ベタな不死身設定
先ほどの戦闘でボムボムプリンがあまり役に立ってない理由が分かった。
錬金術師とは珍しい。
通常、調合を行うとき素材が必要である。
高度の調合になればなるほど素材の数、質は要求される。
閃光弾や煙幕弾、地雷などは上級に分類されこれらを調合するならかなりの数の上質な素材が必要であり、集める段階で困難を極める。
しかし錬金術師は調合専門の職業では最高位。
その恩恵としては調合を行う際の素材の数が減る。最大4分の1に減らすことが出来る。
そして素材の質が低かろうが同じ分類に属するならそれで調合を代用できるというとんでもない能力がある。
こんなにもすごい能力を持つ錬金術師がなぜ珍しいかというと戦闘のスキルがほぼゼロ。
このゲームではモンスターとの戦闘は必須であり、そして職業は一人一つまでである。
僕の職業は前にも言った通り傭兵である。
傭兵は一言で言えば器用貧乏。
色んな事が出来るが何か特筆する能力があるわけではない。
しかしソロプレイでは色んな事が出来たほうがいい。
錬金術師は戦闘ではほぼ役には立たない。
武器を持っていたとしてもまともに扱うことが出来ない。
調合専門にしようとしても敢えてその一つ前か二つ前の技工士か鍛冶屋までにしている人たちのほうが多い。
だから錬金術師は珍しいのである。
「まあ、吾輩、戦うのが怖いから錬金術師にしているだけでござるけどね」
テヘペロとボムボムプリンは全くかわいくない、不愉快なポーズをした。
しかし錬金術師の職業を持つものから調合を学ぶのはマリアにとって悪くない。
「…マリア、納得できないだろうがボムボムプリンから調合を学んでくれ」
マリアが明らかに嫌そうな顔をする。
マリア、感情はなるべく隠してあげて。ボムボムプリンが涙目になっているよ。
「…わかりました。ボムボムプリン様、よろしくお願いします」
マリアが仕方なくといった感じでボムボムプリンに頭を下げる。
「よろしい、よろしい! では調合の神髄を教えて差し上げよう!」
ボムボムプリンが気をよくしたのか胸を張る。
意外にボムボムプリンがまじめに教えているのを確認して、僕はカイに近寄った。
「えっと確か…ロキ、パプリカ、シャチクはどうしていますか? 今日はオンしてないんですか?」
訊いてからしまったと思った。
カイの表情が固まる。
それで僕はすべてを悟ってしまった。
カイは気にするなといったように首を振りここまでの経緯を話し始めた。
「ロキはあの『遠征』でゲームオーバーになった。…察しの通り、『死に戻れる彼岸花』で冥界にやってきた。やってきたはいいが運悪くケロべロスの近くでな。ケロべロスとの戦闘でパプリカ、シャチクはゲームオーバーになった。パプリカは消し炭、シャチクは踏みつぶされてアイテムの回収はできなかった」
カイが悔しそうに言った。
ゲームオーバーになった仲間のアイテムを回収するという行為は形見を回収するのと同じ意味を持つ。
それが出来なかった。
かなり長く組んでいた仲間としてはこれほど悔しいことはないだろう。
「お前たちはケロべロスを討伐するんだろう? 俺たちも手伝うぜ!」
カイがそう力強く言った。
オマールもいつの間にか近くにいてうんうんと頷いている。
「いや、僕たちはケロべロスを回避してハデスのところへ向かおうと思っていました」
彼らの気持ちはわかるし一緒に討伐したいが、当初の目標を述べる。
オマールが驚いたように言った。
「カイ殿、もしかしたら彼はわかっていないかもしれないぞ」
「…もしかしたらじゃなくて知らないだろうな」
カイがはーっとため息をついた。
どういうことだと困惑した。
ケロべロスを討伐することがそんなに重要なことだろうか。
カイがその疑問にすぐに答えた。
「いいか、ハデスは冥界の支配者だ。奴を殺したいってやつはごまんといる。だから対抗するためハデスは自分の魂を五つに分けた。空っぽの肉体にどれだけダメージを与えてもハデスは死なない。ハデスを殺すにはその五つの魂を破壊するしかない。俺たちはそのうちの三つを知っている。…もう言いたいことはわかるだろう」
「まさか…一つは、ケロべロスにあるのか」
カイは正解というように指を鳴らす。
「うむ、その通り。ケロべロスとの戦闘は絶対に避けては通れない」
オマールがカイの後を引き継いで答える。
「ハデスめ…魂を分けるだと。前はそんなことしていなかったのに」
ユダが苦虫を嚙み潰すように呟いた。
「…そう言えばこの声はどこから聞こえているんだ?」
カイが肩をすくませながら辺りを伺う。
「バベル殿は、ゆ、幽霊でもつかれているのか!?」
オマールは声を震わせながら言った。
幽霊に憑かれているという表現は一部正しいかもしれない。
「幽霊とは失敬だな。ここだ」




