アドルメア
道中、モンスターを撃破しつつちょっとした人数がはいれそうな広場に出た。
ここは祈りをささげる場所だろうか。穏やかな笑みをたたえる女神の像がある。
「もう少しで『憎悪は呪い』に辿り着けます」
「…マリア。あれがそうか?」
マリアが首をかしげていた。
マリアが不思議がるのも仕方のないことだろう。
この広場にはパッと見は、何もいないからだ。
しかしよく見ると女神像の近くで空気が歪んでいる。そしておまけにそこから魔力が漏れてでている。 これは『透明化』の魔法だ。
しかし使い手が雑な性格のためすぐ見つけることができた。
「女神像の辺りをよく見て。歪んで見えると思う」
マリアが僕の助言に従い、目を凝らしている。
「た、確かに歪んでいますね。気付きませんでした」
「やっぱりあれがアドルメアかな?」
「恐らく、そうだと思います」
マリアが同意する。
マリアを後ろへ下がらせ、『退魔の剣』を引き抜く。
歪みがさらに大きくなっていく。こちらがアドルメアの存在を認識したことが分かったのか。
空間が左右に引き裂かれていく。
なるほど派手好きでもあるな。
引き裂かれた空間から巨大なモンスターが出現した。
ピンク色の肌
下半身は上半身と比較して異様に肥大しているアンバランスな身体
金色の瞳
申し訳程度の一本角
これがアドルメア、オーガの上位種。
ジワリと刀を握る手に汗がにじむ。相手の出方を伺うとアドルメアもこちらの動きを観察している。
オーガのようには突っ込んでは来ない慎重さがあるらしい。
しばらくにらみ合いが続いたが予想もしていないことでこの均衡は破られた。
「あ、あなたたちここで何をしているの!?」
「し、侵入者!」
「は、放して!」
後ろを振り向くと、いつの間にかシスターたちが来ていた。
マリアが数人のシスターに取り押されている。
「マリア!」
しまった、ここまで接近するまで気付かないなんて。
マリアを助けようとするとアドルメアが右手を上空へと掲げる。
そこから巨大な火球が出現する。アドルメアの視線はシスターたちとマリアに向けられていた。
まさかあれを放つつもりか。
下級魔法の『ファイアーボール』だがサイズが大きすぎる、みんな吹き飛んでしまう。
仕方なしにアドルメアに向かって突っ込む。もったいないがここで奥の手を使うしかない。
攻撃を繰り出そうとすると地面が突然杭のように隆起し、そのまま襲い掛かってくる。
これは『ロックボルト』、下級魔法であるが規模が違う。
なるほど下級魔法でも魔力量によっては十分に脅威となり得る。
これは実力を見誤ったか、と後悔するも途中でやめる訳にはいかない。
『ロックボトル』を躱し、間合いを詰めていく。
アドルメアがこちらに視線をロックオンする。
右手にある『ファイアーボール』は先ほどより随分大きくなっている。
アドルメアの腹を斬りつけるが脂肪が分厚く、深くまで届かない。
「グギャアアアア!!」
アドルメアが咆哮をあげる。『ファイアーボール』を僕にぶつけようとしてくる。
「な!? ちょっと待て!」
アドルメアが『ファイアーボール』を放つ直前まで魔力を『退魔の剣』へと注ぐ。
「喰らえ!『魔を退く閃光』!」
刀身は青く光り輝き、それはさらに大きく膨張し、ついには『ファイアーボール』へと轟音とともに弾け飛ぶ。
衝撃で吹き飛ばされ、壁に激突する。激痛が全身を駆け巡る。
魔力を十分に注ぎきれなかったため完全に相殺できなかった。
視線を向けると轟々と舞う土煙を振り払うように悠々とアドルメアが出てくる。
「タフな奴だな」
思わず悪態をついた。




