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Bloody Empire  作者: ゆづりは
第1章:黎明編
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8:過去と、嘘と、願望

「ただいま」

「和真君!!どこ行ってたの!?」


 帰宅して早々、慌てふためいた様子で俺を出迎えた早苗叔母さんに少し遠くまで散歩してただけだと告げ、手に持っていた醤油とトイレットペーパーの入った袋を差し出す。


「ありがたいけど……遅くなるなら連絡はして欲しいな?」


 何かあってからじゃ遅いから、そう言いながら眉を下げた叔母さんにごめんと短く謝罪をし、先刻の出来事がばれないようにひた隠す。


 言えない。俺の魔術嫌いを知る彼女には、今日の出来事は口が裂けても言うことは出来ない。


(もしバレたら、あん時みたいに怒られるだろうな)


 久遠の魔術科に内部進学すると決めた時、叔母さんに大反対されたことを思い出す。


(家のことは気にしないで、本当に行きたいところを選びなさい!)


 あの時の叔母さんの優しさは本当に嬉しかった。

 だが当時中等部三年だった俺は、子どもなりに転科するにしても他校に編入するにしても学費が嵩むことを理解していたから「魔術に興味がなくなったわけじゃない」と虚言を交えて押し切った。


 嘘はつかないでね、と釘を刺されたことを思い出し顔を顰めそうになるも、悟られてはいけないと唇を噛むだけに留める。


(ごめん、叔母さん)


 今日の件を彼女が知ったが最後、入学して即転校なんてこともありうる。それをなんとしても避けたい俺は今一度口にチャックをし、シャワーを浴びると告げて会話を切った。


 着替えを出しておくかという優しさが滲む問いに自分でやるから大丈夫と返し、自室で寝間着を回収してから浴室へと向かう。


 居間から数秒で辿り着けるそこは小さめのアパートにしてはまぁ広く、人二人が各々の行動をできるくらいの余裕がある。


 息をつき、洗濯機の前に立った俺はほんの少し泥汚れのついた半袖のシャツを脱ぎ始める。


「って……」


 袖から腕を引き抜こうとした瞬間、痺れと小さな針で刺された感覚が混じったような痛みが右の親指に走る。

 念のためと思い確認してみると、先程噛み千切った際に出来た傷がうっすらと残っていた。


「…………」


 傷がまだ残っている、そんな事実はどうでもよかった。


 逃げるべきだ。


 ここで命を賭ける必要なんてない。


 そう考えていたはずなのに、あの日立てた誓いを放棄してまで引き返し、この忌々しい力を振るった自分が理解できなかった。


「石蕗 美咲……か」


 口にしたのは、つい数時間前まで行動を共にしていた野暮ったい眼鏡の少女の名前。

 彼女を道案内していた時の記憶が先刻の愚行共々蘇り、無意識のうちに溜め息が漏れる。


 久遠に進学すると言っていたが、どの学科かまでは知らない。仮にもし魔術科だとしたら学校内でも顔を合わせる可能性が非常に高くなるだろうが、俺にはそんなことはどうでもよかった。


「……そう、今日限りだ」


 もう関わりたくない、戦いたくない。願望混じりの呟きは、シャワールームに小さく響き渡った。

お久しぶりです。

またぽつりぽつりと投稿再開します。

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