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#4-2.ルフィの物語2

 魔王は、この南の大陸の西にある古城に棲むと言う。だが、倒すためにはもっとレベルを上げなければならない。ということで、国王から「まずはガジョーエンの迷宮に行くとよい」と助言をもらった。

 迷宮の最深部には、何でも凄いお宝が眠っていると言うが、俺もムサシも興味はなかった。

「魔王をぶちのめす方が先だからな」

 夜、冷え込む砂漠を二頭の駱駝で進みながら、ムサシは言った。

 彼は一年前に、別な世界から召喚されたという。なんでも、老師自らが召喚したらしい。なら、この世界の魔王に恨みもなさそうなものだが。

「オレもさ、最初はピンとこなかったんだわ。まぁ、剣の修業は性にあってて面白かったけどよ。だがよ……」

 一緒に修業をしていた道場の娘と仲良くなって、結構良い仲になったと言う。

「実戦経験のため、アイリと商人の隊商の護衛をしてたら、魔族が襲って来たのさ。勇者の力を試してやるって」

 そして、まだレベルの低かった勇者を護ろうとして、アイリは死んだと言う。

「笑っちゃうよな。これでも、護ってやるとか言ってたんだ。なのに、護られた揚句、死なせちまったんだ」

 いつもは快活なムサシが、暗い目で言う。

「それで……これだよ。……宝物庫(サブロスィキ)

 互いの駱駝の間に魔法陣が浮かび、その中で銀色の扉が開く。勇者だけに与えられると言う、特別な空間魔法だ。その中に氷に包まれて安置されていたのは、少女の遺体だった。俺たちと同い歳くらいの。

「今の魔王は、世界中の魔術を身に付けたと言われている。こいつを倒せば、死者をよみがえらせる、エリクサーという魔法の薬の作り方がわかるかも知れない。そう、じっちゃんに言われたんだ」

 彼は、老師をじっちゃんと呼ぶ。召喚されて以来ずっとだそうだ。

 俺も、エリクサーの名前は文献で読んだ事がある。大昔に、竜の鱗や髭を材料に作られていたというが、何か大切なものが失われたため、途絶えてしまったとある。だが、魔王なら確かに、何か知っているかもしれない。

 ムサシは宝物庫の扉を閉じた。

「魔族をけしかけたのは魔王。アイリをよみがえらせるなら、魔王を倒せ。ま、オレがやってるのは私怨だよな。オレの個人的な都合だ」

 やや自嘲的に聞こえるが、俺にはまっすぐな思いに聞こえる。だから、俺も言った。

「俺にとっては、魔王討伐は君の願いだからだ。君についていくのも、老師の願いだからだ」

 ムサシは鼻を鳴らした。

「お前自身の願いとかないのかよ?」

「……うまい飯が食いたい」

 ムサシは目を剥いた。そして、顔をくしゃくしゃにして大笑いした。

「そっかそっか。じゃぁ、もう少ししたら飯にすっか」

 満月が一番高く上るころ、俺たちは休憩にして食事の用意をした。ムサシが宝物庫から出した食材を、俺が火魔法や魔法の手を駆使して調理する。

「うめぇな、肉はやっぱり、塩コショウだ」

 北の大陸で買えば純金と同じほど貴重だそうだが、南の大陸では普通に採れるのでそうでもない。それでも、これだけ贅沢に使えるのは、勇者とその仲間の役得だろう。

 宝物庫は便利だ。たった二人とはいえ、砂漠の旅には水や食料がかなりの量になる。しかし、宝物庫に入れてしまえば、手ぶらで駱駝にまたがるだけで済む。日射の厳しい昼は宝物庫から出した天幕で休み、凍えるような夜、やはり宝物庫から出した防寒着を着て先に進む。結構な頻度で魔物に出会うが、闘気をまとえるムサシと、俺の魔法で難なく倒せる。倒せば、種類にもよるが捌いて食材として宝物庫行きだ。

