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PAST  作者: 日下 悠夜
8/29

影1


 タクマは黒板の前に立ち、スラスラと数式を書いていく。


「正解だ。戻りなさい」


数学教師は、忌々しそうに吐き出す。現役大学生を舐めるなよ。内心笑いながら、タクマは席に戻った。




 教師たちは飽きもせず、タクマに問題を解かせる。どうやら、


「できません」


と、言わせたいらしい。だが、基本の応用問題ばかりなので、少し頭を使えば解けない問題ではなかった。だが、クラスメートたちは違う。どんな教科のどんな問題も、スラスラ解いてしまうタクマに、尊敬の眼差しを向けていた。


「何でアレがわかるんだよ!!」

「基本の応用だから。覚えるところを覚えていたらできる。数学なんて、公式さえ覚えていれば、何とでもできるぞ」


授業が終わり、泣きつく神威にタクマは涼しい顔をして答える。高校一年で学んだ多くは、二年、三年、大学とずっと着いてくる。それがわかったのは、三年になって大学受験を意識するようになってからで、この時期はあまり勉強していなかった。だから、過去に戻ってきたタクマは言えることがある。


「覚えるところを覚えていたら、大学受験が楽だぞ」

「そうなんだ……」


羨望の目が、タクマに向けられた。




 気を利かせたつもりだろうか。病室には尋都と将都の二人だけしかいなかった。


「……ソレ……」

「ん?」


将都の目は、尋都の左耳を見ていた。そこにあるのは、小さなルビーのピアス。


「ちゃんと着けてくれてたんだ」

「当たり前だろ」


まだ、将都が入院する前のこと。気に入ったと、一対のピアスを買ってきた。そして、一つを尋都の左耳に、もう一つを自分の右耳に着けた。


「俺もずっと着けてたよ。検査なんかで、外さないといけない時もあったけど」


将都は自分の右耳に触れる。そこには、尋都と同じ赤いピアスがきちんと輝いていた。




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