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咎人たちの聖戦  作者: 白騎士58
第二章 冥界に手向ける鎮魂歌
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ケロべロス

「真ん中の頭が火、左が氷、右が雷。それぞれの頭がそれぞれで自己判断するでござる。皮膚が鋼鉄のように固くてこちらの攻撃がほとんど通らなかったでござる。図体はでかいくせに機敏な動きに注意。これぐらいですかな」

「説明ご苦労」


 ボムボムプリンの話を聞き、ユダが素っ気ない感想を述べる。

 ボムボムプリンの話を聞く限り攻守ともにかなり隙がなさそうであった。


「…最初から『鎧』の力を使うべきか」


 僕は小さく呟く。

 マリアはその言葉が聞こえたのか一瞬暗い顔を見せる。


「そうだな、兄弟。出し惜しみはいけない、最初から全力で行くべきだ」


 ユダが嬉しそうに言う。ユダは僕が『鎧』の力を積極的に使うことを望んでいる。

 そこには悪意などはないと思いたい。


「…バベル様、無理なさらないでください」


 マリアは心配そうに僕の顔を覗き込む。

 マリアを安心させるようにはにかむ。


「大丈夫…無理はしない」


 マリアはまだ何か言いたげな顔をしたがそれはカイによって阻まれた。


「しっ! そろそろケロべロスの住処だ。…寝ているといいんだがな」


 カイの言う通りそろそろケロべロスの住処に近づいているのだろう。先導しているカイとオマールの緊張が背中越しからでも高まっている。


 ケロべロスの住処は『冥府の墓場』を超えた丘の先、南に向かって徒歩で10分くらいであった。


 地面は先ほどから何かの骨で埋め尽くされ、音を立てずに歩くこと自体難しかった。


 僕たちは自然無言となった。


 パキ、パキと骨を踏む音だけが静かに響く。


 少しずつだが低く重量感のある息遣いが聞こえてくる。

 その息遣いはリズム感があった。


 カイがにやりとこちらに向かって笑った。


「やっこさん、寝てるぜ」


 カイのにやけ顔が止まっていない。ボムボムプリンが大きく頷く。


「ならば吾輩の特製の爆弾を目覚まし時計の代わりに使ってやりましょう」


 ボムボムプリンとカイが悪い顔をしている。

 先ほどまでの緊張感が嘘のように和らいでいる。


「カイ殿、ボムボムプリン殿、油断なさるな。寝ているかどうかはまだわからない」


 流石、真面目なオマールは二人をやんわりとたしなめた。


「わかっているよ。ちょっと期待しただけだ」


 カイがすぐに気を引き締めなおす。


 周囲と比べてクレーターのようにへこんだ部分が見えてきた。

 その底の部分に深い寝息を立てている巨大な獣がいた。


 体長は優に8メートルは超すであろう。

 頭はしっかりと三つあり、ドーベルマンによく似ていた。


 全身はほかの色の混在を許さないほど真っ黒な毛皮に包まれていた。


 間違いなくあれがケロべロスだろう。

 ケロべロスは無警戒と思うほどに無防備に寝ている。


 カイとボムボムプリンはお互いガッツポーズをする。


「俺とこいつで爆弾を仕掛けてくる。起爆とともにケロべロスに攻撃を仕掛ける。これでいくぞ」


 カイが手早く作戦を説明した。作戦というかぶっつけ本番というのが正しい。


「大丈夫ですか?」


 マリアが心配そうに尋ねる。


「ノープロブレム。マリアたんは吾輩の勇姿をそこで見ているでござるよ!」


 ボムボムプリンがかっこよくポーズを決めるが、マリアは見ていなかった。


 カイとボムボムプリンは慎重に音を立てないように降りていく。

 二人は最初にケロべロスの後ろ側に爆弾をいくつか置いていく。


 爆弾は樽のようなもので大きさはドラム缶ぐらいあった。

 あの小さなポーチのどこに入れてあったのかを不思議に思いながら二人の作業を見守っていく。


「バベル殿、我らは起爆と同時に素早く降りよう。…すぐに助太刀しないとまずいかもしれない」


 オマールが僕に耳打ちする。

 僕はその意見に同意するように首を縦に振る。二人はケロべロスの頭のほうに爆弾を仕掛けていた。


「今、動きませんでした?」


 マリアが恐ろしいことをさらりと言った。


 僕とオマールは注意深くケロべロスを見た。

 確かにピクリと左の頭が動いたような気がした。

 僕は慌てて二人に教えようとしたがオマールが制止した。


「バベル殿! 少し待ったほうがいい。ただの寝相かもしれない。ここは慎重に」


 オマールのその言葉で僕は二人に声をかけるのをやめた。


 ケロべロスは動く気配はなく、順調に二人は爆弾を設置し終えた。

 頭の動きはただの寝相だったらしい。


 僕たちはホッと胸をなでおろした。


 二人はケロべロスから離れて、カイがこちらに向かって大きく手を振る。僕たちも同じように振った。

 

 ボムボムプリンが天高く両手をあげ、指で十を数え始めた。


 オマールは盾と戦斧を構え、降りる準備をする。


 僕は『鎧』に集中する。

 全身が『鎧』の内側から侵食されるような感覚が襲う。

 虫が這うような感覚は慣れることが出来るのだろうか、そんなことをぼんやりと思った。


 準備はできた。


 あと二秒で起爆される。


 腹に響く重低音の爆発とともに炎が空まで届く。


 僕とオマールは爆風をものともせず突っ込んでいく。


 獰猛で重低音の咆哮が爆炎を打ち消し、そこには無傷のケロべロスがいた。

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