 ムサシはアイリが殺されてから気が狂ったように訓練したという。そのため、僅か半年でレベルが大きく上がり、レベル二十の達人となった。しかし、魔王を倒すにはまだまだ足りない。だからこその迷宮踏破だ。魔王を倒すなら、最低でもレベル五十というから、気が遠くなりそうな話だ。

 朝まで駱駝にまたがり、朝食を取って天幕に入り、夕方まで寝る。寝ている間の警戒は、老師から譲られた魔法具に任せてる。指定した範囲内に動く物があると警報が鳴るというものだ。街や森の中では意味がないが、砂漠の中ではうってつけだ。

 そうして旅を続けて三カ月。俺たちは迷宮の上に建設された都市、ガジョーエンに到達した。

「まずは覗いてみるか、迷宮を」

 ムサシが気軽に言い放つ。

「その前に宿を決めないと。駱駝も預けなきゃ」

 彼は結局、俺の提案に従ってくれた。

 どうもムサシは、走る前も走り出してからも考えないタイプだ。自然と、俺が参謀のようになる。だが、旅の間、それでうまくいっている。ムサシが走り、俺が手綱を握る。というと、まるで俺が主人のようだが、実際にはムサシに引っ張られて進んでいるだけだ。明らかに不味い、と言う時だけ、俺が彼を止めに入る。

 それでも、ムサシは呆れるほど色々なトラブルに巻き込まれる。この間も、死んだ主人から逃げ出した奴隷を捕まえてくれ、というウソに騙されて、危うく誘拐の先棒を担がされるところだった。主人のいなくなった奴隷は死んでしまうから、という口実で、人助けだと思い込んで。

 俺はその話を最初から怪しいと思っていたので、奴隷だと言われたその少女に幾つか質問をして、依頼した奴のウソを見破った。もちろん、騙した悪徳奴隷商人はムサシに叩きのめされた。

 ムサシはそれで十分と思ったらしいが、盗賊として育てられた俺にはわかる。悪事に手を染めた奴が、そうそう簡単に性根を入れ替えられるわけがない。俺も、老師に散々言われた。その考え方は改めろ、と。

 読み書きや魔法はすぐに理解できたが、人の考え方というか価値観はなかなか変わらないようだ。俺は表面上、老師の考え方に合わせてきたが、自分にとって大事な者、今ならムサシを騙すような奴は放置できない。

 なので、翌日その街をでようという夜。熟睡しているムサシを宿に置いて、俺は悪徳奴隷商人の家に忍びこんだ。そして、奴らが次の犠牲者を探している事を確認して、毒の霧の魔術で全員を殺した。

 その事はムサシには言わなかった。言う必要はないと思ったからだし、ムサシも聞かなかった。

 似たような事は何度もあったが、全部それで片付いている。


********


 ガジョーエンに到着し、宿に泊まった翌日、俺たちはいよいよ迷宮に潜った。昨日のうちに街で買い求めておいた地図を頼りに、まずは十層ほど潜ってみるつもりだった。しかし、ろくに魔物もいない三層目で、通路の向こうから剣戟の響きが聞こえてきた。

「人同士の戦闘?」

 眉をひそめるムサシに、俺は答えた。

「獲物の取り合いで内輪もめか、他のパーティーを襲う追剥ぎだろう」

 ムサシはくっと唇を噛む。

「やめさせなきゃ」

 走り出すムサシ。

「おい、魔王討伐に関係ないだろ?」

 そう言いながらも、ムサシを止められないと分かってはいるので、俺も走る。だが、闘気で身体強化された彼に引き離されるのも、いつもの事だ。

「……で、どっちがどっちだ?」

 ムサシが腕組みをして見回している。屍累々、というありさまだ。闘気の鎧で斬り合いの中に飛び込み、両方を素手でぶちのめしたらしい。あれで手加減はしているから、死んではいないだろうが。

