佞邪王
そろそろ、佞邪国のパターン……。
絶好の機会と思った真藤!その機会を逃すまいと――
「就職したいです!!」とはっきりと本心をさらけ出して意気込む!
これに貴狼が「陛下……!」と陽玄に何かを促すと、陽玄は真藤に――
「今日から深栄は我が京賀国の官吏だ!よろしく頼むぞ!」と笑顔で告げる。
真藤は慌てながらも「よっ、よろしくお願いします!」と応じてみせた……!
世歴八百四年四月六日 正午頃 佞邪国丘幸 摂政府(佞邪王私邸)
「はーっはっはっはっ!“王”になったばかりの酒が――こうも美味いとは!」
前丞相府から名前を変えて間もない摂政府に響き渡る釣幻の笑い声!
彼は今――重臣などを招集して祝いの席を催している真っ最中!
陽玄の『丞相』が彼にとっての名誉職である以上、長王朝の政権は釣幻の手に握られている……。つまり、釣幻が丞相だった頃とは何も変わっていない!
それどころか位が高くなった分、余計に性質が悪くなっている……。
「摂政閣下!そろそろ臣下の任をお決めにならねば……」
陽玄の丞相昇任に伴い、新しく録尚書事(筆頭副宰相)に任じられた俊雄が釣幻に声を掛ける。丞相が事実上の空位と化した今――現摂政に次ぐ地位の持主!
「そうだな……!だが先ずは――お前に令を下す!」と宣言する釣幻!この時に限って先程まで酔っぱらっていた目が覚めている!しかも鋭く……!
これに俊雄が「はっ……!」と畏まって待つと、釣幻は俊雄に――
「今からお前を――この佞邪国の“摂政”に任じる!
並びに衛校尉に任じて、衛団(親衛隊)の指揮も預けておく!心せい!」と告げる!
俊雄は「御意!」と頭を深々と下げる……。ここに佞邪国の“摂政王太子”が誕生した!
「おめでとうございます!摂政殿下!」と冷静ながらも俊雄に祝福の言葉を送る者!
彼は氏が『亡』、名は『原』、字が『清乾』という者!まだ十五歳という――佞邪国の若き録尚書事(筆頭副宰相)である!
ちなみに、「芸術に専念したい!」という両親の意向で、早々と家督を継いでいる。
「本日は重ね重ね……目出度い日ですな……!」と述べる者!
彼は氏が『合』、名は『真』、字が『長目』という垢抜けた風貌をしている者!この佞邪国に移住してまだ五年にも満たない新参者だが、釣幻お抱えの商人という立場から人間関係を全力活用!
そして現在では――佞邪国の尚書令(副宰相)を買官してその地位に就いている……!
「そうだ!お前達にも令を下そう!先ずは亡原(清乾の氏名)!」
この釣幻に声に、清乾「はっ」と畏まって頭を下げて――主君からの令を待つ!
「今を以て、録尚書事であるお前を“丞相”に昇任する!
並びに中校尉に任じる!精々励むがよい!」と即座に釣幻に告げられる!
これに清乾は畏まったまま「仰せの通りに!」と応えてみせる!
さらに、「お前も“録尚書事”に昇任だ!それと“司隷(首都周辺)校尉”にも任じておく!丘幸の護りは任せるぞ!」と同じく釣幻に告げられた長目も――
「身に余る光栄で御座います!」と深く畏まって応じてみせた……。
こうして重臣の人事を終えた釣幻!それから急に眉間に皺を寄せて――
「それと……先の戦で消えた北団と南団の穴埋めについてだが……!」と話を切り出す。
「「「……!!」」」
王太子の俊雄、重臣である清乾と長目に走る悪寒……!理由はすぐに分かる!
「即日――外境団(国境警備隊)を改名して、“地方団”と命名する!
そして――その『地方団』を消えた両団の配属地に充てる!」
この釣幻の宣言に、俊雄が「お待ちください!陛下!」と焦って待ったをかける!
釣幻は「何だ、俊雄!?」と不機嫌ながらも話を訊いてきてくれる……が……。
「その部隊の校尉(指揮官)はあのような――」と俊雄が話を切り出した瞬間。
釣幻は「塵では佞邪国の護りは果たせん!」と結末を言いきる!
ちなみにその地方団の現校尉は――もの凄く内外からの評判が悪い……!
「それをわかっておいでなら、何故……?」と長目が釣幻に尋ねてみるも――
「それは時が来れば話してやる!今は『あの塵には何も守る要はない!』とだけ答えよう!」と当の釣幻にあしらわれてしまう……。
これに長目――ただ「御意」と答えるのみ。人間関係でも限界がある証。
「……!」
――これ以上は訊いても無駄か……。と思って沈黙を守る俊雄。子でも限界がある証。
「俊雄……例の件は……?」という釣幻の問いに、俊雄は――
「順調です!このままなら、予定通りに“事”を起こせます!」とはっきりと答える!
すると釣幻は、先までの不機嫌さを吹き飛ばす様な満面の笑みをこぼして――
「では前祝も兼ねよう!今日の宴――存分に楽しめぇっ!
今回が朕佞邪王が催す……最後の宴かも知れんぞ……!」と宣言してみせる!
これが釣幻が“王”以上の位への野心を仄めかした――数少ない瞬間であった……!
次回予告:故郷への凱旋……!




