過去の街3
覚悟を決めても、尋都は前に進めなかった。自販機コーナーで熱いコーヒーをすする。
「えっ、ヒロちゃん?ヒロちゃんでしょ!!」
「梨子姉ちゃん?」
「来たんなら、早く顔を出しなさいよ。マサちゃん、ずっと待っているのよ」
自販機コーナーに偶然顔を出したのは、従姉の梨子だった。逃げられないように尋都の腕をガシッと抱え、コーヒーを数本買う。
「マサちゃんに会いに来たんでしょ。行くわよ」
尋都はコーヒーの缶を持たされ、梨子に引き立てられ、そこへ向かった。
「あっ!!」
テーブルの上を片づけていたら、台所から卓真の叫び声が聞こえた。
「どうした?」
「醤油、買い忘れた」
残り少ない醤油のボトルを睨み付け、卓真は重々しく呟く。
「俺、買ってくる」
「悪い。そこのコンビニでいいから」
卓真の声を背に、タクマは家を出た。
あの日までずっと住んでいた家。幼い頃からずっと暮らしてきた街。どうしてこんなに余所余所しいのだろう。
コンビニへ行く道すがら考える。
ソレハ、過去ノ街ダカラ?
タクマが今いるべき世ではないからだろうか。
コンビニの明かりがとても遠くに見えた。
“Past City”end.
→The next episode“Reunion”
To be continue.