5.特訓と紹介の地獄
さてさて、リーファニクス殿下がいらしてから数日が経ちました。ここ数日はとても大変でした。ええ、ここ数年で一番疲れました。
まずは視察。最終日には皆さん『無』とかしていました。マンガとかの表現だと、背景が真っ白になって「…無」と書かれている状態でした。
次に殿下達の歓迎会。まぁ、歓迎会と言う名のホームパーティーでした。歓迎会なのでもちろん騎士達も参加。他の参加者は私の側近とかそこら辺です。立食式のお食事会みたいな感じですね。
ハーヴィから聞きましたがそのパーティーの翌日にシューヴァルト様が地獄の特訓を始めたらしいです。
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午後のゆったりとしたお茶の時間、例外なくルナティリーナ城のサロンでもリーファニクスとルティアーナのお茶会が開始していた。
「リーファニクス様、ハーヴィから聞きましたが、シューヴァルト様の特訓というのは?」
ルティアーナがそう言うと少しだけリーファニクスが難色を示した。言うべきか言わざるべきか、考えているだろう。少しすると口を開いた。
「うん、まぁ、特訓、だね。」
「特訓、ですか…?」
リーファニクスのはっきりしない答えにルティアーナは首を傾げてもう一度問いかけた。それで諦めたのだろう。少し言いにくそうにしながらリーファニクスは話し始めた。
遠慮がちと言うか、怒られた子供みたいに話しているのは気のせいではない。正直意外と可愛い。美形だとどんな顔をしても美しい。羨ましいと思うのはしょうがないだろう。
「…視察のあとみんな倒れていただろう?それで鍛え直そうかと言うことになってね…」
「それでうちの筆頭騎士も弱音を吐くほどの特訓になったのですか?」
「さぁ?シューヴァルトに頼んだからね。」
はぐらかそうとするリーファニクスをルティアーナはジト目で見ると「なら様子を見に行こう!」というはなり2人はサロンを後にした。
着いた訓練場でまさに地獄と言った様子だった。シューヴァルト以外の騎士は皆例外なく倒れていた。
「殿下、いらしてくださったのですね。」
いい汗をかいたと言わんばかりの様子のシューヴァルトはとてもいい笑顔でそういった。リーファニクスは少し引き気味ながらも「うん…」と答えた。
「殿下も一緒にやりましょう。ゆったりとしてばかりでは鈍ってしまいますから。」
リーファニクスはその言葉を聞いて呆れたような顔をし、「そうだね」 と言って訓練用に刃を潰した剣を掴み、シューヴァルトの元へと向かって行った。
その後リーファニクスが訓練で怪我をしたり、参加していたものが筋肉痛になって使い物にならなくなったりと軽く騒動になったが、シューヴァルトはピンピンしていたという。
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特訓の騒動の数日後、リーファニクス様にお仕事の説明をしました。国がとっている方法とは全くと行っていいほど別物なのでとても苦労しましたよ。でもその後の方が疲れたのは気のせいかしら…?気のせいじゃないね、うん。
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シューヴァルトの地獄の特訓騒動から数日後ルティアーナとリーファニクス、シューヴァルトはとある人物の元へ来ていた。
「リーファニクス様、彼が私の補佐をしているルナードです。」
「僕はルーデルナード・アルディルンです。よろしくお願いします、殿下〜」
ルーデルナード・アルディルンは栗色の髪と目をしたふわふわした男の子だ。肩まである髪の毛はウェーブがかかっており、ボリュームがある。ふわふわの髪らツインテールに纏められている。所謂、ふわふわ系男子というやつだ。見た目は15歳くらいで、優しい顔立ちをしている。格好いいと言うよりも可愛いと言う印象だ。
「あ、もふもふ…」
「あ、ランくん向こうよろしくね〜!」
「もふもふ…」
紺色の髪に赤い目をしただるそうな彼はルーデルナードを見るともふもふしたいと言うように近づいて来た。だがルーデルナードに言われ、いやだと言うように彼に近寄って言った。
「…リーファニクス様、彼はランドール・ディ・ゼイヴォ。ハーヴィと同じ騎士団の第2大隊の隊長です。」
無気力そうな目をしたランドールとルーデルナードは2人とも元孤児で、ルティアーナに保護された者だ。
その後も仕事の説明は続いた。だが、予定よりも早く終わったため城の設備などの説明をしていると、リーファニクスの事が気になったのか、様々な人物が寄って来た。その人物をリーファニクスに紹介せねばならなかったルティアーナはとても苦労した。




