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咎人たちの聖戦  作者: 白騎士58
第一章 女神の讃美歌
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リベンジマッチ

 大窓には病める者に慈愛の眼差しを向けるあるローブを羽織ったある男性を描いたステンドグラスがはめ込まれている。


 祭壇の上には数多の天使たちに迎えられたステンドグラスに描かれたのと恐らく同じ男性の銅像が飾ってある。


 大聖堂入ってすぐの荘厳なる礼拝堂の広場で、僕たちは不遜にも神を討つ準備を黙々としていた。


「ここは神の永遠の栄光を讃える場所です。まさか神を討つ場所になるとは思いませんでしたが」


 マリアが呟いた。

 短い時間の間にマリアの価値観ががらりと変わることが起こっているのだ。

 そんな感慨がつい出てしまうのも仕方がないだろう。


「ここは…今日、この日から…神に対価を払ってもらう場所になる」

「兄弟、その意気だ。まずはアフロディーテを血祭りにあげる」


 その時、大聖堂の扉が弾け飛ぶ。扉は長椅子を蹴散らし、地面にバウンドしながらそのまま銅像を破壊し外へと飛んで行った。


 マリアは短い悲鳴をあげる。


「…派手なご登場だな」


 不思議なのはアフロディーテの攻撃ではあの大きな扉を吹き飛ばすことはできないはずだが。


 舞い上がった土煙を振り払うように出てきたのは


 巨大な分厚い二本の角、異常に前足が後足と比べ肥大化しており、身体のサイズは一戸建てくらい


 そんな牛に似たモンスターが雄叫びをあげながら出現した。


「どう? 驚いたでしょう。この子は私のお気に入りのペットのモーちゃん。たまには運動させないとね」


 モーちゃんと呼ばれたモンスターの脇からひょっこりとアフロディーテが出てくる。

 アフロディーテは愛おしそうにモーちゃんの頭をなでる。

 モーちゃんも甘えたような唸り声をあげる。


「あら、イメチェンした? …まあいいわ、モーちゃん楽しめるかしら? まあ、一方的な蹂躙も見ていて楽しいから良しとしましょうか」


 アフロディーテは勝ち誇ったように嘲笑う。


「ふん。奴はもう勝った気でいるぞ。兄弟、くどいと思うがこの鎧は感情、特に憎悪によって力が増す…憎悪を絶やすなよ」


 ユダが僕に囁く。

 憎悪を絶やすな? あの時、あの瞬間、あの錆びついたドアを開けてしまったときから僕の憎悪は絶えることがなかった。


「マリア、下がっていろ」

「わかりました。ご武運を」


 マリアは下がり、物陰へと隠れた。


 モーちゃんは咆哮をあげる、ただそれだけで大聖堂全体が振動し、ヒビがあちこちに出来る。

 戦う前に大聖堂が崩れそうだ。


 いきなりモーちゃんは僕に向かって突撃を始める。

 モーちゃんが僕に激突する直前で床が爆発する。

 モーちゃんは突然の爆発で動きを緩める。


 簡易地雷を事前に仕込んでいたのだ。


 その隙を見逃さずモーちゃんに向かって飛び上がり、頭へと斬撃を叩き込む。が、モーちゃんは見た目に反し器用に巨大な角で防いだ。


 そのままモーちゃんは首をひねり、僕を吹き飛ばす。


 空中で態勢を整え着地する。


 モーちゃんは歪な前腕を振り上げ、僕を殴り潰そうとする。


 避けきれない、迫りくる拳を剣で受け止める。

 凄まじい衝撃が全身を駆け巡り、そのまま地面にまで浸透し、鈍い破裂音とともに地面が抉れた。

 じりじりと拳が迫ってくる。このままでは、じき圧し潰される。

 半ば叫び声のような雄叫びをあげ力を振り絞り押し返す。

 しかし押し返したのは一瞬ですぐに押され始める。


 くそったれめ、恐らくモーちゃんは力を入れたり抜いたりして弄んでいる。


 突然爆発音が頭上で響き、煙幕が辺り一面を包む。


 それはマリアに持たせていた煙幕弾だった。


 突然の煙幕で僕をつぶそうとする拳の力が緩んだ。


 僕はすぐに拘束から逃れ、距離をとる。


 マリアが僕に駆け寄ってくる。


「バベル様、ご無事ですか!?」

「いいタイミングだった。助かった」

「いえ、お力になれてよかったです。回復は致しますか?」

「まだ大丈夫。マリア下がっていて、そろそろ来るぞ」

「わかりました。バベル様、お気を付けください」


 マリアはまた物陰へと隠れた。


 彼女には安全な場所から援護するように頼んでいる。少し心配だったがその判断は正しかったようだ。


 モーちゃんは咆哮をあげ、歪な前腕を振り回し煙幕を払いのける。


「兄弟…足りないぞ。それじゃ力負けするのも当たり前だな」

 

 ユダが吞気に僕にしゃべりかけてくる。


「今、お前の相手をしている暇はない!」


 僕は剣を構え、モーちゃんと対峙する。


「…そうか、じゃあ、勝手にしゃべらせてもらうぞ。まずお前は恐れている、訳の分からない力に身を任せることを。それじゃあ、鎧の力を、俺の力を引き出すことはできないぞ」


 モーちゃんの攻撃をなんとか避けながらユダの意地悪そうな声がするが、巨大な岩のような拳の嵐を潜り抜けるので精一杯だ。


「わかっているぞ、兄弟。まだお前は鎧の力がわかってない。だから身も心も託すのは怖いよな。だから出血大サービスだ…俺が直々に力を引き出してやるよ」

「え! 何だって!」


 必死に避けることに夢中になって聞き逃してしまった。

 その時、瓦礫に躓いてしまった。


 しまったと思った瞬間正面からもろに攻撃を受けてしまった。


「バベル様!」


 マリアの叫ぶ声がえらくスローモーションに聞こえる。

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