易姓革命
革命の本当の意味が分かっちゃう……。
「その要請――謹んで承ろう!我が王も今の場合を見越してか、かような要請が来た場合は『事後報告で――“国”として承ってよい!』との御言葉を頂いている!」
国として貴狼の要請を承諾した虚綻に、貴狼は「ありがたい!」と礼を言う!
「だがいいのか!? 塔高との全面対決に陥れば、勝っても負けても損だぜ!
周辺の国々《やつら》は、戦で消耗した国に容赦しないぜ!」
京賀国を一個人として案ずる虚綻!宰相としても、今――佞邪国の京賀国が消えることは、弱小の須座国の寿命が尽きるのも同然と考えている!
そんな虚綻に対して、貴狼は強気になって――
「いずれ塔高とは戦う天命!容赦されないのも望むところ!」と応える!
「それじゃぁ……こっちの要請も受けてくれないか?」と別件を持ちだしてきた虚綻!
貴狼は「先ずは聴こう!判断はそれからだ……!」と慎重な姿勢で応じる。
この乱乱乱世の外交の場において――安請け合いは亡国の元である……!
そして虚綻は笑っていた顔を引き締めて畏ると――
「我が王の位を……是非、貴国の京賀王陛下(陽玄)に授禅(この世界においては禅譲した位を譲り受けること)して頂きたい!」と頭を下げたではないか!
この虚綻の要請に、貴狼は「んっ……!?」と陸に言葉を出せなかった……!
世歴八百四年四月十日 午前九時頃 佞邪国丘幸 摂政府(佞邪王私邸)
「何か報告が入っておるか、俊雄?」と尋ねる釣幻!
これに尋ねられた俊雄が「はっ、陛下の御耳に入れたいことが……」
「何だ、俊雄?」と不機嫌気味に応える釣幻!出鼻を挫かれた気分……。
「須座国の王とその重臣達が、京賀の方へ向ったとのことです!
今朝、須座国のものから使者が参り、陛下に京賀へ向う旨をお伝えする書状が届けられております!何でも、行幸の最中の皇帝陛下と京賀王陛下に対して御挨拶するために向われたのだと……!」
この俊雄の報告を聴いた釣幻は「ふっ!」と鼻で笑うと、俊雄に――
「小国の釈明なぞ、どうでもよいわ!使者共はすぐに帰してやれ!」と命令!
すると俊雄はその命令を実行すべく、「御意!」と応えてその場を辞していった……。
それから釣幻は瞬く間に、自身の傍に控えていた長目に向かって――
「兵を起こせ、合真(長目の氏名)!! 宮殿を押さえるぞ!!」と号令!
そのまま彼は急ぎ足で摂政府の出口へと向かっていく……!なおその足取りは急ぐ義務感に駆られている大人の足取りではなく、興奮を抑えきれない子供の様!
そんな釣幻の後ろを、長目は「はっ!」と応えてついていく!
さらにそれから釣幻は自身の諸将らを引き連れて、帝のいない宮殿に――
「いよいよ“天命を革める”時が来たあぁっ……!!
さぁ……真の“革命”の始まりぞおおおおっ!! ははははははっ!!」と乗りこんでいく!
この時の釣幻の笑い――後世にはその笑いが宮殿に奥まで響渡るそうなくらいだったと伝わっている!その真偽は定かではないとはいえ、何とも言えない不気味な空気がその宮殿を包んでいたことに関しては――真実であった……!
この日……遂に釣幻は『塔』氏(釣幻の氏)の代々の悲願であった帝位を簒奪!
即日――正式な国名を『日汎帝国』から『佞邪国』に!
国号(この世界では王朝名)も『長』から『卒』に号した!
その国姓(君主の姓)も前帝国前王朝末代君主となった鈔狼の『子木』から、新帝国新王朝初代君主となった釣幻の『塔』に易わった!
さらに釣幻は易姓革命を起こした際に、丘幸の民衆に――
「前王朝たる『長』は――国を治める武力を持たぬが故に、先の大乱を収められず!
それ故に天は――大乱を収めた朕に帝位をお与えになったのだ!」と演説!
この演説に民衆の誰もが『嘘付け!』と鼻白んだ!しかし誰も反対しなかった……!
もし反対でもしようものなら、一族郎党を巻き込んで粛清されるからだ……!
故に民衆は引き攣った笑顔で、その革命を祝ったそうな……。
その日の夕方……宮殿の宴会場には――普段と同じように散財しまくる釣幻の姿!
猪口を片手に酒が進み、「はははははははっ!」と笑いが止まらない!
そんな釣幻の目の前には、新帝国の “摂政皇太子”となった俊雄が――
「皇帝陛下……の御即位――おめでとう御座います!」と畏まっている……。
これに釣幻は「そうだ……!」と何かを思い出して、俊雄に――
「朕は今からお前を“佞邪王”の爵位を与えておく!」と告げる!
すると俊雄の後ろに控えていた新帝国の若き丞相である清乾が「おめでとうございます、摂政殿下――いえ、陛下!」と祝いの言葉を俊雄に送る!
この光景に釣幻は「これぞ帝権!はははははははっ!」とますます笑いが止まらない!
その時の……京賀国!




