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魂魄双伝~祖国統一編~  作者: 希紫狼
序章~塔零記~
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深栄

真藤の大陸風デビュー!

「ところで……見知らぬ奴が二人程いるようだが……!」と新たな話題を振る釣幻。

 当然、彼が言う『見知らぬ奴が二人』とは――鋒陰と真藤のことを指している。

 これに、鋒陰が真っ先に自ら進んで応じて――

「申し遅れました、佞邪侯殿下!私《わたくし》めは氏が『壱《いつ》』、名が『魄《はく》』、そして字《あざな》が『鋒陰《ほういん》』と申す者です!

 京賀国の“伯師”を勤めさせて頂いております!」と畏まって頭を下げて自己紹介!


 この自己紹介に紛《まぎ》れて、貴狼は真藤に「俺が顎で合図したら、頭だけ下げてそのままの態勢でいろ!俺が佞邪侯の質問に答えるから、黙ったままでいろ!」と耳打ち!

 これに真藤は何も疑問を持たずに肯《うなず》く。本来なら疑問を持ちたいところだが、自分達の首が物理的な意味で掛かっていること察して即答せざるを得なかったのだ!

 それに真藤《かれ》はこの世界の礼儀に慣れていない。万が一、彼の礼儀に間違いでもあらば本当《リアル》に取り返しがつかない事態に至ってしまう!

 陽玄の首だけが飛んで済むなら――まだこの世界では手ぬるい場合《ケース》。最悪の事態となれば――国家そのものと国民全員の命が吹っ飛んでしまうのだ……!

 つまり陽玄らは――『命がけ』と言う言葉さえ生ぬるい戦場の真っ只中にいる……!


 鋒陰の自己紹介を聞いた佞邪の者達は皆――くすくすと陰で笑い始める……。

 ――あのような小僧《がき》が君主の師とは、笑える……!

 佞邪人《かれら》の中で最も有能で真面《まとも》な俊雄も――

「ふっ……!」と鼻で笑って微笑を浮かべる始末……。

 佞邪人《かれら》の中で最も狡猾《こうかつ》で狂っている釣幻に至っては――

「はっはっはっ!そうかそうか!しっかりと伯を導くがよい!」と笑い飛ばす始末!

 この時点で、佞邪国首脳部には――損失的な意味で京賀国を侮《あなど》っていた……!


「――してお主は?」と釣幻の関心が真藤に向いた!

 これに貴狼が反応して、真藤に向かって予定通りに顎で合図を送る。

 すると真藤は黙ったまま、釣幻に畏まって――深々と頭を下げてくれる……。


「ご紹介しましょう!彼は氏が『群《ぐん》』、名は『麻《ま》』、字《あざな》が『深栄《しんえい》』と申す――我が国の摂政府に属している官吏《もの》でございます!」と真藤を紹介する貴狼!この紹介の中に『真藤』という姓名が全く出ていない……。

 とはいえ、この国の全役所内で『真藤響《しんどうひびき》(真藤の全名)』というような下賤な日汎《じっぱん》式のような訓読みの名前の持主が入ってきたらどうなるか?

 即時に――機密保持の名目上で殺されてしまう!

 ――だったら最初から連れてくるな!という意見《つっこみ》もでてくるだろう!

 しかし、この乱乱乱世――どこの国でも新参者は狙われやすいというもの……。

 故に片時も、彼を目が届かない領域《ところ》へ置き去りにするわけにはいかない……。


「何故《なにゆえ》に貴殿が紹介するか……?」

「曰《いわ》く、『あまりにも高貴なお方に申すのは、畏れ多くて気が退ける』と……!」

 釣幻の尤《もっと》もな質問に、貴狼が“色”を付けて答えてみせると――

「はっはっはっ!そうかそうか!それもそうだな!」と釣幻は高らかに笑った……!



 こうして裁判が終わった頃、丘幸《みやこ》の市中を馬に引きずり回されながら、処刑場《もくてきち》へと連れて行かれていく官男!

 それとほぼ同じ頃――お白洲にいた者達全員はそこを離れて、評定《ひょうじょう》所(裁判所)からそれぞれの次の予定地へと発つところであった……。

 そんな最中、佞邪の君主である釣幻は評定所《そこ》の自身の部屋でゆったりと休憩中!

 お茶を一杯飲んでから次の予定地へ行っても遅くはないという判断……!

 そこへ「丞相閣下!」と俊雄が話しかける!


「何だ?」と釣幻が応えると、俊雄が生《き》真面目に――

「図籍(官男の氏名)の件ですが、釜茹でにすべきでは?それも油で!」と過激な提案をしてくる!それに油を使うとなったら、もう『釜茹で』ではなく――『釜揚げ』!

 そんな提案をしてきた彼に、釣幻は俊雄を諭すように――

「俊雄よ、お前の憎しみは分かる!しかし、些《いささか》か贅沢だな……」と答える。

「このまま図籍を処刑しても、奴の思想に感化される馬鹿はいずれ出ます!

 その馬鹿共を少しでも減らすには、奴の処刑を派手にすべきでは!?」

「くくくっ……俊雄よ……!派手な処刑も、それを目当てに出る馬鹿を抑えられん!

 ならば――馬鹿共が全く望みそうもない刑を執《と》るだけよ……!」

「丞相閣下、それはどのような刑《もの》で……!?」

「何、簡単な刑だ……!大量の水と大きな棺……それと多くの“人民”がいればよい……」

「その話しぶりから察するに……既に刑の準備は整っているようで――」

「そうだ!どれ……昼飯《めし》の前に官男《やつ》の最後を娯楽とするか……!」

 と釣幻はそう答えて決め込むと……一杯の茶をゆっくりと飲み干す……。



 官男が市中を馬に引きずり回され終えた時、そこはもう刑場であった……!

 しかもそこはまだ市中!辺《あた》りには柵らしき物体《もの》など、どこにもない!

 一般市民達が本気を出せば、余裕で官男に直接触れることができる状況ではないか!

もう一人の死刑囚の末路……。

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