やったな 2 ~許さん~
トラックと衝突したような衝撃が伝わる。
速度を緩めず粘着性の流動体を横へと広げ側方からの攻撃を防ぎながら突進を続ける。
水の中を歩いているように足取りが重い。
呪詛をまき散らしながら亡霊たちはしつこく攻撃を繰り返している。
まだ突破できないのか?
あと少しなのか?
このまま飲み込まれてしまうのか?
嫌な考えばかりポンポン浮かんでくる。
カイとボムボムプリン、オマールは両手を合わせ必死に祈っていた。
マリアは悲鳴を押し殺すように僕にしがみついていた。
弱気になるなと自身を叱りつけ一歩一歩、力強く前へと進む。
その時急に重さが抜ける。
それを感じるとともにすぐに前方にまとめていた粘着性の流動体を解除し後方へと大きく広げながら流す。
やはり囲みを抜けていた。
後方へと流した粘着性の流動体を壁代わりにし、亡霊たちの攻撃を防ぎながら一気に協会まで駆け抜ける。
というよりも滑り込むか。
教会の扉を蹴破り、四人を先に中へと放り込む。
亡霊が教会に入り込もうと津波のように迫る。
入り込む瞬間に僕は扉を閉めた。
ガシャンっと激しく音をたてたが扉はビクともしない。
扉を破壊しようとする音が聞こえるが、それもしばらくしたら聞こえなくなり静寂が支配した。
カイとボムボムプリンは生き残った喜びを叫びながらお互い抱きしめ合った。
オマールはその後ろで両ひざを地面につけ呆けていた。
涙目のマリアが僕に近寄り抱きついた。
「ありがとうございます! バベル様! …無理していませんか?」
思わず僕はそんなマリアを軽く抱きしめる。
「…大丈夫、気にするな」
マリアにそう優しく耳元で呟いた。
「…いいな」
「…うらやましい。ゴホン! 羨ましくないぞ、羨ましくないぞ」
「…爆発しろ!」
ズッコケ三人組の恨みがかった視線を受け僕とマリアは慌てて離れる。
その時胸が締め付けられるような激しい痛みに襲われた。
それはどんどん強くなり鼓動がハッキリと痛いほど頭に響く。
咄嗟に胸を押さえる。
息が荒くなる。
マリアは僕のそんな様子を見て心配そうにのぞき込む。
「どうされましたか? どこか怪我をされましたか?」
痛みに悶えているのを気付かれるのが嫌で顔を背ける。
マリアが何かを言おうとしたときオマールが歩み寄る。
「バベル殿、数々の勇気ある行動、騎士として尊敬する。ありがとう! …その、今言うのは何だと思うかもしれないが…その…」
オマールは歯切れが悪そうだった。
僕はその調子を見て何事かと思ったが、カイがそれに答える。
「こいつ、明日リアルで重要なプレゼン…用事があるみたいで。でもこいつ設定は騎士だろ? 言い辛いんだよ」
オマールのその設定はどこまでも忠実に再現したいみたいだ。
その意地は大したもだと讃える。
オマールは恥ずかしそうに俯いている。
「吾輩も明日朝早いでござるよー」
ボムボムプリンも用事があるようだ。
「いや、本当今日はまじで助かった! お前がいなかったらケロべロスを倒すどころか殺されていた…ありがとう」
カイが微笑みながら僕の肩に手を置き優しく言った。
痛みを耐えて黙っている僕に何か感じたのかカイはカカッと笑った。
「褒められ慣れてねえなあ、お前! …明日夜8時からでいいか?」
カイは僕とオマール、ボムボムプリンに向かって言った。
「了解!」
「かしこまり!」
言うや否や彼らはそそくさとログアウトする準備を始める。
ようやく痛みが引いてきた。
あれは一体何だったんだろう。
みんなにばれないよう息を整える。
「みなさま…」
「マリアちゃん! 会えないのは寂しいけどほんの少しだから」
「吾輩に会えずとも泣かないでござるよ」
ボムボムプリンが前髪を流しながら低く滑らかな声でいった。
「あ! それはないので心配しないでください」
マリアが満面の笑みですっぱりと斬った。
ボムボムプリンは真っ二つに心が斬られながらログアウトする。
カイはその様子を見て苦笑しながらログアウトする。
オマールは起立敬礼しながらログアウトする。
大分よくなったと思い、僕はマリアのほうに少しだけ顔を見せる。
「少しだけだから」
「…はい、待っています」
マリアは頷き、にっこりと微笑んだ。
その笑顔に送られながら僕はログアウトした。




