腑と地獄
手前さん
勝手が過ぎるんじゃあないか
何に腹が立つかって
手前さんが腹を立てていることに
腑が煮えくり返りそうなんだ
散々飲みに呑まれて
滅茶苦茶に暴れた挙句
俺は不憫だって喚くんだ
手前さんの
黄色く濁った眼球には
なあんにも見えていないのか
血が滲む拳も
目尻を伝う涙も
身を寄せる連れと子供の
姿がさ
それでも手前さんは
不憫かい
不幸かい
可哀想かい
そんな手前さんの
腐った腑
本当に煮込んで
捻り切ってやろうか
いっそ、それでも
生温い
本当の地獄ってのは
それでも笑ってなきゃあいけない
幸せなフリをしてなきゃあいけない
”家族”なんだ