスルーしてカイ様を探す。
その時カイ様が他のカロンから離れていたカロンの後方から飛び上がって斬りかかろうとしていた。
「喰らいな! 『斬馬剣』!」
完全なる奇襲をカイ様が成功させ、カロンの首を華麗に斬り飛ばす。
これで一体減らしたと思ったのもつかの間
「嘘だろ!」
カイ様が怒鳴り声をあげる。
すぐさま新しいカロンが船に組み込まれていた人を材料に生えてきた。
そうやってカロンが増えたのかと吐き気を我慢しながら理解する。
そのカロンはオールを振り、カイ様を吹き飛ばす。
「カイ殿! …ぐっ!」
助けようとしたオマール様に向かって囲んでいたカロンたちは衝撃波を放つ。
オマール様は必死に耐えているがいつまで耐えられるかわからない。
新しいカロンの出現の仕方を見て私は一つの可能性を考えた。
私は残り一つの手投げ爆弾を甲板に向かって投げつける。
何という無駄使いをというボムボムプリン様の声をすさまじい悲鳴がかき消す。
その悲鳴は船から発せられたものだ。