「あ、あいつらが突然、襲って来たんだ!」

「違う! こいつらがいきなり、獲物をよこせと!」

 片方は大きめの袋を手にしている。おそらく、魔核や高価な魔物の部位が入っているのだろう。だが、これだけではどちらの獲物か分からない。

「ちょっとゴメンよ」

 俺は片方のパーティーに近づいて、一人ひとりの臭いを嗅いだ。次にもう片方を嗅いでみて、最後に袋の中身を拝見した。魔核と、毒豹の牙だった。

「ルフィ、何かわかったか?」

 ムサシにうなずいて、俺は片方を指差して答えた。

「うん。臭いのはこっちの方だ」

「お前らか!」

 ムサシの声に、彼らは怯えた。

「違うよ。彼らが臭いのはそれだけ迷宮に長くいた証拠だ。そして、迷宮の浅いところでは、こんな牙を持つ魔物は残っていない」

 俺は獲物の袋をくたびれた感じの臭い奴らに渡した。

「もう、行って良いよ」

 口々に礼を言いつつ、臭い方のパーティーは出口を目指して行った。

「で、こいつらどうしようか?」

 残りの連中を指差す。いつものムサシなら殴って済ますが、既にかなり殴ってる。あまり殴りすぎると、人は死ぬ。俺はそれでもいいが、ムサシはそれを嫌う。

 ムサシは頭をガシガシと掻いた後、宝物庫を開いた。まだ少し食糧が残っている。

「お前ら、ここに入れ」

 追剥ぎどもがすごすごと入ると、彼は宝物庫を閉じた。

「どうするんだ?」

 ムサシは答えた。

「さっきの獲物が獲れる階層で、解放してやる」

「へぇ」

 俺は感心した。

「君も、ものを考える時があるんだね」

「殴るぞ、コラ」

 そして、俺たちは先に進んだ。


********


 二十層目で毒豹を倒した後、ムサシは宝物庫をあけて追剥ぎたちを出してやった。

「さて、それじゃこいつをやるから、頑張って地上を目指しな」

 毒豹の魔核と牙を渡して、俺たちはさらに迷宮の奥を目指した。

「別に、手土産まで渡さなくても良かったのでは?」

「あいつらだって食うためにやった事だ。生き残っても食えなきゃ、同じ事をするだろ」

 俺は素直に感心した。

「君こそ賢者だ」

「なんか、むかつく」

 その後も、時々全滅しかけたパーティーを助けたりしながら、先へ進んだ。ムサシは、口ではあれこれ言うが、結局のところ、困っている人を見ると関わってしまわざるを得ない。そんな彼の後ろを、ため息つきながら付いていくのが俺だ。

 けど、厭じゃない。

 ただ、二人してレベル四十を超えたところでたどり着いた五十二層は別だった。このあたりまで来ると、市販の地図には何も書いてなかった。そこで、途中からは俺が書き加えてきたのだが。

 どうやら次の階層への階段がありそうだと思える場所にあった巨大な扉。その向こうにいたのは三体のミノタウロス。そして、壁から出てきたのは巨大な魔法具の石巨人、そしてやはり魔法具で動く骸骨騎士。

「クソ、このミノタウロス、レベル低いくせに硬ってぇ!」

「こっちも、魔法具じゃ破壊してもレベル上がらないし……」

 そこで、魔法具を操っている奴を魔法探知で調べたところ、ミノタウロスたちが護っている壁の上にある紋章に気が付いた。そこで、土魔法でその上に泥を張りつかせてやった。思った通り、操っている奴の視界が塞がれたようで、石巨人と骸骨の動きが止まった。

