潜入 注意事項
大聖堂は都市の北に位置していた。
追手に見つからないよう、隠れながら移動したおかげで時間はかかったが道中幸い、戦闘はなかった。
追手は恐らく、僕たちがアフロディーテを狙っていると予想したのか、僕たちが大聖堂に向かっているとは夢にも思わないだろう。
僕たちは物陰に隠れながら大聖堂をちらりと伺う。
大聖堂はヨーロッパで見かける聖堂とほぼ同じ造りをしていたが、恐ろしく巨大であった。
正面にある扉は巨人が出入りするのかと思うくらい大きく頑丈そうであった。
「かなり大きいな」
しかしそれは潜入する僕たちには好都合であった。
巨大であるということは死角も多いということである。
「大聖堂は正面以外に、私たちシスターが出入りしやすいようにとあちこちに入口があります…記憶ではあそこは使用している人が少なかったと思います」
マリアは大聖堂の裏手を指さした。その先を追うと確かに、大聖堂の正面入り口は人の出入りも多いが、裏手は少し入り組んだところにあり人がいる気配もなさそうだ。
「…確かに、あそこからなら潜入できそうだ。でもマリア、今更だけどいいの? 僕なんかに協力して」
助けられた恩があるにしろ、大聖堂にはきたくなかったはずだし、僕に協力することで仲間の元に戻れない可能性もあるはず。
マリアは最初戸惑った顔をし、うーんと唸らせながら考えている。
そこまで悩むのか。
「いや、答えたくないなら別に答えなくてもいいけど」
フォローしようとしたら、マリアはハッと顔を上げる。
「バベル様があの時私を助けてくれたから助けたいのです。それでどうなろうと私は構いません」
マリアは満面の笑顔でそう答えた。
返答に詰まってしまった。
この時どういった言葉を言えばいいのかわからなかった。
いやわかってはいたけれどもすぐには言葉にできなかった。
マリアは首をかしげている。
僕は頬を赤らめながら呟いた。
「…ありがとう、助かる」
マリアはその様子を見て、ポカンとした顔をする。
すぐにマリアはクスクスと笑った。
「バベル様って、変なところで不器用ですよね」
マリアが茶化すように言った。
なんだが背中がむずかゆくなってきた。
何だろうこの気持ちはもやもやする。
「…馬鹿なこと言ってないで、潜入するぞ」
速くこの雰囲気から逃れたくてマリアを急かす。




