冥界の神ハデス ~最後の魂~
「…馬鹿野郎」
私たちは先へと進んでいた。
オマール様のおかげでここまで亡者たちの追撃を受けることはなかった。
もう少しで頂上に辿り着ける。
そんなとき先頭にいるカイ様からそんな言葉が漏れてきた。
きっと恐らくオマール様は…私は振り返りたい気持ちをグッと抑え前へとひたすらに進む。
ボムボムプリン様は涙を流しながらも振り返ることはしなかった。
カイ様はどのような表情をしているのだろうか。
ここまでカイ様はひたすら前だけを向き振り返ることはしなかった。
悲しんでいるのだろうか、怒っているのだろうかそれはわからない。
彼らとオマール様が一緒にいた時間は私とバベル様よりもずっと長いものであるから。
想像することすら不謹慎なことなのかもしれない。
ただ先ほど漏れた言葉にすべてが集約されていたのかもしれない。
…ようやく頂上に着いた。
「ようやくで…ござるな」
「そう…ですね」
頂上は『死に戻れる彼岸花』で色鮮やかに埋め尽くされていた。
冥界とは思えぬほど暖かな光が優しくこの場を包んでいる。
その中央にガラス張りの棺があった。
その中にはここからでもわかるほどに美しい女性が納められている。
同性である私ですらうっとりするような美しさをペルセポネさんは持っていた。
これはハデスが執着するのも何となくわかるように思えてしまう。
「さっさと終わらせるぞ」
カイ様は刀を引き抜き、近づこうとする。
そのとき上から何かが降ってきた。
亡者であった。
ここに亡者たちがやってきたということは…
「ハー…あのバカ野郎…マリアちゃん、俺たちが引き付けるその間に…頼む」
亡者たちは私たちに突っ込んでくる。
カイ様は中段の構えをとる。
その挙動は今までで一番静かで美しかった。
「『一刀・竜断』」
カイ様が放つその斬撃は多数の亡者を巻きこみ叩き斬る
「プリン! ここで金玉空にするくらい全部出し尽くせ!」
「下品! というか元々そのつもりでござる!」
ボムボムプリン様は宣言通り、豪勢にアイテムをバンバン使う。
彼らが派手に戦うことで亡者たちは彼らに吸い込まれるように向かう。
その隙をつき私はペルセポネさんの遺体へと向かう。
亡者が立ち塞がるが数体しかおらず、手間取ることなく撃破していく。
あっという間にペルセポネさんの遺体に近づくことが出来た。
間近で見るペルセポネさんの、遺体であるがその美しさに思わずため息が出てしまった。
だからこそ目立ってしまう。
痛々しいほどにぶたれたような痕が残っている。
それについ最近まで遺体に触れたような跡が残っている。
着ている洋服が乱れている。
遺体に何をしていたのか想像したくない。
死んでまでもまだ虐げるのか、私は怒りに震えた。
これで楽になれますから、私は短く祈りをささげ短剣を両手で持ち、大きく振り上げそしてペルセポネさんの胸へと思いっきり振り下ろした。
凄まじい悲鳴とともに遺体から真っ黒な粘着性の霧が立ちあがる。
それはまるで苦痛に耐えきれずに助けを乞うように空高く舞い上がりそして霧散した。
ペルセポネさんの遺体は塵となり風に流されるままに消えていった。
ようやく終わりましたよ、私はペルセポネさんに向かって呟いた。