「先へ進もう!」

 ムサシに言うと、彼は俺を小脇に抱え、闘気で加速した俊足でミノタウロスをかいくぐり奥の扉へ突進、素手で粉砕してその奥の通路に飛び込んだ。

 そして、階段のある部屋にたどり着いたわけだが……。

「なぁ、ルフィ。俺たち、ここから先に行く必要、あるかな?」

 ムサシが腕組みして考え込む。

「そうだね。ちょっと、俺たちはレベル上がるのが速すぎたみたいだ」

 レベルアップが速い理由は単純だ。パーティーが少人数ならその分速くなる。多ければ遅くなる。敵を倒した経験が分配されるからだ。剣士と魔術師と言う最小構成の俺たちは、他のパーティーより三、四倍は速くなる。闘気をまとえる勇者ムサシが元々桁違いに強いというのと、俺が戦力としては微妙な斥候や盗賊も兼ねているからだ。

「とりあえず、一度下に行ってみて、レベルに大差なければ引き返そう」

 そう言って俺は後ろを振り返った。

「うむ。そうだな。あのミノタウロスが邪魔したら、蹴り飛ばしてやりゃいい」

 ムサシも同意したので、俺たちはまず階段を降りて行ったのだが。

 ……すぐにうんざりした。

「ミノタウロスよりレベル低いのに、数多すぎ」

 剣をふるうのも面倒くさくなったムサシが、オーガーを素手で張り飛ばしながら嘆いた。俺も最小限の魔法で牽制しつつ、つぶやいた。

「確かに、これじゃ対価の受け損だ」

 俺は老師から密かに聞いていた。過剰対価(オーバードーズ)の恐ろしさを。こんな下らない所で、そんな危険を犯すわけにはいかない。

 ムサシが決断した。

「よし、じゃ、帰るか」

 というわけで、俺たちは迷宮を後にすることにした。


********


「……くそぅ! クソッ! こんな……こんな事でッ!」

 ムサシの闘気がさらに強まる。だが、彼を抑えつけている結界も、ますます強度を増して行った。俺の方も、魔力を封じる結界に捕われ、手も足も出ない。

 魔王の居城に乗り込んだ俺たちは、魔物も魔族も蹴散らして城の奥へと進んだ。絶対に勝てるはず、と慢心してたのかもしれない。

 その結果がこれだ。思わぬ罠に引っ掛かってしまった。悔やんでも、もう遅い。

「フォフォフォ……どうした勇者。魔核ならいくらでもあるぞ。もっと余を楽しませよ」

 身の丈二十ブラ(十メートル)はある魔王は、でっぷりと太った腹を揺らして笑った。その片手は器の中の無数の魔核を弄び、傍らの魔法具の中の魔核が尽きそうになるたびに放り込んでいる。この魔法具がムサシと俺を縛りつける結界を発生させているらしい。

 そして傍らの檻にもう片方の手を伸ばし、既に空なのに気づくと叫んだ。

「これ、次のつまみを持て!」

 オーガーどもが掲げ持ってきた檻の中には多数の人間……ヒト族や獣人族や小人族など、雑多な種族が、男も女も裸に剥かれて入れられていた。死を悟った彼ら、彼女は、絶望に打ちひしがれている。

 魔王はその一人、小人族の女をつまみあげると、泣き叫ぶ姿を楽しげにしばし眺めてから、手足を一本ずつちぎっては食べだした。女の、そしてムサシの絶叫が広間に響く。

「ウガァ! やめろ! やめろー!」

 さらにムサシは抗い、そして闘気の対価が限界を超えて失神する。闘気が消えてしまえば、彼の体はやがて結界によって押しつぶされてしまう。すかさず、俺は対価を引きとる。これだけは、なぜかこの結界の中でも使えた。

