人対神 2 ~無残無様~
うまく投稿できておらず混乱をまねていしまって誠に申し訳ありません。
ここから話の流れが正しくなっていると思います。
「な!?」
「ふふ、勝ったと思った? そんな簡単なわけないじゃない」
不意にアフロディーテの嘲笑が四方八方から聞こえる。
突然背中が引き裂かれるような衝撃が走る。血しぶきが豪快にあがっているのが背中越しでも分かる。
鞭をくらってしまった。
振り返るとアフロディーテが満面の笑みで立っていた。
なぜという疑問が頭を占める。疑問は、すぐに解消された。
「私の神器は『魔法の宝帯』(見たいものだけ見せて)。五感を操り相手に幻覚を見せる。いい夢は見れたかしら」
背中から止めどなく血が抜けていく。
それとともに力も流れていくようであった。
腕が上がらない。意識が薄れていく。
唇をかみ切るほど歯を食いしばり、大剣を構える。
アフロディーテは何もかも見透かすように、ニヤニヤ嗤い、鞭を指でくるくるとまわして遊んでいる。
「もう立っているのも限界なんじゃない? 私の鞭をくらって意識を保っているのは尊敬に値するわ。まあそれだけ、だけどね」
アフロディーテへと向かおうとするが、足がふらつき前へと進めない。手が震え、力が入らない。
「ふふ、もう限界ね。そこそこ楽しめたわ。もうあなたいいわよ」
アフロディーテは笑みを消した。
鞭が来る。わかっているのに避けられない。
右足、左肩に凄まじい衝撃が走る。
叫び声をあげ、地面に倒れこむ。続けて背中に二回、衝撃が走る。苦痛でまた叫ぶ。
「ああ! いい声で叫ぶわね。私ちょっとぞくぞくしてきちゃった」
アフロディーテは快感で身をよじっている。
意識がさらに薄れていき、アフロディーテの嘲笑だけが嫌に頭に響いてくる。
不意にゲームオーバーという文字が頭をよぎる。
嫌だ、死にたくない。こんなところで、まだ何もできてない。
神がまさに今目の前にいるのに一矢も報いることなく、死ぬなんて嫌だ。
血とともに流れた搾りかすの力を振り絞り、立ち上がろうとする。
背中に衝撃が走りまた無様に地面へ倒れこまされる。
「ふふ、まーだ、元気そうね。もう少し頑張れるかしら」
アフロディーテがいたぶりで夢中になっている隙に、僕はポーチから素早くアイテムを取り出し、空中へと放り投げる。
アフロディーテは咄嗟に目をつぶり、耳を両手で覆う。
閃光弾を警戒しているが、それは無駄なことであった。
さっき投げたのは閃光弾ではなく、ただの空瓶である。
再び素早くポーチからアイテムを取り出し、地面に向かって投げる。
それは地面に当たった瞬間、真っ黒な煙幕が噴出し辺り一面を包む。
「これは!? 小細工を!」
アフロディーテは怒りの声を上げる。
立ち上がろうとするが、力が入らない。逃げる力もないのかと自嘲する。
そろそろ煙幕が消えてしまう。このまま地べたに横たわったまま死ぬのかと覚悟したとき、誰かが僕を立ち上がらせる。
あの修道女であった。
「バベル様、大丈夫ですか? 歩けますか?」
彼女は心配そうに訊く。
「ありがとう。助かった、いったん逃げよう」
「でも、どうやって? コロシアムの出口は塞がっています」
「残りの、力を振り絞って。君を抱えて観客席へと昇る。僕が入ってきた扉は開いているはず」
「でもそんな状態で、無理です」
気持ちはわかるがやらないとここで二人とも死ぬ。僕は彼女を抱きかかえる。
「え! バ、バベル様」
心なしか彼女の顔が赤くなっているような気がするが、構わず観客席のほうへと全力で走る。
身体中に痛みが走る。肉が裂け、骨が軋み、血が止めどなく落ちる。
構うものか、飛び上がり壁を超え、観客席へと着地する。
激痛が足から頭へと電流のように走る。
叫び声を上げそうになるのを歯を噛みしめて耐える。
彼女が心配そうに僕の顔を覗き込む。
「ほら、できただろう? ここからは自分で歩けるか?」
「はい! 歩けます」
彼女を下ろし、僕たちは出口へと急ぐ。
「待ちなさい!」
アフロディーテの怒り狂った声が聞こえる。
僕たちの居場所に感づいたかもしれない。
すぐに追いついてしまうだろう、僕は彼女に肩を貸してもらいながら必死に駆け抜ける。
扉を抜け、アフロディーテの魔の手から抜け出すために我武者羅に駆ける。
完敗であった。手も足も出なかった。
滲む視界を拭おうとは思わないほど、必死で逃げた。




