両殿下
陽玄の両親初登場!
世歴八百四年四月六日 正午頃 佞邪国丘幸 京賀王(旧京賀伯)別邸
今――別邸は陽玄の王位昇格祝いの真っ盛り!宴の席!
その席で「いや~っ!今日という今日は……目出度い目出度いの~っ!」と水の入った杯を片手に音頭を取る美少年!
その少年は宰相である月清と同じようなウェーブのかかった銀髪の持主。しかし月清の清涼さとは対照的に、その少年には活発な雰囲気が漂っている。また月清よりも童顔で、少女のような可愛らしさも備えている!
実際にその少年とは面識がない状態で会った真藤は、後の取材で――
「ボーイッシュな女の子がいるなぁって思いましたね!服装で何とか"男"って分かったんですけど……その時は月清殿下の“弟”って思ってましたね!」と述懐している……。
「……」
さらに先の少年の隣には、一人の女性が佇んでいる。
その女性は陽玄と同じような鉑の長髪の持主。顔立ちに関しても、可愛らしくも凛々しく整っている。まるで陽玄をそのまま成長させた感じだ。
十中八九――陽玄の母であろう……!実際に、真藤はそう察した!
そんな月清の“弟”らしき少年と陽玄の“母”らしき女性の席は……陽玄の席を挟んだその両側!ここで、真藤が自身の隣の席にいる貴狼に小声で――
「あの~っ……殿下――いえ、陛下(陽玄)の隣りにおられる方々は?」と訊いてみる。
すると貴狼も小声で「見た目で分かっていると思うが、あの陛下の隣の席で佇んでいるのが……」と返してくれる。真藤からの答えを聴きたいのか、答えは最後までお預け。
貴狼の意図を察してか、真藤も小声ながら「陛下の母上様ですね!」と答えを述べる。
「そうだ!あの御方が我ら京賀の前君主で在らせられる――“上伯”殿下だ!
氏が『零』、名は『思』、字が『照泉』という御方だ!見た目で分かると思うが――陛下の御母君であらせられる!」
女性の正体を訊き終えた真藤は、「――で陛下の隣の御方は?」と話を変える。
話はもちろん――照泉の反対側にいる少年の正体について……。
「あの御方が上伯殿下の夫で、陛下の父殿下であらせられる――“上配”殿下だ!
見た目で分かって――」と貴狼が答えると、その途中で真藤が「宰相殿下(月清)の弟様ですね!」と答えを挟む。だが、真藤が挟んだその答えは――大間違い!フライング!
貴狼はため息を吐くように「いなかったな……。やはり……」と述べるのみ。
「……!?」
自分の答えが間違っている!としか分かっていない真藤に、貴狼は――
「宰相殿下の“兄上”様であらせられる!」と答えを告げてあげる。
「ええっ、弟殿下(月清)よりも幼く見えるんですけど!?」と驚きを隠せない真藤!
まだ驚きから抜け出せそうにない真藤に、貴狼は冷静に――
「氏が『破』、名は『音』、字が『月道』という御方だ!
俺を“摂政”に推挙してくれた御人だ!」と月道を紹介する。
「それにしても……陛下の御両親両殿下はとても若いですね!」と真藤がまたも話を変える!しかもぎこちなく!先程の己の非礼を隠したがっているのか……。
まぁその非礼が表に出たところで何の問題もないのだが……。当の月道もそれを自覚もしていれば、その非礼を浴びることにも慣れている……。
「まだ両殿下とも十七歳であらせられるからな……」という貴狼の答え。
これに真藤が「あの~っ、両殿下は御何歳で結婚を……?」と訊き返してしまう。己の十八歳より下の答えを聴いてしまったなら――当然……。
すると貴狼は頭を抱えながら……自身の記憶を探った後に――
「確か……十歳か……十一歳の頃だったな……!」と答える。
「すごく早いないですか!?」とまたも驚きを隠せない真藤に、貴狼はまたも冷静に――
「早い方だが……これでも珍しくない方だ……。一番早い方だと、赤子のまま結婚させるようだぞ……。もちろん、政略結婚で……!」と告げる。
結果――真藤は呆然として「へぇ……」とのみ声を出すのみ……。この乱乱乱世に、前にいた世界の常識が一切通用しないこと改めて思い知ったが故に……。
それにしても人間――驚きの許容範囲を超えると無反応に陥ってしまうようだ……。これが一番面白い反応かも……?
「そういえば……見知らぬ者が二人いるようじゃが……!」という月道の声!
これに貴狼の隣の席に位置している鋒陰が真っ先に手を挙げて、自身を――
「はい!儂は京賀王の“師”です!氏が『壱』で、名は『魄!
字が『鋒陰』っていいます!よろしくお願いします!」と紹介!
これに月道は首を傾げて、陽玄に「真か、陽玄?」と訊いてしまう。
何せ、“師”と称する者が己の愛息の四歳と変わらぬ五歳児だもの!
ここで五歳児の言うことをすんなり信じる程――“親”はできていない!
「……」
月道に対して陽玄が無言で肯くと、月道は笑顔で――
「よろしくな!」と鋒陰を公認!愛息の言うことはすんなり信じるようだ……。
次回予告:真藤の就職……!?




