浮気な自分を許してね
大剣はアフロディーテ戦で失くしてしまったため、代わりの剣を用意してきた。
1年前に突如として行われた特別イベント
『百鬼夜行の主』
そのクリア報酬である大剣を手に入れてからは専ら大剣を使用してきた。
しかしその大剣はアフロディーテ戦で失くしてしまった。
代わりの剣の名前は『退魔の剣』。
大剣を好んで使用する前はこの剣をメインに戦っていた。
『退魔の剣』の性能は、その名の通りアンデット系や悪魔などに特に効果がある。
また奥の手があるが、如何せんこれが使い辛い。
当初は『退魔の剣』で充分であったが、本格的にソロで活動するようになってからは物足りなさが出てきた。
そんな久しぶりの『退魔の剣』を握りしめる。
浮気性の自分を許してくれ、また力を貸してくれ、と心の中で祈る。
左に曲がろうとしたときぬっと出てきたミノタウロスと鉢合わせる。
ミノタウロスが雄叫びをあげる。
マリアをすぐに僕の後ろへとさがらせる。
ミノタウロスが斧を横なぎに払う。
刀身を斜めにそれを受け流し、ミノタウロスを袈裟斬りする。
浅い、大剣の感覚が抜けてない。
ミノタウロスは怒りで目をたぎらせる。
怒らせることはできたらしい。
ミノタウロスはやたら滅多らに斧を叩きつけてくる。
その斧の乱打を潜り抜ける。
ミノタウロスは当たらないことにイラついているのかさらに攻撃の回数を増してくる。
斧が顔を掠め、髪をなでる。
ミノタウロスの足元まで近づくとミノタウロスは頭上高々に斧を振り上げてる。
渾身の一撃を見舞おうとするが、しかしそれは致命的と言える隙であった。
一気に懐へと飛び込みながら胸に突き刺す。
ミノタウロスは苦痛に呻き、暴れまわる。
剥がされまいと僕は剣にしがみつきさらに力を入れる。深く刺さっていく感覚がわかる。
しばらくして振り回される力が弱くなり、ゆっくりとミノタウロスは地べたに倒れ込む。
圧し潰される前に剣を引き抜き脱出する。
「さすがです、バベル様」
その声には純粋な称賛もあるが、若干の不安が混じっている。
前までは大剣で豪快にかつ派手に斬り倒していた。
それと比べると確かに物足りない。
マリアもそれを感じているのだろう。
しかし忘れてはいけないのが、『退魔の剣』には奥の手がある。
「心配するな。これで十分さ」
安心させるようにマリアの頭をポンポンと叩く。
マリアはハッとすぐに顔を上げる。
しまった、ついやってしまった。
「あ…ごめん、つい…い、嫌だったよね」
慌てて謝る。
マリアはブンブンと大きくかぶりを振る。
「そ、そんなことありません…むしろもっとやってほしいと」
「え、何だって」
最後のほうはごにょごにょと小声であったため聞き漏らしてしまった。
さらに聞こうとするのを防ぐように僕の口をマリアは両手で塞ぐ。
「わー! 何でもありません! もうそろそろシスターたちが下に来ます」
マリアはあたふたとする。少しミノタウロスに時間をかけすぎたか。
口を塞いでいたマリアの手を掴み
「じゃ、先に進もうか」
取り乱した姿を見られたからかマリアは真っ赤に俯いていた。




