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咎人たちの聖戦  作者: 白騎士58
第二章 冥界に手向ける鎮魂歌
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二人の会話

今回は軽めです。

 時は幾分遡る


「バベル様! 一体全体どうしたらいいのですか!?」


 隣に座っていたマリアが何回目かの同じ質問をしてきた。


 アフロディーテ撃破後、僕たちは『死に戻りの樹海』へ向かい、そこのセーフティーエリアで休んでいた。


 道中、マリアが調合を学びたいのとアイテムの管理・回収もしたいと提案してきた。


 これは正直とても有難かった。

 今まではすべて一人でやってきたが正直面倒くさいことこの上なかった。


 マリアのほうからそれをやってくれるというなら喜んでやってもらおうじゃないか。


 ということで、マリアに調合を教えているのだが…

 初心者であるマリアの練習として初級の回復ポーションの調合をさせているが、何度も失敗している。


 プレイヤーである咎人ならば誰でもできる調合がなぜかマリアにはできない。


 これは恐らく本人の才能ではなくゲーム上の仕様なのではないか。

 そうなるとNPC、ノンプレイヤーキャラでは調合が出来ないのか? 

 スキルは決まってしまっているのか?

 スキルの獲得方法は僕たちプレイヤーと同じだろうか?


 神聖魔法が使えるのだからスキルという概念はNPCにもあるのだろう。


 思案に暮れている最中もマリアは四苦八苦していた。


 ボンっという音とともに黒煙が上がる。

 隣からなぜ、どうしてという悲鳴に近い声が聞こえてくる。


 このまま続けていけば経験値がたまり調合のスキルが自然に獲得できる、という雰囲気はなさそう。


 不意に一つ方法を思い浮かんだ。

 確かめてみるかとマリアの後ろに回り背後からマリアの手を握る。


「ひゃあ! バ、バベル様! い、いきなりですか!? べ、別に嫌いではないですが…」


 マリアがしどろもどろに呟く。

 何をそんなに顔を真っ赤にしているのかわからない。


 構わずマリアに説明する。


「この状態で一回調合してみよう」


 マリアはポカンと口を開けていた。


「そうですよねー…バベル様ってそうですよねー」


 マリアが急に不機嫌になる。

 僕が何をしたというんだ。


 マリアはまだぶつぶつ文句を言っていたが相手にせず話を先に進める。


「とりあえず、マリアは僕の動きに合わせて。両手はそう、円を作るように。集中して。今作った円の中でポーションを調合するイメージを」


 マリアに指示をしながら、マリアの両手に重ねるように魔力をためる。


 ポンっとポーションが出現した。

 初の成功でマリアが喜んでいるが、実際はほぼ僕のスキルでやれたのだがあまりにも本人がうれしそうなので言わないことにした。


「じゃあ、次はマリア一人でやってみて」

「え! わ、わかりました。やってみます」


 マリアはぎゅっとこぶしを握りる。

 少しは自信になったようだ。


 マリアは集中し、調合を始める。

 先ほどと同じくポンっという音とともにポーションが出現した。


「や、やりました! バベル様見てください!」


 マリアが嬉しそうに華やかな笑顔を見せてきた。

 やはり思った通りスキルの達成条件はプレイヤーとNPCで違うらしい。


 プレイヤーはモンスターを倒したなどの経験値でスキルを割り振っていくが、NPCは実際に自分で経験することによりスキルを獲得するみたいだ。


 しかし獲得条件、厳しすぎやしないか。

 これじゃあ自分でスキルなんて獲得できないのと同じじゃないか。


 NPCがこの世界で生きていくのは大変であることを再認識する。

 マリアは調子に乗って次々にポーションを作っている。

 …素材はたくさん余っているから別にいいけど。


「そう言えば『魔法の宝帯』はどうですか?」


 マリアがついでのように『魔法の宝帯』について訊く。


 アフロディーテ撃破後入手した『魔法の宝帯』。


 あの絶大な幻覚の力が使えるのかと最初期待した。

 これからの戦闘が一気に楽になると思ったがそんなに都合の良いことはなかった。


「本来の持ち主じゃないと効果を発揮できないみたいだ…できることはこれだけだ」


 『魔法の宝帯』を右手に持ち念じると、僕が二人に増えた。


 マリアが目を見張る。


 僕はすぐに『魔法の宝帯』の効果を消す。少しの間しか使用してないが右手に僅かなしびれを感じる。


「…要はデコイとして相手に自分の幻影を見せる。それだけだ」

「そう、なんですね。でもすごい事じゃないですか!」


 僕の表情が曇っていたためかマリアが慰めてくれる。


 マリアに向かって『魔法の宝帯』を無造作に投げる。

 マリアは慌ててキャッチする。


「やる」

「え! …で、でもこれはバベル様が持っていたほうが…」

「僕よりマリアのほうが有効活用できると思ったからマリアに渡した。…それでいいね」


 マリアの話を遮るように僕は有無を言わせなかった。

 マリアに渡した理由は二つ。


 一つはデコイとして機能する『魔法の宝帯』はマリアを危険から守ってくれるかもしれないと思ったから。

 あと一つが最大の理由であるが、マリアに言わなくてもいいだろう。


 マリアはしばらく僕と『魔法の宝帯』を交互に見合い、不承不承といった顔で受け取った。


「…最初のプレゼントが非常に実務的です」


 マリアが何かを呟いたが、小声すぎて聞こえなかった。

 そんな不満顔で頬を膨らませているマリアにもう一つプレゼントを渡した。


「あともう一つ。これもやる」


 短剣をポーチから取り出しマリアに渡す。マリアは、今度は素直に受け取った。


「これは幸運の短剣。ずっと僕を守ってくれた短剣。きっとマリアも守ってくれる」

「そ、そんな大事なものを。ありがとうございます、大切にしますね」


 マリアはにっこりと微笑み大事そうに胸に抱える。


 マリアに渡した短剣は『小英雄の短剣』といい、小さいながら切れ味はよく耐久性も高いため初心者でも扱いやすい。


 『小英雄の短剣』は『アクレシアポリス』や色んなところで危機を救ってくれた幸運の短剣でもある。

 マリアに渡しておいて損はないだろう。


 僕はふと疑問に思っていたことをマリアに尋ねる。


「いいのか? 『アクレシアポリス』に残らなくて。辛い旅になるぞ」


 アフロディーテ亡き後の『アクレシアポリス』はその存在意義を支配者とともに失くしたようで、荘厳さを誇っていた金色の城は崩壊を始めた。


 残ったのは崩壊に巻き込まれ破壊され尽くされた街だけであった。


 それでも都市を囲う城壁は無傷のままでそのまま都市に残っていたら外敵からの脅威は十分に防ぐことはでき、比較的安全に過ごすことが出来るだろう。

 何より神による理不尽な仕打ちに怯えて過ごすことはない。


 そんな僕の気づかいを横目にマリアは不思議そうに僕の顔を見上げていた。


 ふふっとマリアは微笑む。心配して言ったのにと少しムッとした。


 へそを曲げかけた僕を見てマリアは微笑むのをやめたが、その顔は未だにほころんでいた。


「いいんです。バベル様のお側にいると決めましたから。どんなにつらいことが待っていてもバベル様と一緒なら大丈夫です」


 面と向かってそう言うことを言うんじゃあない。

 自分の顔が赤くなっているのがばれないように顔を背ける。


「兄弟、良い雰囲気のところ邪魔して悪いがそろそろ出発したほうがいいんじゃないか? 時間が迫っている」

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