 そして、今度は俺の対価が限界を超える。しかし、すぐに意識が回復する。

「うむ。その魔術師の対価、なかなか美味であるな」

 脂肪のひだが出来た顔をゆがませ、魔王が笑う。人の血で汚れた口元を、赤いナメクジのような舌が拭う。

 知っていやがるんだ。過剰対価(オーバードーズ)で魔核が発生する事を。奴は俺たちを魔人にし、魔核を通して支配しようとしているに違いない。

 なら、せめてムサシだけでも。

 俺はムサシの対価をこまめに引き受けるようにした。だが、駄目だった。次に失神して意識が戻った瞬間、俺が対価を引きうける前にムサシは失神した。すぐに対価を引きうけるが、今度は俺が失神する。

 魔王が俺の対価を吸い上げるタイミングも量も、奴次第だ。常に、俺たちが両方とも過剰対価(オーバードーズ)になるように見計らっている。

 なんとか、なんとかしなきゃ。

 だが、ギリギリの対価を抱えて、頭が回らない。

 そして、何度目かの失神のとき、脳内で何かが弾けた感覚があった。

 次に意識が戻った時。

 ……何故か、全てが終わっていた。

 ムサシは結界の消えた床にうずくまっていた。

 魔王は、そこらじゅうに散らばっていた。奇妙な事に、賽の目上に切り刻まれて。だが、再生は起こらないようだ。

 その理由はすぐに分かった。ムサシや俺を抑えつけていた結界。これを発生させていた魔法具は一刀両断されていたが、片側の魔核を入れる受け口の所に、賽の目に刻まれた大量の魔核が突っ込まれていたからだ。魔王の物に間違いない。魔核が肉体から離れてしまえば、再生は起きようがないだろう。

 もう一つ奇妙なのは、彼の剣だ。罠にはまった時に弾き飛ばされ、正面の壁に突き刺さったままだ。一体、ムサシはどうやって魔王と魔核を切り刻んだのだろう?

 人間たちが入れられていた檻も切り刻まれ、破壊されていた。死体はなかったから、おそらく皆逃げ出したのだろう。城内の魔物も魔族もほとんど倒したはずだから、なんとか城の外までは出られるだろうが、その先は、分からない。

「なぁ、ルフィ」

 ムサシがつぶやくように言った。

「俺のこと、鑑定してくれ」

 すでに呪文を唱える必要はなかった。無詠唱で鑑定した内容が脳内に流れる。

「……魔人、ムサシ」

 そして、俺も。自分の方は、鑑定するまでもなかったが。

 俺の返事に、ムサシは大きくため息をついた。

「……やられたぜ。俺たちの負けだ」

 ムサシは立ち上がった。

「殺してくれ。オレを」

 俺は(かぶり)をふった。

「いやだ」

「……頼むよ」

 ため息をつき、ムサシは続けた。

「頭の中で、魔核がオレに囁きやがるんだ。自殺はできねぇってよ。オレは次に選ばれた勇者に打ち取られるまで、このクソったれな魔神に、こき使われるだけなんだ。闘気をまとうたびに魔核は成長し、オレはいつか魔族に、そしておそらく、次の魔王になっちまう」

 暗い目で、散らばる魔王のかけらを眺める。

「こいつも、元は魔術師か、魔術師系の勇者だったんだろ。しかし、魔核に支配されて、百年たてばああなるんだ」

 がっくりと膝をつく。

「例えここにエリクサーがあったとしても……アイリをよみがえらせたとしても……彼女になんて言えば良い?」

 涙に濡れた顔を上げ、ムサシは懇願した。

「頼む、殺してくれ。オレが人の心を失わないうちに」

「……わかった」

 俺の望みは、ムサシの望みをかなえることだ。老師との約束だ。

 壁に突き刺さったムサシの剣を、魔法の腕で引き抜く。そして、うなだれてひざまずく彼に向かった。

 彼はつぶやくように言った。

「なあ。最後に聞いても良いか?」

「なんでも」

「お前の名前。ルフィってのは、愛称だよな。本名は?」

 名前を伝えた。老師にもらった、本当の名前を。

「ありがとう。それじゃ頼むよ……」

 彼は微笑んで言った。

「……オルフェウス」

 俺は彼の首をはねた。


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