25/142
想う
血だらけの両手を呆然と眺める。
彼は帰ると呟くと霧のように消えてしまった。
すべては夢で、目が覚めればいつものようにアリアがおはよ、寝坊助さんって微笑んでくれる
そんな幻想をこの両手に感じる生暖かさと鉄の錆びた匂いが打ち壊す。
そうだ、あれは現実だ。
もうアリアには会えない。
理解してしまうと涙があふれてくる。
顔を覆うように肩にかけてあったマントを近づけた時に気づく。
これはあの人のだ。
散々に打ちのめされたのにその目はまだ死なず、むしろさらに燃えていた。
あの人と出会ったときの高揚感は忘れられない。
鼓動は高まり身体中が熱くなった。
でもそれとともに確かな儚さと脆さを感じた。
化け物たちを斬り伏せる彼の姿はまるで何かから必死に逃げているようであった。
側にいたい。
側にいて何ができるかわからない。でも側にいたい。
それが生き残ってしまった私の役割だとぼんやり考える。
遠慮がちにマントにくるまり、とりあえず彼を待とうと決めた。




