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咎人たちの聖戦  作者: 白騎士58
第二章 冥界に手向ける鎮魂歌
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魂の行方

「ハデスの残りの魂は四つ。俺たちが分かっているのはそのうちの二つ。一つは『魂の黄河』で哀れな魂をハデスの元へ送る、渡し守カロン。もう一つは…ここから見えるかな? お、見える、見えるぞ。あれだ、あれ。『天と地をつなぐ螺旋階段』。あそこの天辺に安置されている遺体に入っている」


 カイがハデスの魂の在り処について説明している。


 その間もマリアはボムボムプリンのところで調合をせっせと学んでいる。

 所々でボムボムプリンがちょっかいを出しているがマリアはそれを華麗にスルーしているか情け容赦なくバッサリと斬り捨てている。


 僕はカイの説明を聞き、疑問に思ったことを尋ねる。


「残りの二つはどこにあるのかわかる?」

「うーん。分かっているのは残り二つはモンスターに魂を入れているわけではなくハデスの関わりのある品に入れてある…そうだ。それがわかんねえと意味ねえよなー」


 カイがお手上げといった感じで頭を掻く。本当にわからないらしい。


「私たちもできる限り情報を集めたがそれくらいしかわからなかった」


 オマールもお手上げといった感じで両手をあげる。


「…心当たりならあるぞ」


 ユダがここで口をはさむ。

 その言葉にカイとオマールは食いつく。


「えっ! まじで! 教えてくれね?」

「心当たり程度だが…一つは『忘却の椅子』だろうな」

「『忘却の椅子」?」


 聞いたこともない単語にオマールが聞き返す。


「そう『忘却の椅子』。ハデスの最愛の妻ペルセポネ、あれは人間でな。結婚直前だったのをハデスがその美貌に一目ぼれして強奪したらしい。もちろん旦那になる男は激怒し奪い返そうと冥界へと向かった。神妙なことにハデスはその男に対し、謝罪を含めた宴を催した。男はそのハデスの態度に気分を良くしたのか宴に出向いたのさ。…すべては仕掛けられた罠だった。男が不用心に座った椅子、それが『忘却の椅子』。男は何もかも、愛するペルセポネすらも忘れ、ただ椅子に座る人形になっちまったのさ。ハデスはペルセポネからその男を忘れさせるため、みじめな男のありさまを見せつけたのさ。諦めさせるためかペルセポネは自殺するまでずーーーーとその様を見せ続けていたらしい」


 ユダは愉快そうに笑いながら一気に話した。

 この話のどこにも愉快なところはなかったが。


 カイとオマール、ボムボムプリンはかなり引いていた。マリアは悲しそうな顔をしていた。


「そんな目にあうなんて…あんまりです」


 マリアが辛そうに言った。

 ペルセポネと男の運命のあまりの残酷さに同情をせざるを得なかった。


「ふん、人間のくせに神に無策で挑んだんだ。こんな結末になるのはわかりきっていることだ」


 ユダが容赦なくバッサリと斬り捨てた。


「それは…あんまりでは…」


 あまりにひどい物言いにさすがにオマールが反論しようとしたときにマリアが立ち上がる。


「どうして、そんな風に言うのですか!? 二人は力の限り運命に抗おうとしただけなんですよ!」


 マリアが感情のままに怒鳴る。

 マリアがこれほどまで感情にむき出しにするのは初めてだ。


 マリアのあまりの剣幕にオマールとカイは黙ったまま小さくなっている。

 別にあなたたちが怒られているわけではないけれどそうなる気持ちはわかる。


「ふん! お気楽な奴だな。…お前との会話は疲れる」

「な、なんですって…」


 マリアがまだ噛みつこうとする。

 僕はそんなマリアをなだめる。


「マリア、気にするな。ユダはこういう言い方しかできないからいちいち反応するな」

「でも…バベル様」


 マリアは納得していない顔をしていたが、しぶしぶ引き下がる。


「さすが、兄弟。女の扱いが上手い」


 ユダが愉快そうに言う。


「ユダ、あんま調子乗るな!」


 僕はユダへと怒鳴る。

 全面的に悪いのはユダ。


 ユダはちっと舌打ちを打った。


「はいはい…もう一つの心当たりは、ハデスの持ち物ではないが…恐らく、ペルセポネの手鏡だ。あの変態野郎はその手鏡に自分の魂を入れているだろう。…いつまでもペルセポネとともにいるという反吐が出るような思いでな」


 話を聞く限りハデスはかなり性格が歪んでいるようだ。

 

「なるほど…『忘却の椅子』、ペルセポネの手鏡…確かにこの二つが可能性としては高そうだな。どこにあるんだ?」

「どちらも『冥府の砦』にある。…どちらにしろそこにいくんだろ?」

「…当面の目標は渡し守カロンの撃破。そいつを倒さない限り『冥府の砦』には行けない」


 オマールが確認するように言った。

 カイは同意するように頷く。


「やることは決まった!」


 カイがパンっと一本締めしてまとめる。

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