渡し守カロン 2 ~誰も悪くない~
振り絞られたオールから衝撃波が解き放たれ僕たちを襲う。
僕は咄嗟にマリアを抱きしめ衝撃波から守る。
「ぐっ!」
思いっきり壁に激突する。痛みが全身を巡る。
「バベル様!」
マリアが心配そうな顔を覗かせる。
「…大丈夫」
僕は苦痛に耐えながら言った。
他のみんなも同じようでカイとボムボムプリンは地面に倒れこんでいて呻いている。
オマールは足がふらついてはいるが何とか立ち上がる。
カロンはまた腰を限界まで回してオールを振り絞っている。
させるかと『鎧』の力を解放し一気にカロンへと迫る。
カロンへと斬撃を放つがオールで防がれる。
「ハッ!」
カロンが気合ともに衝撃波を放つ。
衝撃波に飛ばされまいと踏ん張るがカロンは連続で衝撃波を与えてくる。
反撃できない。
徐々に踏ん張りが利かなくなっていく。
飛ばされる、その瞬間爆発音が響く。
恐らくマリアがやったんだ。
カロンの態勢が崩れる。その隙につき、『退魔の剣』をカロンの胸を突き刺す。
「なっ! なんて不敬な…!」
カロンは驚愕な顔を見せ、すぐに灰となって消えた。
やってしまった、船の崩壊が始まる。そう思ったとき
「バベル様!」
マリアの声が響く。
それは不吉な響きだと直感した。
恐る恐る振り返ると多数のカロンに囲まれていた。
しわがれた笑い声が囲む。
カロンたちは計ったように息を合わせてオールを振り切る。
衝撃波が襲う。続けて第二波、さらに第三波を喰らう。
ふわりと地面から離れる感覚が襲う。
マリアの声が遠くから聞こえてくる。
気が付くとかなり上空まで飛ばされている。
視界の隅には亡霊たちがこちらに近づいてきているのを捉える。
タイムリミットは刻一刻と近づいている。
「さあ、時間がないぞ、兄弟。下にいる連中は皆殺しだろう」
言われなくてもわかっている。
「本当にそうか? 兄弟、お前はまだ恐れている。」
また異変が襲うかも。
「そうだろう。だがそれがどうした。お前は選ばれたんだ」
だから何に。
「身を焦がすような憎悪、はち切れんばかりの憤怒、血反吐を吐き出すほどの慟哭。その衝動ははち切れんばかりに膨らむが不幸なことにぶつける相手を奪われた」
ユダは質問に答えない。ただ一方的に話し続ける。
「誰も悪くない、なぜならよく知らないから。誰も悪くない、なぜならやられるほうにも理由があるから。誰も悪くない、なぜなら…免罪符としては魔法の言葉だな」
そう、魔法の言葉だ。
「なら、どうしたらいいんだ? 誰も悪くないなら、僕の、このっ…! 何にぶつければいいんだ!」
「そうだ、兄弟。…だからお前は選ばれた。後は答えるだけだ」
そうだ僕はまだ答えていない。
君は何がしたいと、君はまだ何も求めていないと『鎧』がそう囁く。
心の疼きとともに僕は答えた。




