行動指針は決まりました
ユダは不機嫌そうに言う。
意外に幽霊と言われるのは嫌らしい。
「あー、この鎧から声が聞こえている…と思います」
一部正しくはないが補足する。
カイとオマールは僕が着ている鎧を見る。
「わ!」
唐突にユダが大きな声を出す。
二人は意表を突かれ、カイは仰け反りオマールは腰が抜け尻もちをついた。
オマールが意外にビビりであることが分かった。
ユダはその様子を見てケタケタと笑っていた。
「こ、この野郎! …ごほん、お見苦しいところを見せてすまぬ」
オマールが騎士の設定を一瞬忘れたのは突っ込まないほうがいいだろう。
これまでの経緯をかいつまんで説明した。
もちろんあのことはしゃべらない。
何て説明したらいいかもわからないからと心の中で言い訳をする。
「お前、すっげえな! 誰もできなかった神の討伐をしたんだぜ!」
カイが興奮している。
オマールも甲冑を着こんでいるため表情はわからないが興奮しているようだ。
「カイ殿! ハデス討伐も夢ではないかもしれないぞ」
「ああ、そうだな、そうだよ!」
二人は希望が見えてきたのか笑い合っていた。
「けど僕が倒したのは神の中でも最弱なアフロディーテ。ハデスは神の中でも上位ですよね?」
僕は手放しで喜べない。
なぜ彼らはハデスを狙ったのだろうか。
「まあ、そう心配するのもわかる。俺らがハデスを狙ったのはワンチャン、ハデスと戦闘しなくていいからだ」
それがどういう意味なのか分からず僕は首をかしげる。
オマールがそれについて説明した。
「つまりハデスと戦闘せずに分割された魂だけをすべて破壊することでハデスを倒すことが出来る」
「なるほど、だからお前たちはハデスを狙ったのだな…ただのズッコケ三人組ではなさそうだな」
ユダが感心したように言った。
まず魂が五つに分割されていること、次にそのうちの三つを把握していること
これら情報を集めるのはかなり苦労したであろう。
彼らが意外に優秀であることを理解した。
「流石です」
心からほめたたえた。
「はっはっはー! もっと讃えてくれてもいいだぜ!」
カイは背中をそり返し、胸をあらん限り張り上げ、鼻は天高く伸びていた。
「うーむ、カイ殿。そういうところがなければバベル殿たちは素直に尊敬するのに…」
オマールはヤレヤレといった感じで首を振る。
「…とりあえずはケロべロスを討伐しますか?」
カイは伸びきった鼻をしまい神妙な顔をして頷く。
「そうだな…仇討ちも含めて、な」
オマールも頷く。
彼らにとってケロべロスはハデス討伐のためだけではなく不運によって亡くなった仲間たちの弔いも含まれている。
彼らの雰囲気は強く固く張り詰めていく。
その雰囲気に当てられたわけではないが僕も気持ちを引き締める。
なんていったって神話に出てくるモンスターだ。
生半可な戦いにはならないだろう。




