2.お願いと到着
一週間ぶりに投稿させていただきました。
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リーファニクス殿下達がルーディル領にいらっしゃった。殿下に会って一番初めに思ったのは「相変わらず美形だなぁ…」という現実逃避気味な言葉だった。
「殿下早速ですが…」
シューヴァルトがリーファニクスに話しかけた。何やら話があるらしい。
「うん。さてルティア―ナ嬢、ここ数年の政務はすべて君が担っているんだよね?」
リーファニクスのその言葉を聞いたルティア―ナは心なしか顔をゆがめた。
「はい。」
「それじゃあ率直に聞くけど何をしたの?」
「何を、とは?」
リーファニクスは本当に率直に聞いてきた。
「うん、聡い君ならわかると思うんだけど政務のことだよ。報告に上がってるものが事実ならここの領だけ収穫収入、それらの利益がここ数年でびっくりするほど上がっている。数年前の飢饉の時もそうだった。この領地だけ被害が少なかった。死人が全然でなかったのは何で?」
そう、この世界では数年前に数か月間にも及ぶ日照りがあり、凶作に陥り飢饉となっていたのだ。だがこのルーディル領ではあまり影響が出ず、餓死者もでなかった。ルーディル領も日照りがあったのに、だ。
「…わかりましたお話ししましょう。まず収穫量についてですが、家畜の糞を畑に肥料として与えさせました。一年たつごとに植える植物を変え、土から失われる栄養に偏りのないようにいたしました。収穫量の増加については主にこの二つを行いましたわ。」
「それで日照りの時は?」
「はい、普段から雨水をため日照りに備えておりました。」
簡単な工夫だ。ルティア―ナは前世の記憶を生かしルーディル領の改革を行っていたのだ。
「ふぅん。」
リーファニクスは顎に手を当て考え込んだ。シューヴァルトも驚いて目を見開いた後何やら考え込んでいる。
「あとは見たらたぶんわかるからいいよ。うん、ありがとう。」
殿下がいらっしゃって簡単に自己紹介をし、こんな感じの雑談をした。馴染んできたころ、私は一番大切な“本題”を切り出した。
「リーファニクス様、シューヴァルト様、皆様、お願いが。」
少し、手が震える。そりゃぁそうだ。あんな現代技術広めるわけにはいかない。でも殿下に見せるということは国に知られると同じ。殿下に秘密にしてとお願いするのも反逆罪ととられる危険性がある。王家に秘密にするということは、何か後ろめたいことがあるといっているようなものなのだ。
「うん?言ってみて。」
「お願いというのは我が領のことで…わ、我が領には、ここ数年秘匿された技術が増えました。そ、その技術は、諸事情により外には出せないのです。で、ですからここで見たことはすべて、すべて忘れて頂きたいのです。」
声が震えそうになりながらも――若干震えていたが――お願いしてみた。言った後に思った。
うわぁぁぁ!何、忘れてくださいって!!!???無理でしょう!ここにはオーバーテクノロジーはあっても最強無双、無敵の万能な魔法はないんだから!記憶なんて消せるわけないじゃないぃぃ!恥ずかしい!恥ずかしいぃぃぃぃ!
最早キャパオーバーだ。混乱しすぎて今口を開いても変なことを言う未来しか浮かばない。
リーファニクスもシューヴァルトも、顔がゆがんでいる。二人とも眉間にしわを寄せて何か考えている様子だ。
「それは密偵が帰ってこないこととも関係していますか?」
「それは“雷鳴”にやられたやつらだと思いますよ?ここ数日引っかかるやつが多かったのはそっちの密偵さんですか?」
シューヴァルトが何かに気が付いたように顔を上げて質問してきた。それに答えたのはルティア―ナではなくハーヴィストだったが。雷鳴とは、触れると雷鳴にあたったように電撃が走る罠のことを言う。スタンガンの応用で作られたものだ。
「うん、君は聡いから何か理由があるんだろうね。言い方によっては反逆罪にもなりかねないのに勇気を出して言ってくれてありがとう。信用してくれてうれしいよ僕は君を気に入っているからね。」
言葉を発したリーファニクスは何か考えがまとまったような顔だ。笑顔でルティア―ナの頭をなでながら言った。リーファニクスが気に入っているといったことにびっくりしているのか、当の本人以外の三人は目を見開いてリーファニクスを凝視している。
「ありがとう、ございます?」
「…私も、殿下がそうおっしゃるのなら構いません。」
「ありがたいです。」
返事をしたルティア―ナは語尾が上がっており、なぜか疑問形になっていた。
リーファニクスが了承すればシューヴァルトもすぐに了承した。続いて他の護衛の騎士達も了承していく。それを聞きルティア―ナが礼を言ったが、ハーヴィストもすぐに礼を言った。
「お許しいただきましたので、我が領の秘密はすべてお見せいたします。」
覚悟を決めたようにルティア―ナがいう。その顔は本当に真剣なものだ。瞳に強い意志が見える。それこそが真剣な証拠だろう。その言葉を聞いたリーファニクスは夜会からは想像のできないルティアーナの姿を意外と思ったのか目を見開いている。ただ口元は三日月形の弧を描いている。
「…お嬢様、まさかあれも見せるんですか?」
「ハーヴィ!…あれは時期が来てからと思っていたわ!言ってしまってはすぐ見せなければならないじゃない!」
「あ、すいません。」
ハーヴィストはまずいことを言ったのかルティア―ナに扇でたたかれている。その扇は特殊なもので、骨組みの部分が鉄のようなもので作られている。とても固いからか、叩かれたハーヴィストのすまなそうな顔は、すぐに苦痛で歪んだ。するとリーファニクスが喉を鳴らして笑い出した。
「くっくくっくくくくっ」
「で、殿下?」
「ごめん、やっぱり君たち、すごく仲いいんだね。ふふ」
リーファニクスはおなかを抱えて口に手を当てて笑っている。リーファニクスが笑い出したのを見てシューヴァルトは心配そうな驚いたような顔でリーファニクスの顔を覗き込んでいる。それを見たリーファニクスは落ち着きを取り戻して微笑む。
「あぁ、着いたようですね。今日はお疲れでしょう?予定はすべて明日からとなっています、夕食になったらお呼びしますので、是非おくつろぎください。」
こうしてリーファニクス一行は領主の住まいとなっているルナティリーナ城(ルナ城)へ入った。
また一週間後に投稿する予定です。
よろしくお願いします。




